減塩など、糖アルコールの広がる可能性
〜ifiaJAPAN2016セミナー


2016年5月18日〜20日(金)、東京ビッグサイトで、ifia JAPAN2016「第21回国際食品素材/添加物展・会議&第14回ヘルスフードエキスポ」が開催された。同展示会セミナーより、物産フードサイエンス鰍フ糖アルコールの広がる可能性について取り上げる。


「糖アルコール」と「糖」はまったく別物

炭水化物は「糖」と「食物繊維」から成る。この「糖」は「糖類(単糖類または二糖類)」「その多糖類(三糖類以上)」「糖アルコール」の3つに分類される。

その中でも「糖アルコール」はさまざまな種類がありソルビトールやエリスリトール、また有名なところではキシリトールなどがある。「糖アルコール」は「糖」とはまったく違うものであり、体内での代謝経路も大きく異なる。

糖アルコールにはいろいろな種類があり、それぞれの糖アルコールに異なる機能性が期待されるが、「糖アルコール」としては3つの優れた共通する特徴がある。

食品だけでなく、医薬品や工業製品にまで幅広く利用

1つ目が「酸、熱、アルカリに強い」こと。安定性に優れているため、食品の焦げ防止やキレイな焼き色に仕上げるために使用されることが多い。

2つ目が「微生物の栄養源になりにくい」こと。菌が繁殖しにくいため、品質保持にも使用される他、キシリトールに限らず糖アルコール全般が虫歯を予防する作用を持つ。

3つ目が「消化吸収されにくく砂糖に比べ低カロリー」であること。そのため血糖値やインシュリンのレベルにも影響を及ぼさず、健康食品やダイエット食品、糖尿病患者向けの食品にも利用されやすい。

これらの優れた特徴があるため、現在糖アルコールは食品だけでなく、医薬品や工業製品にまで幅広く利用され、糖アルコールの用途開発は日本が世界一と言われるまでに成長している。

糖アルコールを「減塩」に活用

こうした中、糖アルコールの新用途として「減塩」があるという。日本人は他国に比べ塩分を過剰摂取する傾向にあり、食品において高血圧対策が求められている。

そこで、塩分の過剰摂取を少しでも低下させるために、新しい減塩食品が開発できないか、それに糖アルコールを活用できないか、というところから研究がはじまったという。

塩と砂糖の関係でよく知られているものに「スイカに塩をかけるとより甘くなる」というものがある。これは、異なる種類の味が同時に存在することによって引き起こされる「味の対比効果」というものである。

糖アルコールに苦味のマスキング効果

そもそも味は基本五味(甘味、苦味、塩味、旨味、酸味)のバランスによって形成されている。そのなかでも甘味に塩味を加えると甘味がより引き出されるのが「スイカに塩」の例である。

これを逆手に取り、食塩に糖アルコールを添加したところ、食塩単体を摂取するよりも糖アルコールを添加した食塩のほうが、塩味が増強するという試験結果が得られたという。

また減塩のために食塩の代用品としてよく利用される「塩化カリウム」にも糖アルコールを添加すると、塩味が増強するだけでなく塩化カリウム独特の苦みを低減させるマスキング作用がみられ、糖アルコールには苦味のマスキング効果があることが解明されたという。

25%の減塩に成功

糖アルコールは砂糖と比べて甘味がシャープである。口の中に入れた瞬間、砂糖はゆっくり甘味が広がり、口の中で持続する時間が長く、緩やかに甘味は消えていく。

これに対し、糖アルコールは入れた瞬間に甘味が口の中で立ち上がり、甘味の持続性が短くさっと甘味が消えていく。

つまり砂糖の甘味はまろやか、糖アルコールはシャープと表現することができる。これが減塩に役立つ。塩味が口の中でぐっと立ち上がる前にそれを超えない程度に糖アルコールの甘味が立ち上がり、口の中で塩味が消えていく前に糖アルコールの甘味がすっとシャープに消えていく。

そのため、甘味を感じさせることなく塩味だけが増強したと感じる。実際、この作用を利用して、フライドポテトや浅漬けを作ったところ、25%もの減塩に成功したという。

さまざまな付加価値をつけた新たな減塩食品を開発

糖アルコール以外の減塩に役立つ競合製品と比較しても糖アルコールは実に優れているという。例えば酵母やアミノ酸は旨味成分を含むため使用範囲が限定される。

また食品の色を変えてしまうこともデメリットになりやすい。食塩の代用品としてよく知られる塩化カリウムは、苦味が強いためマスキング処理が必須となる。

しかし糖アルコールは独自のシャープな甘味の性質により塩味を増強させるだけで、食品の味を一切変えないため汎用性が広い。

しかも糖アルコールが本来持っている「低カロリー、高い安定性、虫歯のなりにくさ、血糖値やインスリンに影響しない」といった、さまざまな付加価値をつけて新たな減塩食品を開発できるというメリットもある。

「減塩」は一般家庭においても食品メーカーにおいても重要な課題の一つだが、そこに糖アルコールという選択肢が加わることで幅広く役立てば、とまとめた。


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