“ 西洋と東洋の医療が融合した統合医療が必要な時代に ”

  日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT)
理事長 渥美 和彦 氏

ここ数年、日本の医療界で西洋医療以外の代替医療へと目を向ける機運が高まっている。米国では1992年にNIH(国立衛生研究所)が代替医療の調査室をスタートして以来、研究も盛んで、医療費軽減の救済策として期待されている。米国で代替医療が注目されている背景など日本代替・相補・伝統医療連合会議理事長の渥美和彦氏にうかがった。
---米国をはじめとして、西洋医療以外の療法(代替医療)に関心が高まっていますが

医療費の高騰を食い止めるため、米国は西洋医療以外の療法に目を向け始めた

渥美:米国で代替医療が盛んに取り上げられるようになった背景には幾つか理由があります。まず医療に対する考え方が少し変わってきたということです。米国、欧州、日本も、これまで西洋医学が中心でしたが、曲がり角にきた感があります。これは西洋医学がある程度進んだ結果かと思います。それで、もし西洋医学に限界があるならば、まったく違う医学に注目してみて、西洋医学をもう一度見直そうという考え方が出てきたわけです。

米国にはさらに深刻な背景があります。というのも医療費が非常に高騰し、GNPの14%を占めるようになってきました。この医療費を何とか少なくしたいのですが、依然最先端の医療機器が開発され、医療費の高騰を招いているといった状況です。それで、先端医療機器を使わない代替医療を行うと医療費が軽減されるのではないかという声が挙がるようになったわけです。

例えば、薬ではなく鍼灸による痛みの緩和はどうか。これだと医療費が軽減します。またアーユルヴェーダによる瞑想を行うと、血圧が下がるとかいろいろな効果があります。
こうした療法で医療費がかなり削減されるということが判ってきて、米国のNIH(国立衛生研究所)を中心に代替医療の有効性や費用対効果の研究が始まったわけです。

こうした流れの中で米国の生命保険会社も代替医療を利用した際の費用対効果を調べ、代替医療をバックアップする動きも出てきました。

東洋的な心身一体の治療が必要

渥美:心と身体は表裏一体で、心の持ち方が病気の治療に大切ではないかということに西洋サイドも目を向け始めました。これは東洋人には感覚的に容易に分かるわけですが、西洋人には大変な発想の転換です。
こうした療法には心理療法やバイオフィードバック、イメージ療法、気功などがあります。病気そのものを治すのではなくて、免疫力を高め、病気回復へと向かわせるわけではないかと考えられます。実際に、心を積極的にもつことで血液内の細胞成分とかホルモンが有効に働いて身体の免疫効果が高まることも精神神経免疫学の分野で科学的に立証されています。

---今後の連合会議の具体的な活動については

自然治癒力を高める食べ物がこれから重要になる

渥美:身体には病気を自然に癒す力があります。代替医療の基本は自然治癒力を高めることです。傷ができてもくっついて自然に治ります。そうした自然治癒力を高める食べ物や栄養成分の研究がこれからもっと重要になってきます。

また実際に代替医療を生かせる場を作ることが必要かと思います。モデル的な病院を作って、漢方医学やアーユルヴェーダ、薬膳や健康食品や気功やヨガといったものを用いた療法ができればと思います。
また相補・代替医療大学を作る構想もあります。医療を修めた人が、その後に、鍼灸を学ぶ、アーユルヴェーダを学べるようなものです。それから啓蒙運動も必要です。行政や国民、医療関係者に、代替医療を理解していただき、その普及を促進していく必要があると思います。

---連合会議では、今後NIHと提携をはかるということですが

NIHの動きとともに、日本の医療は変わらざるを得なくなる

渥美:そうなると思います。米国では1992年にNIHに代替医療の調査室がスタートして、代替医療の研究が本格的に進められています。今年は5,000万ドルががん、アレルギー、老化、AIDSなどの研究のためにハーバード、コロンビア、スタンフォード、ミネソタといった12の一流大学に配分されます。
NIHというのは医療、バイオ関係の世界的研究所です。米国で研究開発された医療技術というのは5年、10年後に日本に伝わって、広がってきます。その時に多くの日本の患者が、代替医療を求めた時、日本も変わらざるを得ないわけです。

昨年12月に私共でシンポジウムを開催しましたが、そこで一般の方々がいかに今の医療に対して不満を持っているか実感しました。何か新しいものが導入されないと窒息感が払拭できないといった感じでした。現在、私共の会員の4割は医者で、その中には名誉教授といった方々も多く参加しています。日本の医療が変わらなければといった思いが多くの方々の中にあるように思われます。

---今後の医療の理想形について

統計的医療ではなく、個人ベースの分析医学に。第3の医療、統合医療を目指す

渥美:これからの医療というのは自然治癒力あるいは免疫力を高めるということを考えていかなければいけないと思います。今までの西洋医学ではがんがあればそれを取り除く、エイズに対してはウイルスを徹底して攻撃するという方法でした。しかし、エイズはそれでは治りません。むしろ、体の免疫力を高め、エイズにかかっても発症しないようにしていくことも可能かも知れません。

また、個人中心の医療であるということが必要です。これまで西洋医学は統計医学をやってきました。しかし、代替医療は今後個人の医療を目標としたものになると思います。アーユルヴェーダや漢方では個人の体質を大切にします。西洋医学でも代替医療でも本人に最もあったものを統合的に使う、これを第3の医学と称していますが、個人ベースでどれが最もいいかというものを探していく必要があります。
今後、さらに遺伝子の解明が進めば、個々の体質に最も合った医療が受けられるようになるはずです。個人の体質などをよく分析して、個人に最も合う医療を選び出そうというのが第3の医学であり、統合医療です。



◆プロフィール
渥美 和彦(あつみ かずひこ)

<略歴>
1954年 東京大学医学部卒、医学博士。人工臓器、レーザー医学など、先端医療の研究に従事、同大学医学部医用電子研究施設教授、同施設長を歴任。第16期日本学術会議第7部長。前鈴鹿医療科学大学学長。現在、日本代替・相補・伝統医療連合会議理事長。昨年12月、第1回連合会議設立記念講演会を開催し、東西の医療を融合した第3の医療・統合医療を提唱。

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