「地産地消」が日本の農業を救う
〜「第8回メディアとの情報交換会」


2010年7月20日(火)、東京ベルサール八重洲で、「第8回メディアとの情報交換会」(主催:食の信頼向上をめざす会)が開催された。地産地消ははたして日本の農業を救う救世主となり得るのか、今回は、「地産地消とは何か?」をテーマに、最新の動向が報告された。

地産地消について、女性農業士の立場から
坂東女性農業士会 元会長 荻野利江氏

ここ数年、食品表示の偽装や事故米の問題など、食品の安全性が疑われるような事件が頻発したが、そうした食品業界の不祥事により安全な食品を求める消費者ニーズが高まっている。

地元で取れた食物をそこに住む人々が消費する「地産地消」という食のスタイルは、食品の鮮度や地場産業の活性化という点で、地元の人々にとってもメリットが大きい。食の安全性が求められる今、地元という生産地証明の明らかな食品は、今後さらに消費者に求められる傾向にあるといえる。

茨城県坂東市に在住の荻野氏は女性農業士という経験を通して、現在の「食」流通が抱える問題を指摘した。
荻野氏は、荻野牧場を経営、およそ60頭の牛から牛乳を搾取をしている。加えて、農業士としても活動している。農業士とは、優れた農業経営を行ないつつ、農村青少年の育成に指導的役割を果たしている人物だけが知事から与えられる資格である。

荻野氏のような女性農業士は、農業経営と農家生活向上に意欲的に取り組み、地域の女性リーダーとして活躍することが求められる。現在、女性農業士は250名程度いるという。
また、女性農業士は国際感覚も求められる。一年程度の研修(語学を含む)を受けた後、ドイツなどでの海外研修にも参加しなければならないという。

地元の新鮮な野菜や素材を学校給食でも使ってもらえるように働きかける

荻野氏らは、日本の農業を元気にするために、様々な活動を行っているという。
例えば学校給食。便利さやコスト面から安易に冷凍食品を使用したり、輸入もので済まそうとする傾向があるが、荻野氏ら女性農業士は、地域で採れた新鮮な野菜や素材を学校給食で使ってもらえるよう働きかけるなど、地域の子どもたちに地元の野菜、農業の素晴らしさを理解してもらうよう地道な運動を定期的に続けているという。

また、道の駅へも出店して10年になるという。毎週末、道の駅で実演販売を行なうことで、消費者と生産者の距離を縮め、日本の農業への信頼を取り戻す努力をしているという。

その他、直売所への出品、加工品の研究開発、食と地域産業のワークショップの開催など、女性農業士として、農業の現場に留まるだけでなく、女性ならではのコミュニケーション能力を活かした外部とのコンタクトを積極的に展開している。

流通ではねられるB級品

農薬の規制が年々厳しくなり、農家にとっては頭を抱える問題の一つになっているという。農薬を使っても使わなくても、食物には必ずいびつなものや虫に食われるものが出来る。これはいわゆるB品として分類されるが、農薬を使わなくなるほどB品が増え、流通に乗らなくなるという。

多くの消費者が、多少形が悪くても無農薬のものがいい、といっているにもかかわらず、実際は中間に入っている流通ではねられてしまうし、直売所でも見た目の悪いものはどうしても売れ残りがちだと荻野氏はいう。

しかし、それを女性農業士たちは加工という方法で、幾度となく現場を救ってきたという。そうした同業者たちのネットワーク、フットワーク、チームワークが日本の農業の根底を支えていると荻野氏はまとめた。



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