プロバイオティクスの機能と可能性
〜第13回 統合医療展2017セミナー


2017年1月25日・26日の両日、東京ビッグサイトで「第13回統合医療展」が開催された。同展示会セミナーから、タカナシ乳業鰍フ講演「LGG乳酸菌〜最も研究されているプロバイオティクスが示すその機能と可能性」を取り上げる。


腸内フローラを整える「生きた微生物」

プロバイオティクス研究は年々盛んになり、「プロバイオティクス」や「腸内フローラ」という言葉もよく知られるようになった。プロバイオティクスを積極的に摂ることで得られる効果への期待も高まっている。

プロバイオティクスとは、腸内環境や腸内フローラを整えることに関与する「生きた微生物」であり、プロバイオティクスに対抗するものとして「抗生物質」がある。

抗生物質は治療で使用されるが、使用頻度が増えるたびに耐性ができ、イタチゴッコのように新しい菌が生まれる。抗生物質の使用のリスクが世界的に問題視されている。

日本でトクホ商品第1号乳酸菌

一方、プロバイオティクスは、副作用もなく複数の疾病を予防できる可能性が秘められ、非常に期待されている。

プロバイオティクスの中でも、LGG乳酸菌は世界で研究されているグローバルな乳酸菌で、論文数1000本以上、臨床試験300以上、世界50カ国以上で商品化されている。日本ではトクホ商品第1号乳酸菌としてよく知られる。

LGG乳酸菌は、1985年にアメリカのタフツ大学のゴルバッハ教授とゴルディン教授により健康な人の腸内から分離、これが最初の発見となった。その後1987年に予防医学先進国のフィンランドのバリオ社がライセンスを取得、1994年にタカナシ乳業がライセンスを締結した。

ウイルスを束ねて体外に排出

LGG乳酸菌の最大の特徴は「持続性乳酸菌」。LGG乳酸菌には「ピリ」と呼ばれる線毛がある。このピリはLGG乳酸菌の周りに産毛のように存在している。

この線毛により腸の中に長くとどまっていられる。さらにこの線毛がウイルスを束ねて体外に排出する働きもわかってきた。ちなみにこうした線毛を持つ乳酸菌はLGG乳酸菌以外には見つかっていない。

LGG乳酸菌は胃酸や胆汁酸に負けず生きたまま腸に届く。摂取後5日経っても糞便中から検出できることも報告されており、他の乳酸菌と比較しても耐性が高いことがわかっている。

そのため、LGG乳酸菌は腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やし、クロストリジウムなどの悪玉菌を優位に減らし、さらに便性を改善させる働きがあることが報告されている。

アトピー性皮膚炎の予防で期待

他にもLGG乳酸菌には複数の作用が期待されている。特に期待されているのがアトピー性皮膚炎予防に関する研究である。

フィンランドトゥルクス大学の研究によると、本人または家族にアトピー発症歴のある妊婦132名を対象に、出産予定の2〜4週間前からLGG乳酸菌入りのサプリメントを毎日摂取してもらった。(生菌数1×1010/個×2個/日)

LGG乳酸菌を摂取したグループとしなかったグループについて、新生児が2歳になるまで、さらに4歳になるまで観察を続けたところ、LGG乳酸菌グループのアトピー生皮膚炎の発症率は半減し、その作用は生まれてから4年後でも有効であることが分かったという。

インフルエンザ発症マウスが軽症に

花粉症の症状軽減作用についても、LGG乳酸菌を摂取したグループと普通の発酵乳(ヨーグルト)を摂取したグループでは症状改善に有意な差が生じ、LGG乳酸菌を摂取しているグループの方が花粉症による鼻づまりの自覚症状が改善されることが報告されている。

また、インフルエンザについてもLGG乳酸菌を摂取したマウスは、インフルエンザに感染しても症状が軽症で済むことがわかっている。

興味深いことに、肺のインフルエンザウイルス数はLGG乳酸菌の摂取によって大幅に減少することも報告されている。

LGG乳酸菌の可能性はまだ未知の部分もあり、さらなる研究が求められている。特に世界中で増えている糖尿病や発達障害などでの活用が期待されている。


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