機能性表示制度スタートに伴う薬局・薬店の生き残り方〜コ・メディカル産業展2015

2015年9月10日(木)、11日(金)東京都立産業貿易センター浜松町館で、「コ・メディカル2015」が開催された。同展示会のセミナーより、中澤 忠之氏(薬事法ドットコム シニアコンサルタント)の「機能性表示制度スタートに伴う薬局・薬店の生き残り方」を取り上げる。 


販売戦略を考えなければ売れない

この4月より機能性表示制度がスタートした。これにより、以前よりもわかりやすく食品の機能性について訴求できるようになった。しかし、機能性が表示できるようになったからといって商品が即売れるようになるわけではない、と中澤氏。

あくまで表示に関する制度にすぎず、健康食品を「どう売ればいいのか」に踏み込んでいるわけではない。リーガルとマーケティングを両方同時に見据えながら、商品設計、パッケージデザイン、販売戦略を考えなければ健康食品は売れない。

今回の新制度は企業にとっては壁になるかもしれないが、うまく活かせば武器にもなる、と解説。

「機能性表示」制度で、米国の健食市場は5倍に

現在、日本の健康食品市場は1兆円超である。今回の制度のモデルとなったアメリカの健食市場は、20年前は現在の日本と同様1兆円規模であった。 しかし、「機能性表示」制度がスタートし、アメリカの健食市場は5兆円超となり、わずか20年でおよそ5倍に拡大した。

つまりこの制度を有効に活用すれば、日本の健食市場も同様に拡大の可能性を秘めている、と中澤氏。

日本の健食市場がこれまで伸び悩んできた最大の理由は「表示の問題=法の壁」であった。商品をうまくPRできない。商品のストーリーが打ち出せない。

そうなると健食のマーケットは店販ではなく通販へと傾いた。通販であれば「安全性、品質、天然」といったワードを商品ストーリーとして訴求できた、と中澤氏は指摘。

今や米国では通販と店販が逆転

現在、日本の健食市場は通販が70%、店販が30%の割合になっている。実は20年前の米国も同じような状況であった。しかし、今や通販が20〜30%、店頭販売が70%に逆転しているという。

日本で、こうした逆転は期待できないかもしれないが、機能性表示制度を十分に活かした棚づくり、見せ方を行えばまだまだ店頭での市場拡大の可能性は十分にあると、中澤氏。

機能性が表示できる食品制度の先駆けはトクホ制度だが、1991年にスタートしすでに25年が経過している。最初の5年間は周知されることがなかったが、この20年で徐々に商品数を増やし、現時点で1100商品程度が認可されている。

機能性表示食品、すでに800近い商品が消費者庁に申請

現在、機能性表示食品はすでに800近い商品が消費者庁に申請されている。マンパワー不足で、現在80強の商品しか許可されていないが、あっという間にトクホの25年の歴史を塗り替える商品数になることが予測される、と中澤氏。

トクホは、わずか10程度のヘルスクレーム(健康強調表示)しか認めなていない。そのため、マーケット全体を底上げするほどの力になり得なかった。

機能性表示制度の広告で留意すべきこと

では、通販ではなく薬局やドラックストアが店舗販売で機能性表示制度を最大限に活用するにはどうすればいいのか。そもそも機能性表示制度はパッケージに限定されたルールであり、店販や通販は対象外の制度であることを理解すべきだという。

さらに店販でも通販でも、機能性表示制度の広告で留意すべきことは、「届け出た表示内用に範囲を超える表示をしない」、「疾病の診断・治療・予防を目的としたものではない」の2点である。

「血圧が高め」はOKだが「高血圧の人」はNG、というのが2点目のポイントである。この2つの注意点を丁寧にチェックしながら販促戦略を練れば、機能性表示食品の市場拡大に大きな期待が持てる、と中澤氏は解説。

商品をわかりやすくカテゴライズして誘導

この制度において、確かに機能性は表示できるが、それでもまだまだわかりにくい。例えば「本商品にはラクトフェリンが含まれるので、内臓脂肪を減らすのを助け、高めのBMIの改善に役立つ」という表示。

パッケージへの表示はここまでが限界だが、店頭では【ダイエット】【ダイエットサポート】の言葉を使ったとしても、注意点の2つをクリアしている。ダイエットは疾病名でも予防でもないため、表示内用範囲を超えていない。

また「コラーゲンペプチドが含まれるので、膝関節の曲げ伸ばしを助ける機能があります」という表示。これは、【ロコモティブ】【健康寿命】などの言葉で店頭訴求すればもっと消費者が手にしやすくなる。

店頭で商品をわかりやすくカテゴライズし消費者をうまく誘導すれば、米国のような成功事例につながるのではないか。機能性表示が解禁になり、せっかく健康食品が効能を訴求できるようになったのだから、それを店舗が後押しする必要がある、と中澤氏。

棚割りについても工夫を

また棚割りについて、例えば【便秘】のコーナー。上段に医薬品・中断に機能性表示食品・下段に便秘解消グッズなどを陳列してみてはどうか。

消費者は「医薬品」の長期使用を好まない。そのため、即時解決したい時は上段から商品を選ぶが、デイリーケアや予防の観点からは中段、下段から商品を選ぶ。

つまり、長期的に【便秘】に関する商品を買い続けることや、まとめ買い、セット買いの可能性も増やすことになる。

このように新制度を軸に店舗や販売担当社はいろいろ試みるべきであり、これがこの新制度の価値を左右する、とまとめた。


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