機能性表示即品制度の運用状況と今後の動向〜第8回 慶応義塾生命科学シンポジウム

2017年12月6日(水)、慶應義塾大学にて「第8回 慶応義塾生命科学シンポジウム 食と医科学フォーラム〜食・運動・ごきげんでアンチエイジング」が開催された。この中から、久保 陽子氏(消費者庁 食品表示企画課)の講演「機能性表示即品制度の運用状況と今後の動向」を取り上げる。


特定保健用食品を凌ぐ勢い

「食品が持つ機能性」をパッケージに表示できる機能性表示食品制度が始まって3年になる。

今年11月30日までに1135件の商品が届出されており、これまで多くの企業、特に中小企業がハードルが高いという理由でトライできなかった「特定保健用食品(トクホ)」を凌ぐ勢いでこの制度が利用されているという。

商品は、サプリメントが520商品、生鮮食品が9商品、その他(主に飲料や加工食品)が606商品と、商品のバリエーションが豊富なことも、トクホと異なる特徴と久保氏。

それぞれの販売元も、東京・大阪・愛知以外の地域によるものが396商品もあり、地方の産業活性にも貢献できる制度になり始めているという。

常に課題や制度の改善が求められている

しかし制度が始まって以降、問題点が全くないわけでもなく、常に課題や制度の改善が求められているという。

こうした声に少しでも応えるべく、消費者庁では「機能性表示食品に関する・検証・調査事業」を平成27年から行っている。

平成27年度は、機能性表示食品の商品に表示された情報について「消費者が誤認することなく商品選択をできるように制度が利用されているかを検証すること」を実施。

また、「機能性表示の科学的根拠とされるレビューを消費者庁でも独自に検証し、適正に運用されているか、研究レビューの質を高める方策を打ち出すこと」を主な目的として活動したと久保氏。

平成28年度には、機能性表示食品制度における臨床試験及び安全性の評価内容の実態把握の検証調査事業を行い、機能性の根拠となる臨床試験に関する届出資料や安全性の根拠となる届出資料を深く検証し、届出資料の質を高めることを行ったという。

ランダムに「買い上げ調査」を実施

そして本年度、平成29年度には「機能性標示食品の届出後の分析、健康被害の情報収集体制に関する検証事業」を主軸にし、届出された商品がそのあとも引き続き関与成分の定量試験を行っているかなどの実態調査を行った。

また、届出された商品がその後も引きつづき一定の品質を保ち、製造生産されているかなどを調査した。

特に健康被害に関しては、健康被害があった場合の情報収集の方法や対応の評価、消費者庁への報告に関する流れを検証しているという。

これらの調査のために、基本的には平成27年度から消費者庁ではランダムに機能性表示食品の「買い上げ調査」を行っており、関与成分の含有量を分析したり、表示の妥当性を検証したりを続けることで、機能性表示食品の質の取り組みを実施している、と久保氏。

ビタミンやミネラル、今後表示可能へ

現在、大きな課題として積み残しになっているのが、栄養成分が明確でない食品の取り扱いについて。

例えば、朝鮮人参のような食品は、機能性関与成分が特定できないため、現在は表示が認められないが、従来から健康に良いとされる食材についてどう取り扱うかべきか、ということが課題となっている。

また、「栄養成分表示」の対象であるビタミンやミネラルは現在機能性表示の対象外であり、これについても今後は表示可能の方向で検討しているという。

さらに、糖質や糖類についてもこれまで制度対象外であったが、来年度はいよいよ対象とされる予定でり、制度が常にブラッシュアップされていると久保氏は強調した。

予防も表示可能にして欲しいという声も

他にも、消費者教育にも力を入れ、例えば今年は「消費者庁行政新未来創造オフィス」を徳島県庁に開設した。

消費者が「トクホ商品」や「機能性表示食品」と言った表示を適切に活用できるようにするためのパンフレット(媒体ツール)と指導要綱を作成し、これらのツールを用いて、保健機能食品の活用を推進する事業を行っていると久保氏。

この取り組みについては成果を踏まえ、来年度以降全国展開を徐々に行う予定だという。

会場から、現時点での機能性表示食品制度は、あくまで健康な人に限っており成分の持つ機能性が十分に活かせない、予防も表示可能にして欲しいとの声も上がった。

これらの課題についても消費者庁は一つずつ検討し、より良い制度にするために努力を重ねていきたいと答えた。


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