”21世紀は、医療者主体から患者主体の医療に"

  恒川消化器クリニック副院長
東海ホリスティック医学振興会会長
恒川 洋 氏

ヒトゲノム解析の進展により、21世紀の医療は従来の西洋医学の統計学的な処方から個々人にふさわしい処方、オーダーメイド医学へと移行するといわれている。そうした中で、相補代替医療がどのような役割を担うのか。恒川消化器クリニック副院長に代替医療を受ける側の心得や機能性食品の選び方について伺った。
---先生の相補代替医療へのお考えについてお聞かせください

恒川:病気が治るということをみんな目指しますが、治る力、つまり治癒力のない人は治りません。治癒力が低い間は無理なのです。痛みをおさえながら、基本的に病気と共存していく、というのがいい。こんなところにガンがあると許せないから取ってくれという人もいます。ガンで亡くなったある有名なミュージシャンの場合も、子供が小さいから、取って取って取りました。転移したら取る、転移したら取るで、生きなければいけないからそうされましたけど、結局、最後は止められました。

人生観、死生観というものに基づいた選択肢があるべきです。ただ、気をつけなければならないのは、医者がドクターストップをかけるべき時があるということです。がけから落ちかかっているのに、ただ「落ちるぞ落ちるぞ」といって見ているだけじゃしょうがないでしょう。

その点、西洋医学は親切な医学です。子供ががけっぷちに立った時に、ダメダメと安全な所へ連れて行こうとします。ところが、ホリスティック医学というのは、子供の意思で危ないところに行ったとしたら、その近くでまず見ています。落ちそうになったら、パッと行きますが、その人にまずやらせます。ですから、結構大変な医療なのです。

危険なことをさせない、鉄棒も、運動もだめ、走っちゃだめということであれば怪我はしません。ただ、怪我はしませんが、怪我をした時の辛さもわかりません。結局、個人というか、その方の人生というところで物を考えると、僕が言っているような医療がでてきます。一人一人の人生観を無視することはできません。20世紀までは完全に医療者主体の医療でしたが、21世紀は患者さんが主体の医療になるでしょう。ということは、それだけ患者さんにも責任が生ずることになります。

---患者さんも医療者まかせではなく自己の責任で医療に関わっていかなければいけないということですね

恒川:責任が伴います。主体的な人であればいいのですが、そうでないととんでもないことになります。私達のサポートというのは、例えば機能性食品を用いることで、いったん下がった免疫を引き上げることはできます。さらに、それを誰が紹介したかということでも効果が違ってきます。例えば、(代替医療で著名な)帯津先生が「良く効きますよ。飲んでみたら」と言って渡すのと、なりたての医者が「これ効くよ」と言って渡すのとでは、同じ薬でも受け手側の効果が違うのです。

効くかもしれないと思って飲むのと、どうかわからないと思って飲むのとでは、効果が違ってきます。そういう意味で、誰がその機能性食品を作り、売り、勧めたかが効き目に関わってくるということです。そこまで見ないと、本当にちゃんと効くかどうかわからないということです。

---機能性食品の選び方のポイントについて

恒川:健康食品は薬と違って医療保険が効きません。そのため、高額なものが多いです。ですから同じような作用を持つ物の重複は避けたほうがいいでしょう。今は、メシマコブ、アガリクス、霊芝といったキノコ系が多いですね。そうした物を3つも4つも飲むというのは、賢明な選択ではないでしょう。

それから、最初に自分で決めた摂取期間中は、他のものに気を移さず、必ず効くと信じて飲むことです。抗がん剤の副作用をおさえるとか、これは腸に良いとか、目的をはっきり持ち、良くするぞと思って摂ることです。
そして、摂取期間を過ぎても、手ごたえが感じられない場合は、ダラダラと続けないで、止めるか、違う作用の異なる物の組み合わせに切り替えることです。

日々の養生によって治癒力が活性化されていなければ、健康食品も薬と同様十分に効果が現われない

恒川:最終的な私の持論ですが、「健康食品に期待する前に、日々の養生によって治癒力が活性化されない限り、健康食品も薬と同様に効果が十分には現われないことを忘れないで欲しい」ということです。これが、基本的な姿勢です。

といっても、治癒力が下がってる人を引き上げるとか、維持するためにこうしたものを使わない手はありません。特に、抗がん剤とか放射線とか体に負担のかかる治療を行う場合は、免疫力を上げるものとか絶対使うべきです。ビタミンCでも漢方でも、総動員しないとだめです。抗がん剤をやってる人は、免疫が上がったり、下がったりしますが、免疫を引き上げることが必要です。キトサンとかサメ軟骨とか、そうしたものをうまく組み合わせて使うことが大切です。米糠アラビノキシラン誘導体もNK活性を上昇させます。ケースバイケースでそうしたものを選んでいくという処方があってしかるべきだと思います。

---米国の相補・代替医療の利用者は'90年頃は33.8%でしたが、7年後には42%になっています。日本も増えますでしょうか?

恒川:増えると思います。今、日本での相補・代替医療の利用者は65%くらいです。日本は、もともとビタミン剤を飲んでる人が多いですから、そういう人を含めるとだいたい7割くらいです。ガンの人だと、医者に言わないで、8割くらいの人が飲んでいるでしょう。
ガンの場合、早期ガンが見つかり、内視鏡治療なんかで治ったとします。しかし、局所のガン自体は治ったとしても、体質的なものは変わっていないわけで、同じ生活していればまた出てきます。そうなったら、また取ればいい。そういうのが今までの西洋医学のやり方でした。

医者も手術が終われば、治りました、もういいですよ、と言います。進行ガンの場合は、心配だから2週間経ったらまたいらっしゃい、早期ガンでしたら半年か1年後に来なさいと言います。食事も自由にしなさいと言うかもしれません。ですが、また以前の同じ食生活に戻るから、またガンができて、取りましょうということになってしまいます。まことに単純明快、現に10年くらい前の外科医はそんなふうでした。

少量のガン細胞は毎日生まれている

恒川:胃がんで胃を取って3分の2しか残らないとします。そのうちに、残胃にガンできて、それをまた取るわけです。でも、またできると怖いということで、また取って、結局胃が無くなってしまいます。ある意味では名言だと思いますが、「胃が無けれりゃ胃ガンにならない」という医者がいました。これは究極の話ですが、そういう発想が昔からありました。

取るということは、ただ見えなくしてるだけです。視界から無くしているだけのことです。僕はいつも患者さんに少量のガン細胞は毎日生まれていると言っています。要するにガンは常に存在するということです。量が少ないだけで、毎日生まれていて、ただ認識されてないだけです。ガンがないというのはイメージの世界にすぎません。常にあるのです。

そうしたネガティブなものをかかえこみながらも、人にはそれを排除したり、コントロールする力があるから、元気でいられるわけで、ガンはある日突然生まれるというものではなく、ずっと前からあるものなのです。ストレスなんかで免疫力が下がった時にドーンと増大するのです。

ガンになるには遺伝的素因が関係します。ガン遺伝子がONになって抑制遺伝子がOFFにならないと発ガンしません。このオン・オフに食事やら環境やら、いろんなものが絡んでいて、わからないだけです。そして、ガンが大きくなってから対処していたのが20世紀の西洋医学でした。

ガン治療には、機能性食品も含めていろいろな選択肢がある

恒川:ガンは重石(おもし)みたいなもので、免疫力の上にドーンとのっかかっているので、ガンに対する治療も必要です。当院の患者さんは、どちらかというと他院で抗がん剤を使用している人が多く、ガンにはある程度効きます。しかし、免疫力をチェックしていて、下がったら、止めろと言います。白血球数、リンパ球数だけを見ていてもだめ、NK活性なども調べないと、免疫力のチェックにはなりません。

ガン治療には、養生法や機能性食品も含めていろいろな選択肢があります。主体的に選べる人には、何でも手段になります。良いも悪いもないです。評論家みたいに何かいいとか悪いとか言っていても、実際、ガンになって、本当に賢い人だったら、うまく取り入れるでしょう。(元NHKのアナウンサーで女優の)池田裕子さんなんかはすごい人だと思いますよ。

「たった一人の医師とか民間療法の先生の言いなりになってはいけない」

恒川:彼女のお母さんは乳がんでなくなっています。それで、彼女は手術せず、いろいろな相補代替医療をやったのですが、うまくいかなかった。そして、1年2ヵ月後にあちこち転移して大変なことになりました。その段階で抗ガン剤をはじめて良くなり、現在週に1回の点滴をしながら生活をしています。すごいのは「かつての私のように西洋医学を拒否している人には、逃げないで、反対に医療者任せにしている人には、自分で作った細胞だから自分で治そうとしなさい」と言っていることです。また、「たった一人の医師とか民間療法の先生の言いなりになってはいけない」とも言っています。賢明な方だと思います。

代替療法でも西洋医学でも必要であれば使い、必要でなければ使わないというのが賢明

恒川:この方は西洋医学的にはステージ4の末期ガンですが、ガンと共存しながら、生きておられるわけです。こういう方の話には、ものすごく説得力があります。抗ガン剤がどうとか、民間療法がどうとか、玄米菜食がどうとかいう方法論を論じる前に、まずどう生きたいのか、死をどうとらえるかといった死生観をおさえた上で方法論を論じないとだめじゃないかと思います。

はじめに方法論ありきでは、どうしようもないです。賢明な方であれば、必要であれば使うし、必要でなければ止めます。代替療法でも、西洋医学でも同じことです。

医療者というのは、コーチみたいなもので、患者さんのサポーターとして一緒に走っていくわけです。主役は患者さんで、サッカーでいえば、ピッチに立っているのは患者さんです。医者でもなければ、家族でもない。蹴るのは患者さんです。でも、ゴールの前に球があっても、蹴る気がなければゴールに入りません。これが、本質的なところです。我々は、応援して、がんばれよと言ったり、こっちにきなさいと言って、コーチをすることはできても、結局はその人がどうするかというのが最終的な分かれ道になります。

「強い意志が遺伝子に影響する」

恒川:大切なのは、やっぱり治りたいという気持ちです。「強い意志が遺伝子に影響する」ということ。それと、行動しなきゃだめ。さらに言うと、その場を支えている人たちの思い。一人一人の思い、行動、場の力がガン抑制のスイッチのオン・オフに影響を与えます。

あるすい臓がんの患者さんですが、この方は腹水がたまっていて手術不能な状態でした。もうすることがないから退院しなさいといわれて、家に帰る途中に当院にみえました。本人は治したい、でも治療法がない、と主治医に言われ、私のところに来られたわけです。それで、私は、「やってみなければ、わからない」と答えました。

そうしたら、毎日来ますといって、遠いところから、毎日来られました。家族の車で3時間かけて来られました。そして、ビワの葉療法をやったり、ビタミンCをやったりといろいろなことをやりました。それでも、やはり水が溜まってしまうわけです。それで、一通り終わって、診察する時に必ず、「私は治りますか?」と聞かれますので、私も「大丈夫治りますよ」と言い、そして帰っていかれるのです。しかし、1日、2日と、日に日に悪くなっているのはわかります。もともと肝臓も悪いし、腎不全で尿も出ません。

それで、もうあまり無理せずに自宅療養したほうがいいと家族に言っても、本人が聞かず、毎日おみえになりました。ビワの葉療法で温めたりしますから、痛みやむくみは取れ、調子はよくなるのですが、家に帰ると悪くなります。腎臓が悪いためむくんで、尿毒症独特の匂いもするため、もうこれは、ドクターストップだと思い、入院して、もう一回よくなったら来られればいいと言いました。それでも来たいっていうわけです。毎日続けて、1週間みえました。それでも、どんどん悪くなる。木曜日にみえた時にあまりにも悪いもんだから、「治りますか?」と聞かれても「治ります」と目を見て言えませんでした。金曜日に来られた時、もうドクターストップだと思い、「入院を頼んであげるから、もいっぺん出直そう」と言いました。それで、帰りに入院されたのですが、土曜日の朝亡くなられました。

人間というのは、まず気力、精神力があって肉体がついてくるもの

恒川:入院した翌日に亡くなられましたから、まさに気力でもっていたわけです。「治る」という言葉でね。「治りますか?」と患者さんが聞かれるから、私は「大丈夫治りますよ」と答えていた。その言葉を聞きに患者さんは来られていたかもしれません。毎日ね。宗教家だったら、大丈夫だよと、最後まで言い続けられたかもしれない。ところが、私は宗教家ではなく、医者だから、患者さんの目が見られないわけです。もう大丈夫じゃないと思っているから。

だから、私は人間というのは、まず気力、精神力があって肉体がそれについてくるものなんだなって思います。今思うと、その時彼女はもう肉体的には死んでいたわけです。ギリギリのところで、一つの思いだけで、彼女は生きていた。ですから、気力というのはすごい力です。ヒトというのは肉体とか全部包括したスピリチュアルな部分も含めた存在で、本当に計り知れないものなので、肉体だけ治したらいいはずがありません。結局私達ができるのは、その人の中にある本質的な力を、どこまでサポートしてあげられるかということではないでしょうか。



◆プロフィール
恒川 洋(つねかわ ひろし)

<略歴>
1948年名古屋市生まれ。73年昭和大学医学部卒業、内科医、医学博士。国立名古屋病院消化器科、名鉄病院消化器科部長などを経て90年恒川消化器クリニック副院長となる。日本消化器病学会評議員、日本レーザー医学会会誌編集委員等の要職を務める一方、91年に東海ホリスティック医学振興会を設立し、会長に就任。ホリスティックな医療・健康に関するセミナーや講習会、教室の開催と情報の発信を中心に、患者、家族、医療者、療法家等が自由に交流できるネットワーク型の場作りを推進している。著書に「現代養生法ガイド」(2000年、新日本法規出版刊)、「がん治療に?を感じた時に読む本」(2002年、ライフ企画刊)等がある。

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