“ オリゴ糖で抵抗力のある身体作りを ”

  東大名誉教授 光岡 知足 氏

0-157感染騒動以来、“免疫力”ということがキーワードになりつつある。この“免疫力”は腸内環境とも密接な関連があるが、腸内細菌の研究の第一人者である光岡 知足氏は「オリゴ糖で腸内のビフィズス菌を増やし、抵抗力のある身体作り」を提唱する。氏に現代人に最も必要とされている“免疫力”を高めるオリゴ糖の役割についてうかがった。
---オリゴ糖が開発された経緯についてお聞かせください

光岡: 今から14、5年前に明治製菓の方が虫歯にならない糖を開発したから、甘味料としてどうかみて欲しいとオリゴ糖を私のところへ持ってこられました。その時私はこれは腸内のビフィズス菌の餌になるんじゃないかと思いました。
実際に、in-vivo、in-vitroの両方でみたところ、ビフィズス菌を増やす作用があることがわかりました。腸内のビフィズス菌が正常な人でも、そうでない人でもオリゴ糖を与えると、ビフィズス菌がかなり増えるということがわかったのです。それがオリゴ糖との最初の出会いでした。

そういう経緯があって、オリゴ糖は「虫歯にならない糖」というより、「ビフィズス菌を増やす糖」として売り出すことになりました。そして、その後塩水港製糖の乳果オリゴ糖やカルピスの大豆オリゴ糖なども注目されるようになりました。

---オリゴ糖でビフィズス菌が増えると健康になるという根拠について

光岡: 1900年にフランスのティシエ(Tissier)が母乳を飲んでいる赤ちゃんの糞便から初めてビフィズス菌を発見しました。母乳を飲んでいる赤ちゃんの腸内は95%以上もビフィズス菌で占められていて、下痢も少なく健康であるのに対し、人工栄養児のようにビフィズス菌が少ない赤ちゃんは下痢をしやすい。

その頃、赤ちゃんの腸内に、ビフィズス菌を増殖させる物質、すなわちビフィズス因子の研究が行われ、ビフィズス因子TとかUとかいくつも発見されました。しかし、それらはみな異なり、一致するものはありませんでした。乳糖から合成したラクチュロースもビフィズス因子の一つですが、これはオーストリーのぺチュエーリ(Petuely)という人が発見したものです。

このように、それまでビフィズス因子の研究は主として赤ちゃんのビフィズス菌を増やすという目的で行われてきました。ところが、明治製菓が持って来られたオリゴ糖は、乳児のためというのではなく、むしろ大人のビフィズス菌を増やし、腸内細菌叢を改善して健康に役立てられないかと考えました。それは、ビフィズス菌は乳児だけでなく、大人の腸内にもいて、健康維持にはなくてはならない腸内有用菌だということがわかったからです。といっても、腸内細菌叢を改善することは至難の技です。
これまで、ある程度腸内細菌叢の改善は可能でした。抗生物質を投与して、悪い菌も良い菌も一度抑えてしまってそれから、でんぷん食のような日本食に切り替え、良い菌を増やすという方法で、確かにある程度改善は見込めました。ただし、これはやがて元に戻ります。

ところが、オリゴ糖の場合はかなり腸内細菌叢の改善が持続することがわかったのです。その頃、ベルギーの学者がオリゴ糖についてしきりに聞いてきました。そうしたことがきっかけになってヨーロッパでオリゴ糖がかなり評判になりました。

それまでは世界的にも、オリゴ糖で腸内のビフィズス菌を増やして腸内細菌叢を改善するという考え方はありませんでした。特に、大人の腸内細菌のバランスを変えて健康に役立てるという考えはどこにもありませんでした。腸内細菌のバランスは食事やストレスによって変わってしまいます。また老化によっても変わります。老化で変わるのは仕方ないですが、オリゴ糖でビフィズス菌を増やし、腸内細菌のバランスを良好に保つことが可能です。
現在オリゴ糖はさまざまな素材から抽出され、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖など各社から出ています。

――今後のオリゴ糖の機能性素材としての役割について

光岡: これまでの経緯からもわかるように、腸内細菌叢の改善という考え方は、今では日本よりむしろヨーロッパのほうで盛んになりました。ヨーロッパでは、それまで腸内有用菌を活性化する乳酸菌製剤のようなものを生菌剤(プロバイオティクス)と呼んでいました。プロバイオティックス(Probiotics)というのはアンチバイオティックス(抗生物質:Antibiotics)をもじったものです。
ところが、3年ほど前にイギリスのギブソン(Gibson)という学者がオリゴ糖のように腸内有用菌の増殖を助け、健康に役立つものに対し、プレバイオティックス(Prebiotics)という名前を付け、今ではオリゴ糖のようなものはこのように呼ばれています。

ヨーロッパではそうした流れがあります。ところが、日本では当初私が腸内細菌に対し、有用、有害とかいった区別をしたところ顰蹙を買いました。腸内の菌が有用と有害に分けられるはずがないと。大腸菌だってビタミンを合成するじゃないかと。ですが、100%のうち10%や20%はいいことをしていても、あとの80%が悪いことをしていれば有害菌だとしたのです。
それとは反対に、有用菌を増やすことが健康を維持するうえで大切で、こうした役割を果たす食品を機能性食品(ファンクショナルフーズ、Functional Foods)と呼んでいます。ヨーロッパではファンクショナルフーズをプロバイオティクスとプレバイオティックスに分けています。

こうした機能性食品に、今後バイオジェニックス(Biogenics)という範疇のものを加えるべきだと私は思っています。これは生理活性物質で、腸内細菌叢のバランスを改善し、あるいはバランスを改善することなしに直接生体機能を調節するというものです。
例えば、乳酸菌発酵エキスやアラビノキシランのようなものです。プロバイオティックスとプレバイオティックスとバイオジェニックス、この3つを機能性食品の範疇とすべきだと思います。

――最後に、“免疫力を高める”健康管理についてお聞かせください

光岡: 毎日の健康管理の中で、まず便秘に気をつけることです。毎日の便を見ると健康状態がわかります。便秘になると便が黒くなりますが、これはアルカリを示しています。ビフィズス菌も少ない。酸性の便は黄色でビフィズス菌も多く、臭いも少ない。
腸内のビフィズス菌が多ければ免疫力はが高まるといえますが、そういった意味ではオリゴ糖の役割は大きい。0−157は免疫力が強ければ罹っても軽く済みます。小学校の低学年までと70歳以上のお年寄りで免疫力が劣っている人が0-157に罹患しやすい。機能性食品を上手に利用し、ビフィズス菌を増やして、免疫力を高めることが大切です。



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