健康食品の安全性確保に関する取り組み
〜第二回健康食品の安全性に関するセミナー


2016年7月27日(水)、新宿区牛込箪笥区民ホールで、「第2回健康食品の安全性に関するセミナー(健康食品の安全性確保に関する取り組みと情報収集事例)」が開催された。この中から、日比野 康英氏(城西大学 薬学部教授)の講演「健康食品の安全性について〜医薬品との相互作用をふまえて」を取り上げる。


「食品&医薬品相互作用データベース」を構築

昨年4月よりスタートした機能性表示食品制度により、新たな健食市場が順調に売上を伸ばしている。しかしながら、健康食品に含まれる機能性成分と医薬品の相互作用について、消費者が十分理解しているとはいい難い。

城西大学では「食品&医薬品相互作用データベース」を構築、これにはインターネットで誰でもアクセスできるようになっている。

データベースは当初、医師や専門家が閲覧することを目的に作成した。しかし、ここ数年は一般消費者からのアクセス数も増えたため、より使いやすいものにバージョンアップした。

消費者が健康食品と医薬品にどのような相互作用があるかをきちんと理解したうえで、健康食品を上手に利用できるよう役立てて欲しいと考えているという。

機能性表示食品と薬品の相互作用

とくに機能性表示食品においては安全性の担保のため、医薬品との相互作用の有無について企業が評価した上で、商品に明記する義務がある。

しかし消費者庁は消費者に対し、「パッケージに表示してある注意喚起をよく確認して、摂取するようにしましょう。パッケージには一日当たりの摂取目安量、摂取の方法、摂取する上での注意事項が表示されていますので、よく読みましょう」と喚起しているだけで、医薬品との相互作用に注意しましょうと具体的に指導をしているわけではない。

そのため、機能性表示食品と薬品に相互作用があると想像し、機能性表示食品を利用する人はほとんどいない。もちろんこれはすべての健康食品についてもいえる。

薬で起こる相互作用と同レベルで考える必要がある

消費者はこうした医薬品との相互作用情報をどこで入手すれば良いのか。そもそも食品と医薬品で起こる相互作用を考えることは容易ではない。

しかし食品と医薬品の相互作用について、「薬×薬相互作用(薬と薬で起こる相互作用)」と同じレベルで考える必要があろう。

ちなみに薬品の場合は体内に取り込まれた後(消化管、粘膜、筋肉、直腸などから)、「吸収」「分布」「代謝」「排泄」という4つの過程のなかで、体内でおこるさまざまな変化や影響を受けながら、摂取した薬品がどのように変化するかを鑑みながら相互作用について綿密に分析研究されている。

医薬品の吸収過程における相互作用

食品と医薬品の相互作用については細かく分類され研究されている。例えば、医薬品の吸収過程における相互作用。抗菌剤の「シプロフロキサシン(抗菌剤)」はミルクや乳製品に含まれるCa2+の影響を受け、吸収が低下し薬効も減弱する。

「フルフェナジン(抗精神病薬)」は紅茶やコーヒーに含まれるタンニンの影響を受けると薬効が減弱する。この他、繊維質によって生体利用率が低下し薬効が減弱する薬品は多い。

骨粗鬆症治療薬のエチドロン酸二ナトリウムは空腹時と食後を比較すると、空腹時のほうが圧倒的に吸収率が高く効果が期待できる。

他にも低タンパク食、低タンパク栄養不良状態の人は遊離型薬物の増加による薬効増強が見られたり、高脂肪食による遊離脂肪酸の増加でおなじく薬効の増強が見られるといった例がある。

アルコールで摂取すると作用が増強

つまり同時に摂取した食品、少し前に摂取した食品、日常の食生活で変化する血液の状態によっても薬効が高まったり弱まったりすることは当たり前に起こっていることなのだ。

一般的によく知られているのがグレープフルーツジュースとカルシウム拮抗薬(血圧を下げる薬物の一つ)の相互作用、ワルファリン(抗凝固剤)とビタミンK高含有食品(納豆)トの相互作用、甘草と降圧薬の相互作用、甘草と強心薬の相互作用である。これら処方の際には必ず服薬指導を受ける。

もっと身近なものではアルコールで薬品を飲む際に生じる相互作用の危険性にも注意しなければならない。特に睡眠薬、鎮静薬、抗うつ薬、抗不安薬、などはアルコールで摂取すると作用が増強するため危険だ。

相互作用については医師からのニーズも高い

機能性表示食品を含む健康食品も、薬品レベルで相互作用を考える必要性が求められはじめている。

というのも、消費者は新たな制度で運用されるようになった商品を利用し、いままで以上に「セルフメディケーション」に努めたいと考えるためだ。 やはり機能が表示されている以上期待も大きい。

そのため、事業者はこの制度を正しく理解し消費者の誤解を招かないよう表示や商品開発を行う必要がある。

大学としても「相互作用」については「一般消費者」に理解できるレベルでデータベースを構築することや情報提供する取り組みを積極的に行いたいと考えているという。

また、相互作用については消費者だけでなく医師からのニーズも高いという。現在のデータベースも誰でもアクセスできるようになっている。

例えば「グレープフルーツジュース」と入れるだけで97もの医薬品との相互作用についてレポートを閲覧することができるようになっている。

しかし、これはあくまで医療関係者向けのため、一般の人が見て簡単に理解できるものにはなっていない。使いやすい食品&医薬品のデータベースの構築を、一日もはやく実現させたい、とした。


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