函館の海の恵みフコキサンチン〜第32回「健康博覧会」セミナー
2014年3月12日(金)、東京ビッグサイトで、第32回「健康博覧会」が開催された。同展示会のセミナーから、宮下和夫氏(北海道大学大学院水産科学研究院 教授)の「注目の機能性成分〜函館の海の恵みフコキサンチン1000」を取り上げる。


海外で海藻ブームが起きている

海藻は体に良く、また海の中で増え過ぎた海藻を食べることは環境の保全にも繋がる。日本人は海藻の食経験が長く、その機能性や恩恵をあまり意識してこなかった。しかし、ここ数年、アメリカのスーパーの多くで海苔や昆布が売られるなど、海外で海藻ブームが起きていると宮下氏。

海藻はタンパク質を豊富に含む。アミノ酸スコアも白米65、小麦36に対し、海苔は91と高く、陸上の植物由来のタンパク質と比較しても優れている。さらに難消化性食物繊維も多く含み、腸内での有用性が期待できる。

海藻に含まれるオメガ3脂肪酸

また海藻は脂質も含むが、主にオメガ3脂肪酸である。オメガ3脂肪酸は、動脈硬化予防、心臓病予防、抗コレステロールなどの機能性が報告されている。海藻由来のオメガ3脂肪酸は、青魚由来のものと違って臭いがない。

褐藻の脂質に注目が集まっている

海藻の中でも、特に褐藻の脂質に注目が集まっていると宮下氏。褐藻とは色のついた海藻のことで、この色はオメガ3脂肪酸とフコキサンチンによるものである。

他にも褐藻にはコレステロール低下作用のフコステロール、抗酸化作用のフェノール類、フコイダンなどの粘性多糖類(免疫賦活や消化管保護作用)など多種多様の機能性成分が含まれている。

フコキサンチンは、天然の色素成分だが、他には、アスタキサンチン、βカロテン、リコピン、ルテインなどが知られる。

例えば、トマトやイチゴの赤い色素のリコピンは特に睾丸に集中しやすい。また、トウモロコシや黄色ピーマンに含まれるルテインは目の黄斑部分に集中しやすい。フコキサンチンについては、お腹の脂肪に集中し、そこで作用することが研究で明らかになっている。

フコキサンチン、現状では化学合成できない

そうしたことからフコキサンチンに抗肥満作用、抗糖尿病作用がないか宮下氏らのグループは研究を重ねてきたという。

ヒト試験で、肥満の白人女性に1日24mgのフコキサンチンを摂ってもらい、プラセボ群と比較したところ、フコキサンチンを摂った群は、16週で体重、体脂肪、肝臓脂質、血液脂質の全てで減少が見られたという。

また日本人の肥満者を対象の試験でも、内臓脂肪が低下したという報告があるという。そのメカニズムは、フコキサンチンが腹部の脂肪に溜まり、そこで新たなタンパク質(UCP1)が発現・活性化し、脂肪の燃焼を働きかけるというもの。摂取量が1mgでも活性がみられるという。

もう一つのフコキサンチンの特徴は「現状では化学合成できない」ということ。βカロテンやアスタキサンチンは化学合成できるため安価で安定供給できる。しかしフコキサンチンは褐藻から抽出するしか方法がないため、逆に安全性が高いという。

アカモクからフコキサンチンを効率的に抽出

これまで、フコキサンチンの商品化は難しいとされてきた。脂質が含まれるため抽出や加工の過程で酸化し、安定しないためだ。そうした中、宮下氏らは「アカモク」という褐藻に出合い、商品化の可能性を見出した。

アカモクは東北地方では「ぎばさ」の名で知られ、食経験も長い。日本海沿岸の褐藻の中でもトップクラスの成長の早さで、フコキサンチンの含有量も豊富である。

また、ミネラル分も多く、カルシウムは昆布やワカメの1.2倍、鉄分はワカメの5.2倍、昆布の3.5倍、カリウムはワカメ、ひじきの1.6倍、昆布の1.4倍含む。

こうした褐藻のアカモクが日本海沿岸の東北地方や北海道などでは非常に豊に生育している。現在はアカモクからフコキサンチンを効率的に抽出する方法が確立され、株式会社カネカとの共同研究でサプリメントにするまでにこぎつけたという。

アカモク由来のフコキサンチンがメタボリックシンドロームの解消に役立つのではないかという。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.