”日本でCAM(相補・代替医療)の普及が立ち遅れている理由"

  東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター
内科&血液浄化部門 講師
川嶋 朗 氏

現在、米国をはじめ世界の先進諸国では年々高騰する国民医療費の対策が急務となっている。そうした中、医療現場にCAM(相補・代替医療)を導入し、医療費の軽減を図ろうとする動きが大きな潮流となりつつある。日本における医療サイドのCAMへの取り組み状況など東京女子医科大学 腎臓病総合医療センターの川嶋朗講師に伺った。
----日本の医療現場でのCAMの普及についてはいかがですか

教育機関でCAMを正式に取り入れて指導者を養成することが急務

川嶋:世界的にCAMの国際学会やシンポジウムが開かれるようになってきていますが、日本について言うと、今のところCAMの後進国と言わざるを得ません。特に医師ついて言うと、相補・代替医療にまじめに取り組もうという姿勢はあっても、どうしたら学べるか、どこで実践したらいいかといったジレンマをかかえている人達が大勢います。

現実に、世の中の人々のCAMへのニーズは非常に高まってきており、医療サイドでも相補・代替医療を無視できなくなってきています。しかしながら、医学部のカリキュラムに組み込まれていないということもあり、医師に学ぶ場がないというのが現状です。また、大学でCAMを実践しているドクターが極端に少ないせいか、大学病院の医師はCAMを否定するような傾向があります。

とはいえ、CAMを実践する医師も徐々に増えてきているのも事実です。漢方や鍼灸については、古くからある伝統医療ですから、学ぶ場もありますが、そうでないものは、なかなか勉強する場所がありません。ですから、まず公的な教育機関でCAMを正式に取り入れて指導者を養成することが急務ではないかと思います。そうしなければ、研究のための予算も通りません。ただし、現状は、CAMを審査する側もそれが必要なものなのかどうか、それすら評価できないといった状況です。

----米国などではCAM研究のために大幅な予算を計上するなど、国家レベルでの取り組みと聞きますが

代替医療を行う医師は西洋医療でも一流の医師であるべき

川嶋:2億ドルとか予算が出ていると聞きますが、日本では、そうしたことは皆無に近いです。全くCAM後進国といえます。欧米では自然・健康志向が高まっていますし、日本でもTVの健康番組が増えるなど、健康やCAMへの関心が高まっているはずですが、どうも、現状では、まだ医療者側にCAMを柔軟に受け入れるような柔軟な姿勢がありません。

医療者もいろいろと勉強することも多いので代替医療まで手がまわらないのかもしれませんが、代替医療を行う医師は西洋医学でも一流の医師であるべきです。一流の西洋医が、開業してホームドクターをしようとしてCAMの必要性を感じてもなかなか勉強できないようです。ただ、ニーズは高まっていますから、ある程度生半可な知識でやろうとします。そうすると、意外に効果がありません。

それでどうにもならなくなって、患者さんは大学病院に駆け込みます。そうすると、そこのドクターから何でそんな余計なことをするんだ、だから悪くなるんだ、とか言われる、そういった悪いサイクルを繰り返しているようなところがあります。例えばサプリメントについても、使い方やデータなどをしっかり患者さんに指導してあげられるような医師がまだあまり大学病院にもいません。

------日本は健康保険が整備されていることもあり、患者側が西洋医療に依存する傾向が強いのでは

患者さんが本気になって自分の体と取り組んでいない

川嶋:まずCAMについて、一言でいうと、相談に行きたくても相談に乗ってくれる医者がいないというのが現状です。例えば、TVで健康にいいとされるサプリメントが紹介されたとしても、どこのメーカーのものが良いのかということまでは指定されません。

患者さんは、一般名としてそれが良いということが分かっても、どこの製品がいいのか、安全なのか、相談に乗ってくれる医者がいないため、正確な情報が得られません。

それから、日本では保険診療が利くということもあり、患者さんが本気になって自分の体と取り組んでいないという傾向が強いようです。慢性の病気というのは生活習慣からくるところも多いのですが、なぜ自分がそのようになったのか、もっと自分の病気について詳しく調べる姿勢があってもいいと思います。例えば、私が患者さんに薬を出した時、説明不足であれば、この薬の作用は何、副作用は何といった質問をして欲しい、と言います。それくらい、病気について注意を払って欲しいところです。

ただ、これを患者さん側に言わせると、それを言うと文句を言うドクターがいると言います。余計なことを言わずに黙って飲んでいろと、あるいは文句があるんだったら、ここに来るなと言うドクターもいると言います。ですから気にいらない治療であってもドクターから嫌われるのが嫌で黙って続けている患者さんも少なくありません。何か矛盾しています。

------CAMの普及を医師そのものが阻んでいるということも

若いドクターの中には何らかの形でもう認めていかなければいけないのではないかという雰囲気がある

川嶋:もちろん、経験がものを言う世界ですから、教授がそれは危険だから止めなさい、というのもわかります。時代が時代で医療事故の問題とかありますから、そういうことが起こって矢面に立たされるのは嫌ということも拍車をかけていると思います。日本でCAMの普及が遅れているのは、そうした難しい事情が重なっているためです。

これを打破するために、幾つか方法はあるのかと思うのですが、やはり患者さん側の意識をもっと上げることが大切です。自分が病気であったら、その病気について勉強することだと思います。健康でありたければ、何が健康を損なうのか、その上で何が必要なのか、またそれを相談できるドクターを探し出すことも大切なことだと思います。

ただ、現在の日本の保険診療の中では、医師側もそうした相談に十分な時間を割くことは非常に難しいのです。私の場合、1日に60人、70人の患者さんを診ますが、健康な方に、健康を維持するためにどのサプリメントがいいのですか、と聞かれても、短時間で答えられるものではありません。

新しい患者さんというのは3分、5分では絶対に終わりません。そういう中で、自分が勉強していなことを聞かれれば、つれない返事をするドクターがいてもおかしくはありません。今の医療システムの中で1人の患者さんのみに長時間を割くことは不可能と言っても過言ではありません。事情をご理解いただけますでしょうか。

そうした社会的な事情もあって、日本でCAMの普及はなかなか難しいわけです。政府もまだ西洋医学とCAMとの混合診療を認めていません。また医師会も認めていません。ただ、若いドクターの中には何らかの形で混合診療を認めていかなければいけないのではないかという雰囲気があります。

ただし、一番怖いのは自由診療というのは価格設定が自由ですから、利益に走ってしまう医師がいないとも限らないことです。そのため、混合診療に歯止めがかかっている可能性もあります。そういう意味では条件つきの混合診療からまず認める べきだと思います。そうしないと、心無いドクターが法外な値段をつけて、あたかも宗教のようにやっていく危険性もあります。それくらい白衣というのはカリスマ性があります。

------混合診療の中での健康食品の役割については

ちゃんとした知識を持ち、上手に使えばいい

川嶋:当然、あります。これから日本は超高齢化社会になりますが、高齢者は食事でのエネルギーの摂取量が20代と比べ、700カロリーくらい少なくなります。栄養の偏りも出やすくなります。年を取れば、当然機能も落ちてきますから、機能を補えるような、あるいは少しでも老化を防ぐことができるような機能性食品にはかなり価値があります。

若い女性の月経異常や不妊などにしても期待できます。更年期の女性であれば、更年期障害を緩和するのにホルモン補充療法というのがありますが、副作用を気にする方もいて、受けたいと希望する方は意外と少ないようです。それで漢方薬や機能性食品を希望される方が少なくありません。

また、若い世代で、思春期ですと受験で無理をするでしょうから、体力を維持するような機能性食品も大切です。また、アレルギー性の疾患がすごく多いのですが、それをコントロールするものもあります。ちゃんとした知識を持って、上手に使ってあげればいいと思います。

------健康食品の使い方についての相談とか増えていますか

がんとダイエットに関するものが最も多い

川嶋:最近は多くなってきています。やはり、がんについてのものが多いです。西洋医学でだめだと最初に機能性食品へ向います。それと、ダイエットですね。健康維持が目的という方は少ないです。

それで、機能性食品の使い方が問題になってきます。上手に使えばより有効に使うことができます。例えば、がんは夜増殖するというのが一般的です。であればいつどのようなサプリメントを用いればよいのかということまで考えなければいけません。頻用されるキノコとサメ軟骨は何がどう違うのか、それぞれの役割を十分理解して、使い分けることが大切です。

それから、生活習慣を考慮に入れないで、機能性食品を使ってもだめです。まずあやまった生活習慣を正すこと、病気にならないためにどうするべきかといつも考えること、もし病気になったら病気についての勉強をしっかりし、なぜ病気になったかを考えること、要するに意識変革を行うことが大事ではないかと思います。



◆プロフィール
川嶋 朗(かわしま あきら)

<略歴>
1957年10月27日 東京都生まれ。1983年北海道大学 医学部 医学科 卒業、1983年東京女子医科大学 第4内科 入局 研修医 1983年東京女子医科大学 第4内科 医療練士、1986年〜19釦年 東京女子医科大学 大学院 医学研究科、1990年 東京女子医科大学 第4内科 助手、1993年〜1995年 Harvard Medical School&Massachusetts General Hospital留学、2001年東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 内科&血液浄化部門講師、2002年東京女子医科大学附属成人医学センター(兼任)講師・現在に至る。元 東京都老人総合研究所 客員研究員。

<学会活動>
日本腎臓学会 学術評議員 認定専門医・指導医、日本透析医学会 評義員 認定医・指導医、日本内科学会認定専門医会 評議員、日本内科学会 認定医・専門医・指導医、日本ホメオパシー医学会 理事、日本東方医学全 学術委員、心身医学臨床研究会 会長代理(東日本支都会会長)、日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT)実行委員 認定医、冷え研究会 世話人、植物・芳香医学フォーラム 評議員、日本免疫病治療研究会 幹事、I.H.M国際波動友の会 インストラクター、日本ホリスティック医学協会 運営委員、Natural Products評価研究会 評議員 サプリメント指導医、国際腎臓学会、アメリカ腎臓学会、日本アフェレーシス学会、日本東洋医学会、日本統合医療学会、日本相補・代替医療学会、日本透析医会、日本ホリスティック医学協会、気の医学会など

<西洋医学の専門領域>
内科、腎臓病学、血液浄化、膠原病、高血圧

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