新たな機能性表示食品制度について、概要と現状 〜平成27年度薬健研シンポジウム

2015年6月2日、主婦会館プラザエフ(東京都千代田区)で、薬健研シンポジウム「平成27年度定時総会」が開催された。この中から、河原 有三氏(健康食品産業協議会 副会長)の講演「新たな機能性表示食品制度について、概要と現状」を取り上げる。


事業者側から「ハードルが高い」という声も

機能性表示制度がスタートし、報道では既に180商品以上の届出が出ているという。しかし、現状は26商品しか認証されておらず、ずいぶん時間がかかっている印象があると河原氏。

最終製品で臨床試験を行っているものはさほど問題はないが、システマティックレビューを使用した届出のほうがどうも難しい模様だ。

事業者側からは「届出資料が非常に書きにくい」「ハードルが高い」「複雑」という声が、消費者庁側からは「提出資料に非常にばらつきが多く通せない」という声が挙がっているという。

表現が曖昧だと戻されるケースも

システマティックレビューを用いる場合、採用する論文を丸々コピーすることは知的財産権にひっかかる。そのため、論文掲載誌とのやりとりに時間がかかるケースもある。

また、これまでの薬事法に慣れ、表現を曖昧にしてしまうことで逆に戻されるケースもある。いずれにせよ、制度に慣れるまで事業者も消費者庁ももう少し時間がかかりそうだと河原氏。

消費者団体や報道機関等から懸念事項が指摘

機能性表示食品届出に関する手順は以下の6ステップとなっている。

1. 対象食品かどうかの判断
2. 安全性の根拠
3. 生産・製造及び品質の管理
4. 健康被害の情報収集体制
5. 機能性の根拠
6. 表示の内容

現状は26商品しか公開されていないが、すでにこれらの商品について消費者団体や報道機関等から懸念事項が挙がっている。

消費者団体からは、主に「2、安全性の根拠」と「5、機能性の根拠」について。例えば「2、安全性の根拠」についてはこれまでの「食経験」で担保することが可能とされているが、それを「販売実績」でカバーするのは無理があるという指摘が最も多い。

また、「長期の摂食がある」からといって「慢性毒性は起こらない」とは言いきれない、という指摘もある。とくに原料の製法、関与成分の含有量により長期の安全性や機能性が異なることが指摘されているという。

さらにサプリメント形状の食品に関しては「過剰摂取」の恐れを指摘する消費者団体も少なくないという。

「機能性」については、一括りで言うと「根拠が脆弱」で、「被験者数が小規模なものがある」「測定項目ごとにN数がバラバラ」「病者データの採用が見られる」「都合のいいデータのみ採用している」「システマティックレビューの文献が網羅されていない」といったものが多い。

いずれも各企業が個別対応するのではなく、団体として対応することにより、この制度を真に国民の健康に役立てるものに育てていくことが望ましい、と河原氏。

正確かつ具体的な表現が求められる

また、消費者庁側がスムーズに進められない理由として、届出用紙の作成にあたり「記入漏れがある」「添付資料が不足している」「表示があいまいで、それを摂取するとどうなるのか、表示が対応していない」といった、届出用紙に関する問題があるという。

さらに表示について、これまでのような曖昧な表現では通すことができないということもある。

例えば「血糖値やBMIを調整する→高めを調整するのか、低めを調整するのかが曖昧」「抗酸化作用→健康に抗酸化がどのように良いのか不明」といったこと。こうしたことをより正確に、具体的に踏み込んで記入して欲しいという。

「予防」「治療」などの医学的表現は不可

一方で、「診断」「予防」「治療」「処置」といった医学的表現は不可。また、「糖尿病の人に」「高血圧の人に」といった疾病の表現は認められていない。そのため、表現の工夫が必要となる。

まだスタートしたばかりで事業者も消費者庁も手探りだが、健康食品産業協会としては、この制度をより良いものにしていくため、今月協議会内に専門部会を設置したという。

専門部会は

@安全性とGMPについて
A機能性成分の規定について
B機能性の評価について
C表示と広告について

の4部門に分かれ、機能性表示の届出資料作成のサポートや販売後の消費者サポートなど行っていく予定という。


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