" がんの術後の再発予防を目的に開発、
  5年生存率をプラス20%改善
"

  米国法人 蓮見国際研究財団
理事長 蓮見賢一郎 氏

現在、3人に1人ががんで亡くなるといわれている。がんの三大療法といえば、手術・放射線・抗がん剤だが、これにワクチンを加えることで生存率が高まることが期待されている。ワクチンによる免疫療法とはどういうものなのか。米国法人蓮見国際研究財団の蓮見賢一郎理事長に、蓮見ワクチンの開発経緯や今後の展開などをうかがった。
----ハスミワクチンの開発の経緯について

蓮見: もともと私の父が研究していたもので、術後の再発を予防する目的で開発したワクチンです。一般の病院で、がんの手術後にワクチンを使わない患者さんの5年生存率と、私共のワクチンを併用した場合とを比べますと、一般治療に私共の「予防型」ワクチンをプラスしたほうが、5年生存率が改善されています。

通常、ステージ1から4まであって、ステージ1の5年生存率は90%くらいです。ステージ2は70から80%。ステージ3は50%、ステージ4は20%です。 私共のワクチンは、こうした5年生存率にプラス20%くらいの改善効果があります。ステージ1,2が非常に良くて、ステージ1でプラス20%ですと5年生存率はほぼ100%。ステージ2ですと95%くらい。ステージ3ですと70%くらいです。それぞれプラス20%の改善が出来るというのが私共のワクチンの特徴です。 現在、合成型の新しい材形に切り替え、臨床試験に入る予定でいます。

----がんの5年生存率プラス20%というのは、ほぼ全てのがんに
    ついてですか

蓮見:乳がんや大腸がん、とくに膀胱がんや腎臓がん、皮膚がんや上咽頭がん、子宮がんは経過がいいです。前立腺がんはホルモン療法が主体になりますので、免疫療法はそれに付加する形で使いますと、それなりに良い結果が出ますが、主役にはなり得ないです。肺がんはさほど良くありません。ステージ1,2には良いのですが、3,4は良くないです。とくに難しいのが膵臓がんです。患者さんも増えていますが、因果関係が推測できません。どういう治療に対しても抵抗性があるので免疫療法にも限界があります。

----日本人の食生活が欧米化して体質も変わってきていると思い
    ますが、ワクチンの効果にも影響がありますか

蓮見:ワクチン自体は樹状細胞を活性化させるだけですので、とくにそうした問題はありません。もともとがんワクチンというのは樹状細胞にがんの異物性を教育するのが狙いです。

通常、皮下注射で樹状細胞に教えます。皮下の樹状細胞はがんワクチンのたんぱくを食べてリンパ節を移動し、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)が誘導されますが、それでがんが消えるかというとまずそれはあり得ません。

免疫療法は予防としてはいいのですが、実際に目で見えるしこりを消すことは無理です。やはり放射線や抗がん剤といった既存の治療の手を借りないといけません。 再発がんについては、これまでの経験では放射線のほうが抗がん剤に比べ、再発腫瘍の数が限られていれば圧倒的に治癒率が高いです。抗がん剤はどうしても薬剤耐性の問題があって、だいたい半年から8ケ月くらいで効かなくなります。放射線ですと間違いなくがん細胞は死に至ります。これまで社会復帰された患者さんをみますと、放射線のほうが多いです。

----皮下注射で打つのと直接打つのとではどういう違いがありま
    すか

蓮見:そこが一番ポイントですが、昔は手術をしてその組織から抗原をとって、試験管内で教育した樹状細胞を体に戻すという方法をとっていました。皮内注射やリンパ節の注射をしていましたが、それではがんは消えません。再発した場合、しこりは1個ではなく、だいたい数個あって、それぞれ違う顔をしています。

ですから取ったしこりでワクチンを作ってそれを注射したりあるいはペプチドワクチンで体に教えても結局再発しているしこりの中のがん細胞全部に共通するものはないわけです。ペプチドワクチンですと数が少なすぎて難しい。それから摘出したしこりから膜型ワクチンを作ってもそれが再発しているしこりに万遍なく適応できるかというとできません。

そういうことでむしろ目に見えるしこりをワクチンに切り替えたほうが早いわけです。 樹状細胞は腫瘍の中に入ると、その抗原を学習します。その約24時間後に今度はその樹状細胞から学習した結果を記憶するメモリーT細胞を静脈から入れます。そうしますと、先発隊で腫瘍内に入っていた樹状細胞が24時間でだいたい学習が終わっていますのでそこにメモリーT細胞が入ってくると樹状細胞がまたそれを記憶し、腫瘍の中に免疫学的なメモリーができます。

メモリーを作ったらそのがん細胞とそこに入っている免疫担当細胞は必ずいったん殺してしまわないといけません。一度、そこの腫瘍内の免疫の環境をゼロにリセットします。それが一番大事で、そこでメモリーをリセットするための放射線が終わったらもう一回樹状細胞を入れます。そうすると前のメモリーがリコールされます。そこにもう一度メモリーT細胞が入ると、前の記憶が呼び起こされて、一つのしこりがワクチン化されるわけです。

----たくさん転移してしまった場合は、一つづつ潰していくわけ
    ですか

蓮見:その時は、NK細胞の力を借りるといいと思っています。ある程度大きい、1センチ以上のしこりに対しては樹状細胞が入ってワクチン化しますが、小さいしこりがたくさんある場合は抗がん剤の力を借りるしかないと思っています。ただし、抗がん剤だけでは難しいのでNK細胞を加えていくということです。 NK細胞自体は攻撃性をもっていますので後は投与法を考えるだけです。体にいっぱい転移があると難しいですが、目で見えるしこりが5個くらい、例えば肺に2個と肝臓に3個くらいでしたら問題ありません。今、私共でだいたい解決できているのは5個くらいまでのしこりで直径が3センチ以下というような場合です。原則として治療をおこなった場所の再発再燃はありません。

----がん以外の疾患、例えば、肝炎とか慢性疾患のようなものに
    ついてもハスミワクチンで可能ですか

蓮見:それはまた別なワクチンで、ペプチドワクチンの類になるかと思います。特にウイルス性のものとかDNA配列の中から抗原性の高い部分を選んでそれをペプチド化してワクチン化するというのが一番確実だと思います。ウイルスの場合は小さいですからCTL(細胞傷害性Tリンパ球)は作動しません。抗体をよく誘導できる確率の高いものというとペプチドです。

----今後、どのようなことを計画されていますか

蓮見:現在、各国の政府に私共のワクチン治療を紹介しています。各国のがんセンターで、プレゼンテーションして興味のある国にはこの技術を差し上げるということをしています。それから、メリーランド州立大学で臨床試験をしています。来年は日本と台湾と米国で合同臨床試験を予定しています。

----日頃の生活で、免疫を高めるために気をつけることは

蓮見:食生活ですね。がんセンターが食生活の12カ条を出していますが、動物性脂肪を避け、繊維質のものをなるべく多く摂ることです。それから、ストレス管理と睡眠。後は、適切なサプリメントを摂って、体全体の免疫を高めに維持していくことが大切です。

----米国の医療機関で、患者さんと医師とのコミュニケーション不足
    から代替医療と西洋医療の相互作用の問題などが指摘されて
    いますが、先生のほうで何か患者さんに望まれることはあり
    ますか

蓮見:特にはありませんが、一番問題なのは一般の先生方と私共の治療方針の食い違いです。私は通常の診断で、学会が定めた手術方法や抗がん剤については主治医の言うことを聞かないといけないと思いますが、万一再発した場合は、主治医は患者さんの生命を保証できないわけですからやはりその選択権は患者さんにあるべきだと思います。

そこで無理やり抗がん剤を押しつけて最後になってから緩和ケアというのはよくないと思っています。再発がわかったら、今度は患者さんがよく勉強して適切な情報を得て自分でどうするか判断していかなければいけないと思います。

それを先生にまかせっきりにしてしまうと、患者さんは抗がん剤を入れれば助かると思っていますし、それが効かなくなると、今度はがっかりしてしまいます。そのあたりのお互いの理解というか、ボタンの掛け違いがまだかなりあります。

----やはり患者さんとの対話は大事ですね

蓮見:大事です。再発が分かった時点で自身の死生感なり、生き方の選択がすごく重要になると思います。私共では、とくに免疫療法に期待を持って来られる方がほとんどですので、オリエンテーションに一人1時間は割いています。 患者さんは樹状細胞の理論は全然知りませんから、基本的な考え方を教えてさしあげないといけません。時間はかかりますが、実際に治った方のスライドをお見せして、こういう場合はこうして治すといいとかアドバイスしています。

----今、代替医療に関心を持つ患者さんが増えていますが、先生
    のほうで関心のある代替医療は

蓮見:微量放射線ですね。飛行機のパイロットが、微量放射線を浴びるせいか、がんが少ないということが言われています。サプリメントでは多糖ですね。

----サプリメントに対する評価、これからの期待については

蓮見:食品は小腸から吸収されますので消化管免疫というのがすごく重要です。とくに小腸にはパイエル板という組織がありますがそういうところを活性化すると、二次的に全身のNK活性を高めることがだいたい確定しています。

消化管免疫を高めてNK活性を上げるものの中心は多糖ということで絞られてきています。脂質系のものがマクロファージや樹状細胞を活性化し、多糖系のものがNK細胞を活性化するということがだいたいわかってきています。食事で消化管免疫を上げることは全身の免疫の賦活につながりますから、そういった意味で食品と免疫というのはものすごく関係していて、医食同源だと思います。



◆プロフィール
蓮見 賢一郎(はすみ けんいちろう)

< 略歴 >
米国法人蓮見国際研究財団理事長
1948(昭和23)年、東京生まれ。埼玉医科大学卒。専門は腫瘍免疫学と終末 期医療。東京大学医科学研究所を経て、88年医療法人社団珠光会理事長に就任。 99年米国法人蓮見国際研究財団(HIRF)理事長に就任、「国際ガンワクチン・シン ポジウム」を世界各国で開催する等、国際的に先端がん免疫療法の啓発および 研究活動を推進している。米国メリーランド州立大学並びに米国トーマス・ジェファーソン大学との共同研究等により独 自のがん免疫療法の開発に成功、末期がん治療に新たな選択肢と優れた成果 を見出す。トーマス・ジェファーソン大学客員教授、中国吉林省腫癌院名誉院長、 中国長春中医大学客員教授を兼任。世界医師会、英国王立医学会会員の他、国 内外の数多くの学会活動に参加している。ブラジル政府より大十字勲章授与。
主な著書に『愛のガンワクチン』(91年、緑書房)、『Cancer Vaccine』(02年、HIRF)、『免疫学でがんと闘う』(05年、法研)他。

Copyright(C)2008 JAFRA. All rights reserved.