マガキ軟体部エキスの抗酸化作用と新規抗酸化物質〜IMEC 2014「第10回統合医療展」セミナー
2014年2月20日(木)、東京ビッグサイトで、IMEC 2014「第10回 統合医療展」が開催された。同展示会のセミナーから、渡辺貢氏((株)渡辺オイスター研究所 代表取締役社長)の「マガキ軟体部エキスの抗酸化作用と新規抗酸化物質に関する研究」を取り上げる。


カキ、古くから人々の健康に貢献

世界カキ学会の日本支部長も務める渡辺氏は、カキの機能性の研究を行っている。中国の古い文献「本草網目」の第24冊46巻には「牡蠣肉は煮て食すると虚無感、心理的な患いを癒し、身体の調子を整え、丹毒を消し、婦人の血気の流れを良くすると記されている。

また、生のまま生姜酢で食すると、丹毒を治し、飲酒後の熱を下げ、のどの渇きを潤す。あぶって食すると大変美味しく、肌のきめを整え、皮膚の色を美しくすると記されている。

他にも古代ローマの賢人セネカが「牡蠣には体に良い効果があり幸福感を与える」と言葉を残している。カキは古くから人の健康に良い影響を与えてきた。

カキの精神面での健康効果に着目

カキに関する記述には精神面にアプローチするというものが多い。本草網目にも「虚無感を癒す」とある。そこでカキが不眠や更年期、うつ症状に効果をもたらさないかという視点から研究を開始したという。

カキに含まれる特徴的な有効成分といえば豊富なミネラルである。亜鉛・セレン・銅は特に豊富で、この3つのミネラルが高いレベルで含まれている食品は他でみられない。

これらミネラル、微量栄養素は体内では酵素と結びつき、酵素の触媒として働く。例えば亜鉛は細胞や神経の分裂や増殖を促進させる酵素とともに働き、セレンや銅は体内で活性酸素除去酵素とともに働く。

つまりカキの特徴的な機能性とは、亜鉛・セレン・銅というミネラルによる活性酸素の除去=抗酸化作用だとも言い換えられると渡辺氏。

活性酸素除去や過酸化脂質の低下が明らかに

実際に、U型糖尿病患者15人を対象にした、活性酸素除去作用について研究を行った。糖尿病の人は、体内の酸化ストレスの度合いが高くなる。そのため尿中に亜鉛が大量に含まれる。つまり亜鉛が体内で十分に活かされないまま放出されてしまう。糖尿病が深刻になるほど尿中の亜鉛濃度は高まる。

そこで、こうした状態の人にカキを投与し、ダブルブラインド試験を行った。オイスター群として15名、コントロール群として15名に、一日あたり12粒のカキを12週連続投与した。結果、8週目あたりからオイスター群は尿中の亜鉛濃度が低下し活性酸素の除去が進んでいることが示された。

カキに含まれる高濃度ミネラルが活性酸素の除去に働いていることは間違いないが、腎臓についても活性酸素だけでなく、過酸化脂質までが低下した数値の変化が見られたという。

マガキの抗酸化物質、CG7と命名

通常、抗酸化物質とはその構造から2種類に分類できる。1つ目がSODなどの酵素性抗酸化物質(酵素系)とアスコルビン酸などの非酵素性抗酸化物質(植物などに含まれる成分)。

腎臓の過酸化脂質が低下したことから、渡辺氏らはカキには非酵素性抗酸化物質が含まれているのではないかと推測した。そこでマガキから新規の抗酸化物質を探索する研究を開始した。

最終的に見つかった物質が水溶性と脂溶性の両方の性質を持つカキの特異物質で、これはマガキの学名であるCrassostrea gigasの頭文字と第7の栄養素という意味からCG7と名づけた。

うつ症状や睡眠障害の改善などに期待

カキにはビタミンCやビタミンEも含まれるが、抗酸化成分ではCG7が一番多く含まれる。またCG7はビタミンEの2.4倍の抗酸化力を持ち、両親性で分子量が170と非常に低分子で、しかも血液脳関門までを通過することも確認されている。

そのため、非常に多くの活性酸素が存在する脳内の活性酸素除去にも役立つことが期待できる。実際、カキエキスの継続摂取により、うつ症状や睡眠障害などが特に改善されやすいという。

現在、脳内における酸化ストレスが不眠やうつ、アルツハイマー病の引き金となることが報告されつつあり、今後の研究としてCG7が脳の酸化ストレスを軽減させる作用やメカニズムを明らかにすることが期待されるという。

カキの養殖に餌が不要

今後検討すべき課題として、カキの産地毎の違い、収穫時期の違い、CG7は他の食品(野菜や海産物)には含まれないか、など幾つかあるが、カキの最大の魅力は養殖に餌が不要であるという点。

カキの養殖の技術(筏式)は沖縄出身の日本人が開発したものであり、この技術はいまや世界中に広まっている。これまで川からつながる海でしか養殖ができないといわれてきたが、それは間違いで、世界各国、海さえあればどこででも養殖が可能である。

近年の筏式は水中深く30mまで沈めて養殖することができるため、台風にやられる心配はほとんどない。大津波には弱いかもしれないが、世界中にまだまだカキを育てられる環境がたくさんあり、食糧難が心配される人類にとっても重要なタンパク源になる可能性が十分あるという。

ミネラルに加え新たな魅力的な機能性も見つかり、これからもカキの研究が進み、機能性食品としても大いに注目されるとした。


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