遅延型アレルギーに副腎疲労、現代人を襲う慢性病

銀座上符メディカルクリニック
院長 上符正志 氏

日本で年々アレルギーや鬱の罹患者が増加している。現代人特有の慢性病のような様相を呈しており、従来の対処法では限界があるとの指摘もされている。遅延型アレルギー、副腎疲労の観点から治療にあたる銀座上符メディカルクリニックの上符院長に対処法を伺った。

--- アンチエイジングなど取り組みについてお聞かせください

上符:私はアメリカの抗加齢学会のメンバーで、このクリニックは予防医学が専門です。20年以上前からアメリカの医師たちが行っているアンチエイジングの検査や治療法に基づいておこなっています。

遺伝子の治療から抗酸化療法、ホルモン補充、重金属排出などいろいろな切り口がありますが、私が積極的に行っているのは遅延型アレルギーとホルモンの総合分析です。

アレルギーというと一般に、エビや小麦、チーズなどを食べて、アナフラキーショックになるというT型で、これは本人も分かりますし、IgEといって一般の内科医も検査で分かります。

遅延型は食べた時はなんともないですが、だいたい6時間で発症するというものです。3時間内だと遅発型、6時間だと遅延型です。こうしたアレルギー検査は、日本はほぼ即時型で、遅延型についてはまだ普及していません。

--- 遅延型アレルギーというのは、具体的にどのようなものですか

上符:遅延型アレルギーは日本の検査会社では測定ができないため、ここで採血してアメリカに送ると、1カ月ほどかけて検査機関が血液を分析し、レポートにしてくれます。

乳製品や肉、フルーツといった96品目の食材別にIgGという抗体をみて、その方の体が、どれくらい特定の食べ物に対して抗体を持っているかを分析し、血液の評価を行います。


たんぱく質は全てアミノ酸になって、腸に吸収され、細胞になるための栄養素になります。本来、抗体はないのですが、例えば、卵の白身や黄みが腸管に詰まって、体に異物反応を起こし、IgG抗体が作られる場合があります。

卵はたんぱく質ですから筋肉や肌、爪の原料になります。ただ、卵は分子量が4万もあり、そのままでは腸のパイエル板を通りません。そこで消化により分子量を小さくし、パイエル板を通り抜け血液の中に入るようにします。

たんぱく質は胃酸によってペプチドになり、さらにたんぱく分解酵素によってアミノ酸になって初めて血管に入ってきます。しかし、食べ過ぎるとこれが間に合いません。要は過剰摂取です。これが遅延型アレルギーの原因になります。

管理栄養士の先生や食事指導のプロの方々は食べるまでの栄養指導をします。その人の年齢、身長、運動量、必要カロリー、炭水加物、ビタミンなど完璧に計算してメニューを作ります。

しかし食べるまでを見届けても、食べた後、体内でどう吸収されたかまで見届けることができません。そこが大きな問題です。遅延型アレルギーというのは食べ物がどう吸収されたか、ということなのです。

--- 今、増えつつある現代人のアレルギーの原因もそこにあるということですか

上符:日本の皮膚科では血液を調べますが、遅延型の場合は、即時型と違いIgEは出ません。腸管の内腔には小さなつくしのようなものがいっぱい生えています。腸は表面積がテニスコート一面分260平方メートルもあります。

食べ物は腸のパイエル板のタイルのようなつなぎ目の隙間から入ってきます。排水溝の雨水のように徐々に入ってきます。ところが、食べ過ぎたりすると分子量が大きすぎてここが詰まってしまいます。

卵やヨーグルトをお腹のためだからと毎日食べていたら、それが全部腸のパイエル板に詰まっていたというケースもあります。

パイエル板が詰まると抗原抗体反応が起きてつなぎが緩くなります。そうすると本来入ってはいけないグルテンまで血液の中に入るようになります。

ふつうは血液にグルテンが入ることはありませんから、体はそれを異物と反応して抗体を作ります。これは食べ物じゃない、ウイルスだ、と誤解して戦い始めます。

朝食べて6時間以降、夕方くらいから肌がかゆくなったり、頭がかゆくなったりしてもあまり気がつきませんが、実は、朝食べた物が原因で遅延型アレルギーを起こしていたというわけです。

夕方から下痢が酷くなったり、ガスが溜まったり、便秘になったり、頭が痛い、耳鳴りがする、ということもありますが、朝いっぱい食べたヨーグルトがその原因だったということもあります。

男性も慢性の疲労感、リュウマチや自己免疫疾患、クローン病といった潰瘍性大腸炎がもたらされることがあります。

これまであまり気がつかなかったのですが、こうした遅延型アレルギーが今増えています。腸はとくに免疫に関係しますが、腸内細菌のフローラが崩れるといろいろなトラブルが起きてきます。

--- そうすると、やはりまず腸内フローラを整える必要があるということですね

上符:そうです。卵1個でパイエル板に詰まる人がいれば3個でも詰まらない人もいます。そういう人はたんぱく質をペプチドでアミノ酸に変えていく分解能力が高い人です。

最後に腸の中で腸内細菌が食べ物を分解してくれれば問題はありません。唾液や消化酵素、胃酸も食べ物を分解してくれますが、私たちは唾液も胃酸も増やすことはできません。しかし腸内細菌は増やすことができます。ですから、善玉菌、乳酸菌を増やすことが大切です。

今、非常に腸の環境が話題になっていて、多発性硬化症も腸内環境が原因といわれています。膠原病は実は神経疾患とか遺伝的なものといわれてきましたが、もっと調べてみると多発性硬化症の患者さんも腸内細菌のバランスが非常に偏っていることが分かってきました。

血液をアメリカに送って、治療しても中々よくならない場合は、便の中の詳しい検査を行いますが、そうすると腸内の環境がよくわかります。

ビフィズス菌や乳酸菌、日和見菌、悪玉菌をみて、悪玉菌や日和見菌が8割を超えていたら明らかに腸内環境が悪いので、その時はプロバイオティクスやプレバイオティクスの大量投与を行います。

たまにカビ(真菌)の場合もありますが、そういう場合は、抗真菌剤を使ってカンジダを治療します。こうした分析でやっていくのが一番進んだやり方で、日本ではまだやっていませんがアメリカだとここまでやります。

--- 遅延型アレルギーは欧米食の影響も考えられますか

上符:日本人がもともと摂ってきた米や麦、魚では遅延型アレルギーはあまり出ません。しかし、卵や乳製品、肉類などの過剰摂取で発症しています。

卵でいうと、その方の腸の分解能力が、卵という大きな分子量に対して弱いと発症します。分子量が大きいものであればあるほど分解が難しくなります。食べ過ぎ、つまりその人の分解能力を超えた量を食べていることが問題です。

一方で、沢山食べても遅延型アレルギーが全く出ない人もいます。たぶん食べた物を完全に最小の分子量まで分解できているのだと思います。そういう人はお腹が強くて免疫も強いです。

--- 玄米や雑穀で腸内環境がよくなるといわれますが、日頃の食事での腸内改善については

上符:いくら食べてもIgEが出ないものもあります。玄米は出ないです。白米は少し出ますが小麦に比べるとはるかに少ないです。私たちが何千年と食べてきた日本に昔からある食材には、腸内細菌も腸内の長さも温度も対応していて、分解できているのだと思います。

今、女性は大腸がんが多いですが、女性が好きな食べ物には卵や小麦粉が多く使われています。大腸がんの原因は明らかに腸内の残渣です。便秘になると、乳製品が異常発酵を起こして悪玉菌のところに残ります。

そこでインドールとかスカトールとか硫黄を含んだガスが発生し、腸管の内膜を傷つけ、がん化していきます。

--- ホルモン補充についてお聞かせください

上符:ホルモンは体全体、脳から足の先まで約70出ています。そのうちの12種類が年齢とともにあがってピークを迎えると、年齢とともに下がっていきます。

そうした年齢依存型のホルモンを測定して評価表を作ります。50歳の方であれば、ホルモンの理想値が分かっていますので、その理想値と比べて評価をします。

例えば、同級生が100人いると、3%くらいはものすごく元気で若々しく、仕事もできてプライベートも楽しそうですが、そうした人たちのホルモン値にもっていくことを目指します。

若々しさを保つホルモンはDHEAというものです。副腎からいろいろなホルモンが作りだされますが、そのうちの一つで、マスターホルモンといわれています。

DHEAは年齢とともに下がっていくいろいろなホルモンをバックアップする最後のホルモンの砦ともいわれています。免疫をあげる、がんを予防する、ストレスを打ち消す、ケガを治す、記憶力を高める、メンタル面をケアする、などさまざまなことに関連しています。

DHEAが低下すると、肥満、気力の低下、眠れない、鬱、肌荒れ、抜け毛、といった症状が出てきます。アンチエイジングドッグでこういうことを測定して、必要があれば天然型ホルモンのDHEAを補充していきます。

DHEAの原料はヤム芋ですが、製品は日本ではまだ薬事法で認可されていません。アメリカでは20年以上前からごく普通にあります。これを飲むと徐々にホルモンが上がっていき、いろいろなホルモンに変わっていきます。

最近なんとなく疲れやすい、眠れない、趣味に対しても気力がなくなったということで、人間ドッグに行ったが何の異常も出ない。そうしたことの原因はホルモンの低下にあります。

--- 鬱の人が増えているといわれていますが、ホルモンの低下と関係していますか

上符:鬱の人で、脳のセロトニンが出なくなって薬を使っても一向によくならないという人がいます。よく生活環境を変えたり、温泉に行くといい、といいますが、その時にちょっと疑って欲しいのが副腎疲労ということです。

副腎疲労症候群という言葉は最近少し話題になってきましたが、副腎が疲れると慢性的な疲れ、眠れない、起きれない、記憶力や思考力の低下、性欲の低下、感情のブレといった症状が出てきます。

これだけみると更年期か鬱の症状です。診療精神科や婦人科に行って治ればいいのですが、実は調べたら脳の病気ではなくて副腎疲労だったということがあります。

いろいろな薬を使っても血圧が下がらない、気力はあるが体が動かない、というのは実は原因は副腎というエンジンが動かないからです。脳がアクセルを踏めといっても、副腎が動かないのです。こうした副腎疲労にもDHEAはいいです。生涯飲まなくても、副腎の疲労ですから回復すれば止めればいいです。

私は専門が内科ですから、内からのアプローチを行っています。せっかく良い物を食べていても着火剤がないと燃えません。それがホルモンだったり、フードアレルギーだったりということで、いろいろなウインドウを開けて見てみるというのが予防医学の医者の役目です。



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