健康食品の品質表示、利用者アンケートを分析 〜薬健研 「機能性食品勉強会」
2012年9月25日(火)、大正製薬ホールで、薬業健康食品研究会主催の「平成24年度 第1回 機能性食品勉強会」が開催された。食品の品質安全と表示について、消費者がどのようなものを求めているのか、最新の利用者アンケートの分析結果を内閣府の消費者委員会委員でもある専門家が解説した。

健康食品の表示等のあり方に関する考え方〜利用者アンケートの分析結果からの課題と今後の運営
実践女子大学大学院 生活科学研究科 食物栄養学専攻 教授
消費者委員会 委員 田島 眞

トクホを含む健康食品のあり方について検討と議論

自民党政権下の平成21年9月に発足した消費者委員会(10名の委員から成る。現在の構成メンバーは理系が1名で残りは文系。法律の専門家と消費者団体で構成)だが、発足直後から大きな課題にぶつかってしまったという。

まだ記憶に新しい、いわゆるエコナ油問題だ。特定保健用食品(以下、トクホ)として認証されていた食用油に発がん性物質の混入のおそれがあることが報道され、トクホ製品の基準や表示のあり方について消費者委員会でも活発な議論が交わされることとなった。この問題は結局、業者による承認の取り下げで決着した。

しかしこれをきっかけに消費者庁に「健康食品の表示に関する討論会」(13名の有識者や学識者から成立)が設けられ、トクホを含む健康食品のあり方について検討と議論が計10回行われた。ほぼ一年かかり、平成22年8月には議論の最終報告がまとめられ、「検討会」側からは消費者委員会、消費者庁の双方に提言がなされた。

「医薬品の再審査、再評価制度」を参考

この提言の内容とは、消費者庁に対しては、
@トクホの表示許可制度の見直し(特に、トクホ許可後に生じた新たな科学的知見の収集について)、
A健康食品の表示・広告規制の見直しであり(特に、健康増進法および景品表示法の連携を強化すること)、消費者委員会に対しては@トクホの表示許可制度の見直し(特に許可を一時停止するかどうかの仕組みなど)、A健康食品の表示の効果的な規制や適切な情報提供の仕組みづくり(消費者にアドバイスできる専門家の養成の検討など)であったという。

これを受けた消費者委員会は、専門調査会である「特定保健用食品の表示許可制度専門調査会(メンバーは4名)」を立ち上げ、先の@である「トクホの表示許可制度」の見直しを行った。この際に参考にしたのが「医薬品の再審査、再評価制度」であったという。

健康食品の表示について再検討

全ての医薬品については再審査、再評価が義務づけられており、特にトクホ商品にはこの制度を転用できないかどうか議論が続けられたという。

その結果、トクホの最新手続きの明確化と許可の更新制度の導入を決定し、消費者庁に申し送った。さらに消費者委員会ではAの「健康食品の表示の効果的な規制や適切な情報提供の仕組みづくり」を図るために、学識経験者からのヒアリングも行うなどの努力も行ったという。

しかし、この流れのなかで政権は民主党に変わり、消費者委員会のメンバーも第2期メンバーとして10名の内8名が大きく入れ替わってしまった。

そのためこれまでの審議や議論がやや後退するようなかたちで、健康食品の表示について再び検討が開始されたという流れがあったと説明。新たな枠組みやシステムを再構築する前に、まず健康食品の利用実態を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施することになったという。

20歳〜79歳までの男女合計1万人にアンケート

これまで健康食品の利用実態については、さまざまな調査が独自に行われているが、多数の一般人を対象としたものがなかった。これは、消費者委員会が独自にインターネットを使って調査した初のアンケート調査である。このアンケートは20歳〜79歳までの男女合計1万人に対して行われた(年代構成は総務省が発表している日本の人口構成に合わせた)。結果は下記の通りである。

「消費者の『健康食品』の利用に関する実態調査(アンケート調査)」:(調査は楽天リサーチに委託)平成24年2月28日〜同年3月5日
※この「健康食品」にはトクホ、栄養機能食品も含まれる。

@ 健康食品を利用する頻度
「ほとんど毎日利用している」26.2%
「たまに利用している」32.3%
「以前は利用していたが今は利用していない」16.5%
「利用したことがない」25.0%

これにより約6割の消費者が現在健康食品を利用していることが明らかとなった。これは委員会の予想を上回る数値であったという。

A 健康食品に抱く満足度
「満足」5.5%
「やや満足」53.0%
「やや不満」33.5%
「不満」7.7%

これにより約6割の消費者が健康食品におおむね満足していると判断できる。不満の理由としては効果が得られなかったこと、あるいは価格が高かったことなどで、安全性についての不満はほとんどでてこなかったという。

B健康食品を利用する目的
「体調の維持・病気の予防」50.3%
「健康の増進」45.2%
「美容」11.4%
「ダイエット」14.0%

これにより病状改善や治療目的での使用より疾病予防、健康維持のヘルスメディケーションとしての利用が多いことが明らかとなった。

C 健康食品に対して重視する事項
「価格」18.4%
「安全性」27.0%
「効果・有効性」47.8%
「味や飲みやすさ」5.9%

これにより利用者の5割は機能性を重視していることが明らかとなった。また購入する際には口コミや体験談よりも、やはり表示された機能性を見て購入しているというアンケート結果も公表された。

また行政機関による安全性等の情報や有名人の体験談もほとんど重要視していないということがアンケートでは明らかになり、いわゆるイメージ効果や広大広告の有効性は疑問視されると解説した。むしろ価格が少々高くなっても機能性や有効性の表示は明確にして欲しいという声も回答には多数寄せられた。

D併用しているサプリメントの種類
「1種類」31.8%
「2〜4種類」43.4%
「5種類以上」5,5%
「利用していない」19.4%

これにより健康食品を利用している人の約5割が複数利用していることが明らかとなり、このために飲み合わせや複数摂取の弊害についても検討を進めなければならないと考えているという。

D 医薬品処方時の健康食品利用状態の確認
「確認されたことがある」22.2%
「されたことがない」77.8%

このアンケートそのものについては各消費者団体からの否定的な意見も多いという。特に健康食品に「トクホを含む」としたことで、劣悪な健康食品に対する不満が拾えないということがある。しかし多岐に亘る健康食品について、より多数の意見を得るためにはベストのアンケートであったと消費者委員会は考えているという。

消費者は健康食品に対して「効き目・有効性」を最も重視していることから、正確な情報源として「行政機関の利用」を促すべきであるし、また健康食品に対する苦情やトラブルは保健所で受け付けていることを消費者に周知徹底させることなども重要だと指摘した。

今後も関係部門から調査やヒアリングを継続し、年明け(平成25年度)には再度委員会で討議をし、消費者委員会として最終の提言を発表する予定とのことである。


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