納豆の抗老化因子ポリアミン、動脈硬化抑制し日本人の長寿に貢献

2004年11月30日(火)、有楽町朝日スクエア(東京都千代田区)で第二回「納豆健康学セミナー」が開催された。当日、早田邦康氏(自治医科大学大宮医療センター講師)、 浦野哲盟氏(浜松医科大学助教授)らにより、納豆に多く含まれるポリアミンの動脈硬化抑制、抗老化作用などの講演が行われた。また、杉本恵子氏(管理栄養士)による納豆のレシピも紹介された。

動脈硬化対策、コレステロールの炎症抑制が不可欠

「長寿地域の共通の食文化」と題した講演の中で、早田氏は、「日本は多くの動脈硬化の因子に囲まれているにもかかわらず、動脈硬化が原因で発生する病気は先進国の中では少ない」と述べ、豆類に多く含まれるポリアミンの関与について説いた。
動脈硬化の要因といわれる喫煙率で、日本は先進国中トップ、また近年動物性脂肪の摂取も増え、コレステロール値はすでにアメリカ人を超えているともいわれるが、動脈硬化が原因とされる脳梗塞、心筋梗塞などの発症率は先進国の中でも低いという。

動脈硬化の原因は、動物性脂肪の摂り過ぎによる血管内のコレステロールの沈着といわれている。しかしながら、「実は動脈硬化に炎症が非常に重要な役割を果たしているということがわかってきた。沈着したコレステロールが酸化され、炎症を誘発する、これが動脈硬化の機序の一つとして指摘されるようになった」と早田氏。 コレステロールが血管内に溜まると、免疫細胞が反応し、細胞接着因子であるLFA-1がリンパ球を活性化し、炎症を誘発する。そのため、LFA-1を 減らし、炎症を起こしにくくすると動脈硬化の進行が抑制されるが、ポリアミンにはLFA-1を選択的に抑制する作用があるという。

ポリアミンは、微生物、動物問わず全ての生物に含まれている。アミノ酸の一種、アルギニンからヒトの体内でも合成されるが、加齢とともに合成量が低下する。そのため、食事からポリアミンを補給することが必要で、とくにチーズやヨーグルト、納豆のような発酵食品は微生物による発酵過程で多くのポリアミンを含むという。

また、老化も炎症と密接に関連しており、「高齢者ほど免疫細胞のLFA-1が増える。これは遺伝子的に決まっている。血液細胞のポリアミンを増やすことによってLFA-1を減らすことができる」と早田氏。

日本人は、DHAやEPAのようなn-3系脂肪酸を多く含む魚の摂食とともに、LFA-1の抑制に関わる高ポリアミンの納豆などの豆類を多く摂ってきたことが、動脈硬化抑制につながり、長寿体質の形成に役立ったという。

納豆、血栓溶解阻害因子PAI-1を抑制

また、浦野氏は、「生活習慣と血液の健康」と題した、血栓形成機序についての講演で、「血液凝固系の調節因子の異常が血栓症につながる」とし、「血栓溶解(線溶)活性の低下が血栓症の危険因子となることが明らかになってきた」と指摘。線溶活性は、促進因子のplasminogen activator(PA)と抑制因子のplasminogen activator inhibitor type l(PAI-1)のバランスで決まるが、「炎症反応があると血液のPAI-1が上がって血液は溶けにくくなる。慢性炎症により動脈硬化が進みやすくなる」と述べた。

納豆抽出物をラットに3週間経口摂取させ、線溶活性の変化を検討した試験では、線溶活性が有意に上昇し、PAI-1濃度が低下したことを報告した。


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