食の安全性から次世代の機能性食品まで、
21世紀の食のあり方を展望

4月14日(水)、独立行政法人 食品総合研究所 (つくば市)で平成16年度一般公開講演会が開催された。当日、「食品の機能と安全・安心」をテーマに、「食品のリスクとは」、「食品と食中毒菌」、「遺伝子組換え食品を判別するには」、「機能性食品とその未来」などの講演が行われた。また、パネルや実物展示で、食品の機能性測定、貯蔵食品の害虫、遺伝子組換え体の検知技術、穀類の成分評価、納豆菌のネバネバ物質、など最新の研究成果が紹介された。

国民の9割以上が食品の安全・安心に関心

冒頭、食総研の春美隆文理事長が挨拶に立ち、「食品に対する関心はきわめて高いものがある。昨年行われたある調査で首都圏の主婦30代から50代にアンケートしたところ、9割以上が食品の安全・安心に関心があると答えている」と述べた。引き続き講演で、高齢化社会の到来により、高齢者に適した食品の研究・開発が必要であると指摘。また、「がん、心臓病、脳卒中で国民の約6割が死亡している。非常に食品と関係が深いことが分かっている」と述べ、病気予防のための食品の機能性への期待についても触れた。

食総研は昭和9年に米穀利用研究所として設立、昭和47年に食品総合研究所と名称を変更し、平成13年には独立行政法人となる。食品研究の専門機関として、食品成分の機能性評価や分析技術の高度化など、食と健康の科学的解析や食料の安全性確保、革新的な流通・加工技術などに関わる幅広い研究を進めてきた。「現在、日本で廃棄される食材は約2000トン以上。食総研では、できるだけ廃棄物を出さないで有効利用していく研究も進めている」という。

次いで、「食品のリスクとは?」と題した講演では、流通安全部長の永田忠博氏が、「我々はリスクから逃げられない。付き合っていくことしかできない」とし、がんを例に、「一般の人の多くが、食品添加物や農薬を癌リスクに挙げるが、専門家は、食品の重金属やカビ毒、有害微生物、タバコを挙げている」と述べ、正確なリスク分析の必要性を説いた。また、「現在の最先端の科学技術をもってしても、完全に食品の安全性を証明することはできない」が、リスク分析と同様に科学的知識を身につける努力が必要であると述べた。

また、食品衛生対策チーム長の川本伸一氏は、「食品と食中毒菌」と題した講演で、「平成10年以降、ウィルス性の食中毒が年々増えている。平成14年度には、患者数で1位になっている。食中毒菌の多くは、畜肉由来の物が多い」と食中毒の感染状況を報告。対策として、「汚染の可能性のある物については、生食を避ける。肉料理の器具は十分殺菌洗浄する。食品の中心部まで75度で10分以上加熱すると、大腸菌O-157などは死滅する」と述べた。

遺伝子解析により個々人に合わせた機能性食品の誕生も

「遺伝子組み換え食品を判別するには?」と題した講演では、GMO検知解析チーム長の日野明寛氏が、「組み換え食品のような多成分のものは、影響についての正しい評価が極めて難しいが、今食べられている食品と同等と考えて問題ない」と述べた。遺伝子組み換え作物は現在、全世界で6,770万ヘクタール作付けされ、日本の耕地面積の15、6倍に当たるという。昨年アメリカでは、大豆の8割を遺伝子組み換えが占めたという。

また、遺伝子組み換えに関して、メディアがネガティブ報道に偏り、安全な情報を流さないことを指摘。「あと20年後に、食料の入手が困難になることが指摘されている。そうした時のために、新しい技術による食料生産も一つの選択肢として考えることが重要」と述べた。

「機能性食品とその未来は?」と題した講演では、食品機能部長の津志田藤二郎氏が、今後ヒトゲノム解析が食品開発に大きな影響を及ぼすようになると指摘。「人の遺伝子が解明され、それにあわせた食品、テーラーメイド食品、オーダーメイド食品といったものが出てくる。例えば日本人は欧米人の2、3倍糖尿病になりやすい遺伝子を持っているということがわかっている。高血圧にしても遺伝子を調べると欧米人に比べてなりやすく、かつ食塩の感受性が高い。遺伝子の状態を見ながらそれにあわせた食品が機能性食品として今後開発されてくるのではないか」と述べた。


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