"良い腸相が、若さと長寿をもたらす
---35年間、日米の30万人の症例から解明---"

  アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授
ベス・イスラエル病院内視鏡部長
新谷 弘実 氏

昭和58年以降、世界一の長寿国となった日本。その伝統食の機能性が高く評価・注目されてきた。しかしながら、戦後、米穀食からパンへ、魚から肉へと食の欧米化が進んだことで、大腸がんなどのさまざまな疾患への罹患が危ぶまれている。新谷弘実博士は、米国に長く住み、過去35年間に日米で30万人の胃腸内視鏡検査を行ってきた経験から、日本人の食の欧米化に警鐘を鳴らす。「食」が「病気」とどのように関わるのか新谷博士にうかがった。
----「食」と「病気」との関連についてどのようにお考えですか

食歴を聞いて、病気の原因を取り去ると、病気や未病から正常に戻る

新谷:今、水、食べ物、排泄不全でいろいろな病気になるということが忘れさられています。現代医学は、まず治療から入りますが、私は予防・未病ということを重要視します。
ですから、食事というものが非常に大切であると思っています。病気は、食事が主な原因であるといっても過言ではありません。今、アメリカでは全ての病気の70%は食事が原因であると云っています。

1975年にアメリカの上院議員のマクガバンが食事と病気との関連を調査しました。当時、アメリカの危機は病気の感染(エイズ等)でも戦争でもない、膨大な医療費でによって国が滅びかねないという危機感を抱き、5年間かけて世界中の食事と健康との関係を徹底的に調査し、食体系をたてました。

晴天から急に雨が降ったりしません。曇り空に変わって、それから雨が降ります。健康も同じです。あなたは、酒を飲みますか、タバコを吸いますか、牛乳を飲んでますか、チーズを食べますか、肉はどれくらい食べますか、と食歴を聞いて、これが原因というのものを取り去りますと、未病から正常に戻ります。

遺伝子的に似ている動物が食べているかを見て、人間も自然に学ぼうという謙虚さも大切

本来ですと、99%遺伝子学的に似ている動物がどういうものを食べているかを見て、人間も同じように謙虚に、そういう物を食べた方が良いだろうというのが私の態度です。

チンパンジーは、親が1歳とか2歳でいろんなことを教えます。チンパンジーの食べ物の50%が果物です。45%が葉や草や植物で、あとの4,5%が動物食です。卵とかミルクとか魚とか鳥ではなく、アリやイナゴや昆虫しか食べません。それに比べて人間は大人になっても牛乳は飲むし、卵から魚、牛や馬まで食べます。そうした動物食は胃腸内で十分消化できず様々な毒素を発生します。それが、120歳まで生きられない原因です。

----先生は大腸のポリープの手術で独自の方式を考案され、世界的にも高い評価を得てますね

赤ちゃんのような良い腸相を持てば、120歳まで生きられる

新谷:新谷式コロノスコピーといって1968年に始めました。翌69年にコロノスコープを通してポリープを切除しました。当時、アメリカでは約35%の腹部外科というのは、お腹を開いて、ポリープを引っ張り出して、糸針をかけて、ポリープを切除するという開腹による外科手術でした。新谷式コロノスコピーというのは大腸を短く畳み込みながらコロノスコープを挿入しますので、苦痛ではありません。従来のように、放射線とかレントゲン線をみながら入れていく必要はありません。

非常に安全な方法であるということで、1980年から日本でも始めました。その前は大腸鏡(コロノスコープ)の挿入を2人方式といってナースやドクターが術者を介助して大腸に挿入していました。10年か15年くらいこの2人方式でやっていましたが、急速になくなっていき、今では、世界中で術者が一人でコロノスコープを操作する新谷方式が採用されるようになりました。

(※新谷博士は、1963年に渡米し、ベス・イスラエル病院で外科のレジデント(研修医)となり、1968年のチーフ・レジデントの時に大腸鏡(コロノスコープ)の挿入法を開始。1969年9月にはコロノスコープを使って開腹手術をしないで大腸ポリープを切り取ることに世界で初めて成功した。1971年のアメリカ胃腸内視鏡学会では、世界初となる百例近い大腸内視鏡によるポリペクトミーの症例を発表し絶賛を浴びる)

そうした経験から、良い食べ物を食べていたら良い腸相を保てるということがわかってきたのです。一番良い腸相というのは生まれたての赤ちゃんから10才まで位の腸相です。
肉も食べない、悪い食事をしないということで良い胃相、腸相を持つことができます。良い胃相、腸相を保つことが一番理想的な年の取り方です。そうすれば、120歳までは確実に生きられるはずです。

----腸を見なくても腸相が良いか悪いかわかる方法はありますか

新谷:腸相が良くないと、お腹を触った時、圧痛点があったり、緊張が強くて腸がキューとしたり、触るとコロコロしたりします。また、ガスや便がたまりやすくなります。膨満感もあります。おならのにおいが強かったり、便の臭いも強いとか、便の性状で、黒い便とか、水に沈む便とか、血が混じったりもします。

一番良いのは、内視鏡で腸の中を見ることです。そうすると、動物食の食べ過ぎとか、植物食が足りないとかわかります。そうした腸相のことまで、今のドクターは言いません。ですから病気の予防にならないのです。

私は、30万人くらいの人の腸相を見てきた経験から、どういうものを食べたり飲んだりしているとこういう腸相になると言います。食歴を聞いて、病気との相関をはっきり言います。今の食事だと、10年、20年先に大腸がんや胃がん、前立腺がんや乳がんになったりしますよと言います。

毎日肉を食べていると、憩室といって腸にポケットができます。腸にできる前に筋層といって筋肉の中に、腸壁の中に縦走筋、縦に走っているのと、輪状筋、周りに走っている筋肉がありますが、それがものすごく硬くなってきます。そういうふうになって腸が痙攣すると、腸の中の圧が高くなり、憩室ができます。

ところがそうしたことは本には書いてありません。私はそういうことを多く観察しています。肉類、乳製品をたくさん食べると左側のS字結腸、下降結腸に憩室ができます。左側の下腹部が痛かったりしますと、便秘がちで、肉食過多であることがわかります。

白米とか白パン、白うどんをたくさん食べると右側の大腸(上行結腸・盲腸部)部に憩室ができます。ご飯をたくさん食べますと、右側の大腸の内圧が高くなって、便を虫垂のほうに押し込んでしまいます。そうすると虫垂炎になりやすいです。
日本が昔、虫垂炎になりやすかったのはそのせいです。今はあまり虫垂炎はありませんが、これは動物食のほうがものすごく多くなって、食物繊維が少なくなり、右側に腸圧があまりかからなくなったためです。

年齢より若くみえる人は腸相が良い

人種にかぎらず、老けてみえる人、若く見える人がいます。同い年なのに、なぜそうなのか、それは腸相をみたらわかります。老けて見える人は腸相も老けています。
それから、玄米を食べるというのはどういうことかというと、りんごでも皮をむいたままだと酸化して真っ黒になりますね。

玄米も皮をかむっている時はまだ生きていますが、皮をいったん剥いて、白米にしたとたんに酸化してサビついてしまいます。また、食べ物、水だけではなく、排泄も良くしなければいけません。女性で便秘の人が多いですが、コーヒー浣腸で腸の中の毒素を溜めないようにして、排泄を良くすることが大切です。

住んでいる国や場所で、土壌の栄養成分の含有量が異なる

サプリメントを摂るのも非常に大切なことです。例えば、ほうれん草にしても今のほうれん草は私の子供の頃と比べて、8分の1しか鉄分が入っていません。今の子供たちが8倍の量のほうれん草を食べるかというとそういうわけではありません。カルシウムにしても同様に少なくなっています。

土壌のミネラルの含有量というのは国や場所によって全然違います。抗酸化物質とかセレンとか、ビタミンA、E、Cとか亜鉛とか、土壌から入ってくるものでも、場所によって全然違います。

私は、アメリカと日本に住んでいますが、ブロッコリーにはカルシウムがたくさん入っていて(牛乳100gに入っているカルシウムは100mgです)、アメリカのブロッコリー100gの中にはカルシウムが178mg入っています。ところが日本ではそんなにカルシウムが入っていません。日本のブロッコリーには100g中に54,5mgしか入っていません。

日本の栄養学はアメリカと比べて相当遅れている

そして、腸の中でどれくらい消化吸収されたかが、問題であって、カロリー計算ではダメなのです。アメリカが何でもいいというわけではありませんが、日本の栄養学はアメリカと比べ20〜30年以上遅れているといわれています。カロリー計算といっても、どのようにして食べるか、いつ食べるか、何十回噛むか、誰と食べるか、といった精神的肉体的条件によって、栄養成分の吸収率が全然違ってきます。ですから、例えば、糖尿病の患者さんに全て同じように1500カロリー摂らせることほど無意味なことはありません。

----「食」に関して、日頃どのようなことに心がけていればよろしいですか

新谷:今は、植物の抗酸化ビタミンも非常に少ないため、私たちの身体の健康を保つレベルが非常に落ちています。人間の身体は免疫系統、神経系統、ホルモン系がきちんとしていることが一番大切で、これらの恒常性(ホメオスタシス)が保たれないと健康が維持できません。

また、交感神経ばかりが高まるような生活を送っていると、自律神経失調症になります。免疫力を発揮するためにはいろいろな体内酵素がものすごく使われます。そのため、そういう免疫力をつけるためにもいろいろなサプリメントを摂ることが必要です。私は、バイオブランも好んで使っていますし、がん患者さんにはとくにすすめています。

免疫力のある体を作るためには、土壌からきちんとしなければダメ

本来、免疫力のある体を作るのは土壌からきちんとしなければダメなのです。農業と医学というのは切り離しては考えられません。ちゃんとしたものを作ってそれを人間が食べなければ、健康とか、免疫とか、抵抗力とかを論じても無意味なのです。

それから、浄水器でちゃんとした水を飲み、サプリメントも良いものを摂れば、抵抗力がつき、病気にもならないようになりますし、腸内細菌も良くなります。良い腸相、腸内環境を作ることが健康のカギです。

食事と水と排泄と運動、そして精神面も大切です。趣味を持って、ハッピーな状態であること。心の充実感は健康であるための重要な要素です。



◆プロフィール
新谷 弘実(しんや ひろみ)

<略歴>
1935(昭和10)年、福岡県柳川市に生まれる。1960年順天堂大学医学部卒業、横須賀米海軍病院にインターンとして勤務後、1963年に渡米し、ベス・イスラエル病院で外科のレジデント(研修医)となる。1967年シニア・レジデントの時にガストロカメラ・ファイバースコープを、翌年チーフ・レジデントの年に大腸鏡(コロノスコープ)を使用し始めた。1969年9月にコロノスコープを使って開腹手術をせずに大腸ポリープを切り取ることに世界で初めて成功し、1971年のアメリカ胃腸内視鏡学会で世界初の大腸内視鏡によるポリペクトミーの発表を行う。1972年にマウント・サイナイ医科大学外科副教授とベス・イスラエル病院内視鏡部長に就任。1981年〜94年までマウント・サイナイ医科大学外科教授。1994年にアルパート・アインシュタイン医科大学外科教授に就任。ベス・イスラエル病院の内視鏡部長を兼任しつつ現在に至る。 また、前田病院・元赤坂胃腸科クリニック、半蔵門胃腸クリニックを兼任する。
楽器演奏や声楽、美術に造詣が深く、ニューヨーク・オペラハウス、美術館等のスポンサーでもある。また、多くの医学生、ナースのために奨学金制度を創設する。スポーツ好きで、柔道・空手、テニス、ゴルフなどたしなむ。

<著書>
「コロノスコピー」(英語版・日本語版:医学書院刊)、「胃腸は語る--胃相・腸相からみた健康・長寿法」(弘文堂)など多数。

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