オキアミオイルの生理活性機能
2011年10月6日(水)、東京ビックサイトで「食品開発展2011」セミナーが開催された。超高齢化社会の到来に伴い年々需要の高まる健康素材・美容素材・アンチエイジング素材が国内外から数多く出品、エビデンスや最新のテクノロジーについての発表も各企業から行われた。この中から、日本水産鰍フ「オキアミオイルの生理活性機能」を紹介する。


加工適性が優れているのが大きな利点

クリルオイルはプランクトンの一種であるオキアミから加工・抽出された食品素材で、やや粘性のある暗いルビー色のオイルである。リン脂質が豊富で、とくにEPAとDHAを多く含むことから、新規脂質素材として関心が寄せられている。オキアミは南氷洋に生息し、最大のバイオマスとしても注目されている。

クリオオイルの特徴は、リン脂質でありながらオイルタイプであること。そのため加工適性が優れているのが大きな利点。また、高い酸化安定性を誇り、脂質にも関わらず酸化しにくいのは、含まれているアスタキサンチンとの関連ではないかと考えられている。

吸収性にも優れ、生体になじみやすい他、汚染が極めて少ない南氷洋から採取されるオキアミを原料としていることから、安全性が極めて高く食材として非常に優れているという。

ラット実験で、肝機能の保護が明らかに

クリオオイルの機能性としては、まず月経前症候群PMSの改善と緩和、月経困難症状の改善と緩和。そして関節炎による炎症の抑制と諸症状の改善、さらに血中中性脂肪のバランス改善、メタボリック症候群発生の予防および改善、血中または脳中ω−3HUFAの増加、近年では児童の注意欠陥・多動性障害(ADHD)の改善などが挙げられる。

ラットの実験で、クリオオイルを経口投与したラットと、何も投与しないラットに、1時間後アルコールを経口投与し、血中アルコール濃度、酩酊状態、肝機能指標を比較したところ、クリオオイルがアルコールの吸収抑制、代謝促進機能を有することが判明し、生体の酩酊状態を改善するとともに肝機能を保護することが分かった。

精子の運動機能や生産能力の改善に関与

また、別のラット実験で、5週連続クリオオイルを経口投与し、その後ペアリングしたオスとメスのラットの交配行動を観察したところ、加齢のために交尾回数が減少したラットでもクリオオイルの投与5週間後には若年のラットと変わらない交尾行動を示した。

これにより、クリオオイルには生殖機能改善効果があると認められるが、ホルモンの変化について調べたところ変化はなく、それよりも精子の運動機能や生産能力の改善に関与していたことが判明したという。

クリオオイルには加齢による生殖行動の不活性や精子生産能力の低下を抑制、あるいは改善し、精子の機能性維持に有用性を示した事がこれらの実験から明らかとなった。

ヒト臨床試験では情報処理速度が上昇

また、ヒト臨床試験で、健康な60〜72歳の男性30名を2グループに分け、クリオオイルを一日2g摂取したグループと対照群に分けて脳の酸素化ヘモグロビン濃度と計算能力の測定を12週かけて行ったところ、クリオオイル投与群のほうが脳内細胞の活性化が見られ、情報処理速度も上昇したことが認められたという。

このメカニズムとして、クリオオイルがヒトの脳内の酸化ストレスを低下させるとともに、神経細胞の新生を促進させ、空間認知能力を向上させることが示唆された。また脳における酸素濃度を上昇させ、脳を活性化させ、加齢に伴う認知、すなわち情報処理速度の低下を改善するメカニズムについてもほぼ解明されつつあるという。

これらの実験で行われたクリオオイルの投与による毒性や変異生は認められず、ヒト試験においても投与期間中あるいはその後の投与による有害事象は認められなかったという。安全で機能性の高いクリオオイルについては今後も注目が集まり、さらなる機能性が発見される可能性もあるとまとめた。


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