ウィルス性食中毒、食品添加物など
食品の安全に関する研究成果を披露


2005年1月25日(火)、ヤクルトホール(東京都港区)でシンポジウム「平成16年度厚生労働省科学研究--食の安全と科学--」(主催(社)日本食品衛生協会)が開催された。当日、寺田雅昭氏(内閣府食品安全委員会委員長)による基調講演「食の安全とリスク分析」の他、武田直和氏(国立感染症研究所 ウイルス第二部室長)らによる一般講演が行われた。

鳥インフルエンザ、正確な情報の積極的な提供で不安を鎮静化

今回のシンポジウムは日本食品衛生協会が、厚労省が行っている、ウィルス性食中毒や貝毒やカビ毒、人畜共通感染症、食品添加物の安全性確認方法等、食品の安全に関する科学研究の成果を一般公開するために行われたもの。平成11年より毎年開催され、今回で6回目となる。

基調講演「食の安全とリスク分析」では、内閣府食品安全委員会委員長の寺田雅昭氏が、「食品は、本来、安全なものと考えられていたが、近年、食品の安全性 に対する安心・信頼感が揺らいできた」とし、BSE(牛海綿状脳症)や輸入野菜の残留農薬の問題、さらに食のグローバル化の拡大や遺伝子組換えなどの新たな技術の登場で食を取り巻く状況が一変したことを挙げ、新たな食品安全行政の必要から、平成15年5月に「食品安全基本法」が制定され、同年7月に食品安全委員会の設立へと繋がった経緯を述べた。

食品安全委員会は科学的知見に基づき客観的・中立公正にリスク評価(食品健康影響評価)、リスクコミュニケーション(関係者相互間の意見・情報の交換)、緊急事態への対応を行うことを主目的としており、7名の委員と専門事項を調査審議する延べ200名程の専門委員を擁する16の専門調査会で構成されている。
これまでの、主なものでは、BSEや鳥インフルエンザ、アマメシバに関するものがあるが、BSEについては、イギリスでの状況を報告するとともに、日本においては、10月26日にプリオン専門調査会を開催し、審議を開始したことを明らかにした。

また、鳥インフルエンザについては、「食品を通じて人に感染が起きたという報告がないにも関わらず、国民が鶏卵、鶏肉に対して、いたずらに不安感を持つに至った」ことから、正しい情報の積極的な提供に努めた、とした。

小型球形ウイルス、2002年以降、「ノロウイルス」と命名

また、国立感染症研究所 ウイルス第二部室長の武田直和氏は、「ウイルス性食中毒の予防−ノロウイルスや肝炎ウイルス」と題して講演。最近話題になっている食中毒のノロウイルスについての概要を述べた。

ノロウイルスは、以前は小型球形ウイルスあるいはノーウォークウイルスと呼ばれていたもので、2002年以降、国際的に「ノロウイルス」と改められるようになった。
2003年厚生労働省の食中毒統計で病因物質別の患者数をみると、ノロウイルスがトップで38%、以下サルモネラ菌属23%、カンピロバクター13%、ぶどう球菌10%、ウエルシュ菌10%、病原大腸菌5%、腸炎ビブリオ5%、と続く。ノロウイルスによる食中毒の発生は12月から2月が多く、その特徴としては、感染力が非常に強い、感染力を長期間保持する、などがある。

また、ノロウイルスやA型肝炎ウイルス対策としては、十分な加熱処理、汚物や糞便の処理、手洗い、食品の洗浄、調理器具の消毒などで予防が可能である、とした。


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