天然の抗菌性物質リゾチーム、ナイシンの応用 〜「ifia JAPAN 2013」セミナー
2013年5月15日〜17日、東京ビッグサイトにて「第18回国際食品素材/添加物展・会議(ifia Japan2013)と第11回ヘルスフードエキスポ(HFE JAPAN2013)」が開催された。 企業セミナーより、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「おいしさを邪魔しない静菌剤の提案〜天然の抗菌性物質リゾチーム、ナイシンの応用」を紹介する。

おいしさを邪魔しない静菌剤の提案〜天然の抗菌性物質リゾチーム、ナイシンの応用
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社

リゾチームやナイシン、微量で静菌効果

食品の製造時や保存中においける腐敗、劣化の原因となる細菌の発生や増殖抑制のために、これまでさまざまな保存料、抗菌剤、静菌剤が開発され提案されている。

とくに、静菌剤は食品の安全や安定した保存を確保するため不可欠だが、完全に無味無臭なものがなく、食品に多少の影響を与えてしまうことが弱点とされてきた。

現在も完全に無味無臭な静菌剤は存在しない。しかし、臭いや味が極力弱く、ごく微量で高い静菌効果を示す素材であれば、食品に与える影響がごく僅かで、食品の美味しさを損なわないのではと、各企業で研究開発が進められてきた。そうした中、微量で静菌効果を示す素材としてリゾチームとナイシンが注目されているという。

リゾチームは卵白から抽出したタンパク質酵素で、微生物の細胞壁を切断する働きがある。これにより微生物の活動を抑制し、微量でも高い静菌作用を発揮するという。もちろん食品の風味にほとんど影響を与えないという利点もある。またグリシンやエタノール、ポリリンといった物質との相性も高く、それらと一緒に添加することで高い相乗効果を発揮するという。

あらゆる食品素材に対して親和性が高い

リゾチームは人の母乳や涙といった体液などにも含まれているため、安全性には優れている。さらに卵白由来のリゾチームはかすかに甘味があるが白色・無臭であるため、食品の見た目に影響を与えることもない。

あらゆる食品素材に対して親和性が高く、水分散性も良いため少量の使用で高い静菌効果を発揮するのも利点。食品の添加物表示には「酵素(卵由来)」「卵白リゾチーム」と記入できるため、消費者からの印象も良いという。

ナイシン、海外50カ国以上で加工食品に使用

ナイシンは乳酸菌由来のポリペプチドで、乳酸菌を含む食品は貯蔵性に優れたものが多い。これは乳酸が腐敗細菌や病原細菌の増殖を抑制する働きを持つためで、キムチやぬか漬け、ヨーグルトのように乳酸菌で醗酵させた食品は安全に保存できるものが多いという。

ナイシンはとくにバチルス属やクロストリジウム属の細菌芽胞に対して効果的に作用する抗菌物質として知られ、海外50カ国以上で加工食品に使用されている。ナイシンもまた極微量の添加で高い静菌効果を発揮するため、食品の風味にもほとんど影響を与えることがない。

日本では2009年に保存料として添加物指定されたばかりで、現在も国の使用基準により使用可能な食品がチーズや洋菓子、ドレッシングなどに限られている。リゾチーム同様であるが、ナイシンも使用するタイミングや他の静菌剤と併用することでより高い効果を発揮することも明らかになっているという。

医薬品など、幅広い使用が期待

リゾチームもナイシンも食経験の豊富な食品由来の添加物で、安全性は極めて高いとWHOや日本の厚生労働省も認めている。しかし、取扱い業者は静菌性だけでなく耐性菌出現などについて常に情報を集め、安全性や有効性の点で問題となる新たな知見があれば速やかに報告しなければならないとされている。

もちろん使用基準の遵守や適切な製造工程管理を行い、使用量についても超えてはならない。しかし、食経験の豊富な安全性の高い食品由来、ごく微量で効果を発揮、また他の食品の風味をほとんど損なわないという利点から、今後は医薬品など、幅広い使用や応用が期待されるとした。


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