ビタミン、新たな隠れ饑餓の問題
〜ifiaJAPAN「第17回 国際食品添加物展・会議」

2012年5月23日(水)〜25日(金)、東京ビッグサイトで、「第17回 国際食品添加物展・会議および10回ヘルスフードエキスポ」が開催された。企業セミナーでは、今話題の機能性素材が紹介されたが、この中からDSMニュートリションジャパン(株)によるビタミンの最新情報について紹介する。


高齢者や妊婦にとってビタミン・ミネラルは重要

ビタミン・ミネラルの最新情報について担当者は次のように報告した。
ビタミン・ミネラルが人間の身体の維持・調整に重要であることは一般的に知られるようになった。タンパク質や糖質、脂質のように人体の構成に直接関与しなくとも、3大栄養素の体内調整に重要な役割を果たしている。

ビタミン・ミネラルは体内で合成できないため、意識的に食事から摂取しなければ心身に不調が生じる。近年の研究では特に高齢者と妊婦、そして赤ちゃんにとってビタミン・ミネラルが非常に重要だが、こうした人たちに非常に不足しやすいことも明らかになっている。

不足すると免疫力低下や代謝低下など招く

骨粗鬆症をはじめとし転倒による骨折など、骨の問題を抱える高齢者は少なくないが、その多くがビタミンの欠乏状態にあることが示唆されている。また乳幼児に起こりがちなトラブルの多くの原因が、妊婦の十分なビタミン・ミネラルの摂取不足との関連性が指摘されている。

近年では過度なダイエットをしている人にもビタミン・ミネラル不足が多く、免疫力の低下や代謝低下などの問題が起こりやすい。ビタミン・ミネラルが不足し、すぐに病として症状が表れなくても、精神的なイライラ、皮膚や髪、爪のトラブル、記憶障害や慢性的疲労などの不定愁訴となって肉体が緩やかに蝕まれることが多い。

東日本大震災では「特性サプリメント」が配布

昨年の東日本大震災では、大量の支援食料がセンターに山積みにされている映像が流れた。しかし、栄養学的には問題があり、おにぎりや菓子パン、インスタント食品を中心とした長期の食事で、ビタミン・ミネラル不足が深刻となり、被災者に追い打ちをかけるようにさまざまなトラブルや不調がもたらされた。

状況は徐々に改善され、最終的には「特性サプリメント」が炊き出しで配布されるようになったが、この経験を経て、今後の被災地支援では「十分な食料」だけでなく、「ビタミン・ミネラル」の支援が新たな課題として周知されるようになった。

隠れ饑餓人口は20億人

世界的な観点から眺めてみても、カロリーが満たされているのにビタミン・ミネラルが不足している「隠れた饑餓」人口が20億人を超えている。これは新しい饑餓の問題として、今や世界的な課題となっている。 この20億人のほとんどが先進国で生活をしており、先進国こそ食事の内容を見直す必要に迫られている。

ビタミンDの新しい効果

こうした中、先進国を中心に特にビタミンDの摂取量の急速な見直しが進められている。Dといえばこれまで骨の健康に効果的くらいしか知られていなかったが、ここ数年の研究によると「抗インフルエンザ作用」「運動機能改善効果」「抗結腸がん作用」「抗PMS(生理前)作用」「血圧心疾患緩和作用」「2型糖尿病の緩和作用」などが確認され、非常に注目を集めている。

ビタミンD研究は1959年頃から開始され、さまざまな文献が発表されてきた。1989年頃まで文献数は750点程度だったが、1999年頃から研究が盛り上がり、2000年に激増している。

2009年の時点では2000点を越す文献が確認されている。研究領域は先に挙げた複数の効果同様さまざまで、現在とくに研究が進んでいるのが「筋肉の質の改善と転倒の防止効果」についてである。

「転倒リスクの軽減」で摂取目安量を引き上げ

これまで、ビタミンDの摂取目安量は「骨密度」の低下を予防するために最低限必要な血中濃度を指標として設定されてきた。例えば、日本人の食事摂取基準(2010年度版)によると、その目安量は男女18歳以上で5.5μg/日とされている。しかし米国では2010年度にこの目安量が大幅に引き上げられ、15μg/日に改訂された。

背景にはビタミンDの推奨量及び目安量は「骨密度」の低下予防だけでなく、「筋肉の質の改善と転倒防止効果」までを考慮すべきだと学会や研究者がこぞって発表したことにある。

メディアもこれらの発表や研究に追随し、理想のビタミンD摂取量は17.5μg/日が妥当であると考えられるようになった。ちなみにアメリカの新基準である15μg/日では効果が期待できず、17.5μg/日の摂取で、はじめて転倒リスクが軽減されることが様々な臨床実験で明らかになっている。

複合的な効果のためには20μg/日のDが必要

今後の日本人のビタミンD摂取量についても、どれくらいが適切なのか現在さまざまなケースで検討がなされている。とある施設入所高齢者に対するビタミンDの介入試験の結果では、5.5μg/日では極めて不十分で、ビタミンDの複合的な効果を得るためには20μg/日を要すると、京都女子大学が発表している。

高齢期における血中ビタミンD濃度の低下予防、ひいては転倒予防のためには最低でも10μg/日以上のビタミンDの摂取と適切な日光浴をすべきであると、国立成就医療研究センターも発表している。

今後、うつ病などのリスク低下のメカニズムも期待

国内では高齢人口の急激な増加に伴い、骨の健康に関する市場が拡大している。生涯にわたって骨の健康を維持することは多くの高齢者の希望であり、そのためには若年時代から意識的に骨の健康維持に取り組まなければならない。

しかし現在の日本人にとって、ビタミンDは他のビタミン以上に欠乏状態にある。行政によってビタミンDの摂取目安量を引き上げることは重要であり、これは医療費削減にも役立つ。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年度版」では成人男女の目標量が10〜20μg/日と定められているが、「日本人の食事摂取基準(2010年度改訂版)」では成人男女だけでなく高齢者までも5.5μg/日で、この矛盾と乖離をなくすことが極めて重要である。

今後の研究で、心疾患や糖尿病、感染症、うつ病などのリスク低下のメカニズムの解明に期待が寄せられる。



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