景表法・薬機法・特商法における広告規制の最新情報〜第17回ダイエット&ビューティーフェア

2018年9月10日〜12日まで東京ビッグサイトにて、「第17回ダイエット&ビューティーフェア」が開催された。この中から、弁護士の成 眞海氏(丸の内ソレイユ事務所) の講演「景表法・薬機法・特商法における広告規制の最新情報と事例紹介」を取り上げる。


薬機法と景表法は押さえておくべき

食品や美容関係の事業者が広告宣伝を行うにあたり、広告を規制する法律についてはある程度理解しておく必要がある。対象となる法律はいくつがあるが、中でも薬機法(旧薬事法)、景表法は押さえておくべきである。

今回の展示会では、美容器具の製造や販売をしている企業も多く出展しているが、薬機法は美容器具についても規制を行っていることについて、業界の人でも知らない人が少なくない、と成氏。

ちなみに、医薬品とは「治療や予防に使用されることが目的とされているもの」「身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」と定められている。

そのため、未承認でこれらを標榜しているものは食品、化粧品、そして美容器具も法律違反の対象となる。

具体的には、病名を記している商品や疲労回復や体力増強、若返りなどの効果も「身体に影響を及ぼす」ことであるため、標榜するのは違反となる。医療機器については、法が定める医薬品の規定に「政令が定めるもの」という規定も加わる。

「優良誤認」表示に注意

また、何が医療器具であるかについても法が定めているため、事業者は販売したい商品が医療器具に該当するかどうかを事前に調べることが必須である。

その上で、注意が必要なのが「家庭用医療機器」に該当するもの。例えば、電気治療器、電解水生成器、家庭用マッサージ器など。これについては、当然だが、「病気が治る」「予防」を標榜してはいけない。

健康食品の販売では特に何に注意すべきか。これまでは健康食品業界でも薬機法にウエイトが置かれてきたが、今最も気をつけなければならない法律が「景品表示法」。その中でも特に「優良誤認」については消費者庁が目を光らせているため十分な注意が必要となる。

優良誤認とは、品質について、実際のものより良いと表記したり誤解させる表示をすることであるが、これに対する指摘がここ数年は激増している。

特にダイエット関連は厳しくチェック

仮に「この広告(表示)は優良誤認表示ではないか」と、行政(主に消費者庁)から指摘が入った場合、事業者は「表示の根拠」をすぐに提示しなければならない。

とはいえ、これまでの事例で事業者が示した根拠が認められたケースはなく、行政から指摘が入る=優良誤認広告とみなされてしまう、というのが現状であるという。

そして、措置命令が下され、日刊紙2紙で謝罪広告を出すことや、課徴金が売り上げの3%かけられるなど、企業はさまざまなダメージを受けることになる。

その結果、ネットで企業名や商品名を検索しただけでも、永久的に措置命令が下されたことがネットに表示されてしまうことにもなりかねない。特にダイエット関連の商品を販売している事業者は厳しくチェックされているため注意が必要である。

健康食品やダイエット関連商品以外でも注意

ちなみにこれまでは優良誤認について健康食品や食品関連企業が気をつけるべきこと、と思われてきたが、数年前にエステティックサロンの「頭蓋骨矯正」にメスが入った事例もあり、エステ業界でも油断はできない。

頭蓋骨矯正は頭の骨の位置を整えることで小顔にするという広告となっていた。しかし、特定のサロンではなくこの技術の広告そのものが対象となり指摘が入った珍しいケースである。

また、景表法の指摘は消費者庁の他に各地方自治体も指摘することができるが、これまで静岡県などの一部でしかそれが行われてきた事例がなかった。ところが今年3月、東京都がはじめてある企業のある商品に措置命令を出したことが話題になった。

その商品とはデリケートゾーンの黒ずみを解消するという石鹸で、健康食品でもダイエット関連でもなく「石鹸」というところにメスが入ったことに注目が集まった。

このように、健康食品やダイエット関連商品でなくても油断できない事例が増えている。そのため、どの企業もコンプライアンスを遵守した経営を行うことが何よりも重要となる。

「有利誤認」によるトラブルが増加

また、「有利誤認」についての指摘もどんどん厳しくなってきているため注意が必要、と成氏。有利誤認とは「取引条件について誤解させる表示をしていること」であるが、インターネットで商品を買う人が増えていることで、有利誤認によるトラブルが急増していることが背景にあるという。

特に健康食品の定期購入が問題となっている。初回だけ特別価格で、2回目以降の価格があまりにかけ離れており、そのことに関する表示がわかりにくい、契約の解除がネット上でしづらい、最低でも数回以上継続購入しなければならないといった縛りがあり、いつまでも商品が送られてくる、といったトラブルが後を絶たない。

こうした中、平成29年12月1日に「定期購入に関する規制」が消費者庁から通達され、カート機能や決済機能にもチェックが行われている。

しかしながら、実際インターネットから購入できる多くの商品の決済システムが事業者とは違う会社のシステムを利用しているケースが多い ため、今のところ、指摘が入った事例はない。しかしこれからは積極的な介入が予測されるため今後は注意が必要となるであろう、という。



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