納豆に含まれるナットウキナーゼ、脳血管障害に有用〜ifia JAPAN2018セミナー

2018年5月16日(水)〜18日(金)、東京ビッグサイトにてifia JAPAN2018「第23回国際食品素材/添加物展・会議と第16回ヘルスフードエキスポ」が同時開催された。同展示会セミナーよりオルガノフードテックの「ナットウキナーゼ(納豆)の最新情報〜アルツハイマー発症は防げるか」を取り上げる。


複合的に血栓にアプローチ

米国の大学で研究中に納豆のネバネバからナットウキナーゼという酵素を発見した倉敷芸科学大学教授の須見洋行氏。1980年にナットウキナーゼが発見されてから約38年となるが市場でのニーズは未だ高く、昨年のナットウキナーゼ市場は360億円超に達しているという。

ナットウキナーゼに関する研究は現在もさまざまな研究機関によって進められているが、最新の知見としてアルツハイマー型認知症への効果に対する期待が高まっているという。

ナットウキナーゼは酵素であり、血栓の素となるたんぱく質フィブリンを分解する働きを持つ。特に血栓の主成分であるフィブリンに直接働きかけて分解する作用や、血栓溶解酵素のウロキナーゼの前駆体を活性する。

また血栓溶解酵素を作り出す組織t-PAを増やす作用などもあるため、複合的に血栓にアプローチする。

ナットウキナーゼ、アミロイドβを分解

認知症の中でも3割を占める「脳血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血が原因となり、血栓が脳の血管に詰まることがきっかけで起きる。

しかし、ナットウキナーゼを日頃から摂ることで脳血管性認知症の予防になる可能性が十分ある、と須見氏。

また認知症の大半を占めるアルツハイマー型についても、ナットウキナーゼが有望である可能性が示唆されている。

アルツハイマー型は脳の神経細胞に沈着する老人性色素斑=アミロイドβが直接の原因物質と考えられており、ナットウキナーゼがアミロイドβを分解する働きが各国の研究で報告されている。

現時点ではヒト試験のレベルではないが、今後アミロイドβの分解作用とその作用機序が明確に解明されれば、なかなか治療法が確立しないアルツハイマー型認知症の治療研究も一歩進む。

t-PA、体内でナットウキナーゼによって活性

ちなみに血栓を溶かす薬剤としては、人工的に作られたt-PAが知られる。t-PAはプラスミノゲン活性化因子と呼ばれ、体の中にもともと存在しているプラスミノゲンという血栓を溶かす物質を増強させる酵素である。

現在は脳梗塞が起こって3時間以内に注射によって投与されることが多い薬剤である。このt-PAは比較的新しい薬剤だが、もともと体内にも存在しているため、日頃から血栓予防のために体内のt-PAを増やしておく必要がある。

t-PAは、体内ではナットウキナーゼによって活性することもわかっており、日頃からナットウキナーゼの摂取を心がけておくと良いと須見氏。

D体アミノ酸、ナットウキナーゼを増殖

また最近、ナットウキナーゼとD体のアミノ酸の関係があることが分かっている。体に存在するアミノ酸のほとんどがL体で、D体のアミノ酸は自然界に存在しないとされてきたが、近年D体のアミノ酸にもいろいろな役割があるのではないか、と注目され始めている。

そしてこのD体のアミノ酸がナットウキナーゼを増殖させる作用があることが解明されてきている。

さらに、D体のアミノ酸の添加はナットウキナーゼの活性を数倍高めることも確認されており、この働きはサプリメントへの応用や、まだ完全には解明されていてないナットウキナーゼの構造の詳細解明に期待が持てると、と話した。


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