健康食品の安全性確保に関する課題と提案
〜第31回社福協健康食品フォーラム

2014年6月23日(月)、第31回社福協健康食品フォーラム「健康食品の安全性確保に関する課題と提案」が瀬尾ホールにて開催された。この中から、米谷 民雄氏(国立医薬品食品衛生研究所名誉所員)の「錠剤・カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検フローチャートの作成について」を取り上げる。


平成15年、食品衛生法の大改正

いわゆる健康食品の安全性確保については、平成15年の食品衛生法の大改正における第4条の2(現第7条)に盛り込まれている。

そこには次のように記されている。「厚生労働大臣は、一般に食品として飲食に供されている物であって当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されるものについては、人の健康を損なうおそれがない旨の確証がなく、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その物を食品として販売することを禁止することができる」。

背景に、アマメシバ事件

この背景には、当時健康被害が指摘されていたアマメシバを含む加工食品についての問題があったと米谷氏は解説。この事件は、平成15年に起きたものでアマメシバの粉末加工品を130日摂取した消費者が閉塞性細気管支炎になった。

アマメシバは東南アジアの亜熱帯雨林地方に生える低木で、現地では加熱して葉や茎を摂食しているが、事故は報告されていない。ただ、台湾では生ジュースとして飲み健康被害が出たケースも報告されている。

原材料の安全性を確保するガイドライン

この事件以後、厚労省が食品安全委員会に評価調査を依頼、閉塞性細気管支炎との因果関係は否定できないと結論づけた。しかし、この原因については、粉末化が問題なのか、沖縄産で植物が亜種になっていた可能性がないか、など未だ不明点が多い。

事件後、わずか2週間足らずでアマメシバの販売が禁止された。さらに翌年、この事件を受け、「錠剤・カプセル状等の形態の食品については、過剰摂取による健康被害の恐れがあることから、原材料についてどのくらい安全性を確保すべきかをガイドラインとして示すべきである」との提言が厚生労働省によってなされた。

そこで平成16年9月には米谷氏を座長に「錠剤・カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検手法の検討」を行う検討会が開始。平成17年2月には厚労省から「錠剤・カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」が通知された。

抽出・濃縮された成分の過剰摂取による健康被害

そのなかで「自主点検フローチャート」が示された。このフローチャートは錠剤やカプセル状食品の原材料の安全性の点検を目的に作成されている。

食品の安全性とは、基本的に食経験に基づいて判断されるが、元の基原植物等に食経験があったとしても、錠剤やカプセルとして加工される場合には、アマメシバの時のように使用部位や加工方法が食する場合と異なることがある。

機能性表示解禁に向けての活用が望ましい

その場合、抽出・濃縮された成分等の過剰摂取による健康被害のリスクが考えられると米谷氏は指摘。また部位が通常の食する場合と異なる場合は「食医」の区分が異なる場合もある。例えば「センナ」は、「果実」部分は「医」になるが「葉」は「非医」となる。

このフローチャートのステップは8項目から成る。また最終製品レベルですべての原材料をこのフローチャートによってチェックするように考案されている。

対象となる原材料が既存食品と同等で、食経験も十分にあり、文献調査等による安全性確認が不要な場合は、最終のステップ8まで一気に飛ぶこともあるが、基本的には以下のステップを踏むという。

【ステップ1】すべての原材料が何であるかを明確にする。

【ステップ2】すべての原材料が医薬品として使用される原材料でないことを確認する。

【ステップ3】基原材料の基原、使用部位、及び原材料の製造方法等について保証する方法が明確であること。そして一定の品質が常に保証されていること。

【ステップ4】原材料が既存食品と同等と考えられること。

【ステップ5】ステップ4でNOであった場合は、基原材料の安全性情報に関する文献調査を行い、有害性を示す報告がなければステップ6に進めるが、有害性を示す報告があれば、ここで終了となり安全性が確保できないということになる。

【ステップ6】に進んだ後は、基原材料に含まれる成分において、有害性が知られるアルカロイド、トキシン、ホルモン、神経系作用物質、発がん性物質、奇形性物質、遺伝毒性物質、その他がないかを調査。

【ステップ7】基原材料あるいは原材料を用いた安全性試験を実施。in vitroを最初に行い、この結果のみで影響が判断できない場合には長期毒性試験やin vivo遺伝毒性試験等を実施し評価する。

【ステップ8】すべての原材料の配合割合を明確にし、製品の衛生管理を徹底すると共に、安全性情報の収集を継続して行うこと。そしてこのフローチャートに従って一定の安全性点検がなされていると認める。

もちろんこのフローチャートだけで十分ということではない。当該食品の安全性が確実に担保されるということではない。重金属などの不純物の分析や、微生物の試験、自主的なGMP等に従った製造工程管理を行うことは望ましいと米谷氏はいう。

また、機能性表示解禁に向けてこのフローチャートが健康食品の事業者等において活用されることが望ましいとした。


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