ノコギリヤシエキス、シルバー世代の対応素材でニーズ〜ifiaJAPAN2016セミナー

2016年5月18日〜20日(金)、東京ビッグサイトで、「第21回国際食品素材/添加物展・会議&第14回ヘルスフードエキスポ」が開催された。同展示会セミナーより、サンブライト鰍フ「ノコギリヤシ果実エキス」を取り上げる。


古来より強壮など民間療法で使用

ノコギリヤシはヤシ科のハーブの一種でノコギリ状の葉を持つことからノコギリヤシと呼ばれる。夏に花を咲かせ、秋の終わりから冬にかけてオリーブ型の赤い実をつける。

ノコギリヤシは北アメリカ大陸の固有種で、特に果実の部分に優れた機能性が認められている。古来よりアメリカの先住民たちが男性の強壮の食品や民間療法薬として使用してきた。

ノコギリヤシの実には油分が多く含まれるため、食用油やランプの燃料としても使用されていた。19世紀に北米に上陸したヨーロッパの人々によって、このノコギリヤシの不思議なパワーが研究されるようになった。

60代男性の50%が前立腺肥大

ノコギリヤシは、現在では「育毛効果」や「前立腺肥大の抑制作用」が認められ、特にヨーロッパでは泌尿器科の専門家から高く評価されている。近年は日本でも健康食品の成分として知られるようになってきている。

前立腺は精液の一部を作る役割を担う、男性だけが持つ臓器であり、膀胱の下に尿道を挟む形で存在している。

この前立腺は加齢とともに肥大する傾向にあり、その肥大によって膀胱や尿道が圧迫されて頻尿になる、排尿に異常を感じるといったトラブルが生じるのが前立腺肥大症である。

基本的には良性の疾患であるが日常生活の質が低下するケースもある。現在、60代男性の50%が前立腺肥大に悩んでいるとされる。

悪性ホルモンが男性型脱毛も誘発

前立腺が加齢によってなぜ肥大するのか、その原因についてはっきりしたことはわかっていないが、原因の一つに男性ホルモンの「ジヒドロテストステロン」があると考えられている。

男性ホルモンとして有名なテストステロンが、人間が元々持っている酵素の一つ「5αリダクターゼ」と結合することで悪性ホルモンの「ジヒドロテストステロン」に変換され、この「ジヒドロテストステロン」が前立腺細胞の増殖に働きかける。

さらにこの「ジヒドロテストステロン」は頭皮の毛乳頭と結合することで抜け毛をも促進させる。つまり男性型脱毛の誘発である。「ジヒドロテストステロン」を減らすためには「5αリダクターゼ」を減らす必要があるが、この「5αリダクターゼ」を阻害するのがノコギリヤシエキスである。

またノコギリヤシエキスは「抑制」だけでなくテストステロンとの結合阻止にも働きかけることが解明されている。

人気の秘訣は体感性の高さ

ノコギリヤシエキスに含まれる「βシトステロール」という成分が有効性分と考えられているが、ノコギリヤシエキスを分離しないでそのまま摂取することが効果的ともいわれており、まだ解明されていない部分も多い。

いずれにせよノコギリヤシエキスの前立腺肥大への臨床試験は世界中で行われている。例えばドイツでは2,000名の前立腺肥大患者に有効と呼ばれる摂取目安量320mg(日)を3〜6ヶ月摂取させたところ、症状の改善や使用に対する満足度は90%を超えたと報告されている。

ノコギリヤシエキスの人気の秘訣の一つは体感性の高さで、だいたい3ヶ月程度使用するとその作用が体感できるという。

フランスでも同様の試験が行われ、医薬品(フィナステリド)投与グループとノコギリヤシエキスグループに分け、ノコギリヤシエキスグループには同じく320mg(日)を摂取してもらったところ、医薬品と変わらない有用な効果が報告されただけでなく、副作用が認められないことも同時に確認できたという。

ヨーロッパでは医薬品に認定

ノコギリヤシエキスは、天候によって収穫が左右されやすいため、供給が不安定であることや、果実の色がぶれやすいといった問題がある。しかし市場規模は世界で拡大しており、日本だけでも100億円を突破しているという。

今後シルバー世代が増えることでますますノコギリヤシエキスに注目が集まるものと考えられる。すでにイギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スウェーデン、ベルギー、ハンガリーでは医薬品になっている。アメリカや韓国ではヘルスクレームを取得している。

前立腺肥大抑制を謳う製品で、同症状に効果があるとされるリコピンやカボチャ種子エキスと組み合わせることで相乗効果が期待できる。

また、男性型脱毛対策を謳う製品で、イソフラボンや亜鉛と組み合わせることで相乗効果が期待できそうだ。 ノコギリヤシエキスを使用した製品開発は今後ますますニーズが高まるものと推測される。


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