アカマンボウ、疲労抑制機能物質「バレニン」を高含有〜食品開発展2018セミナー

2018年10月3日(水)〜5日(金)の3日間、東京ビッグサイトにて「食品開発展2018」が開催された。同展示会セミナーより、国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所の講演「疲労抑制機能物質"バレニン"を高含有するアカマンボウ」を取り上げる。


新たな機能性成分の供給源に

国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所では、まだ知名度は高くないが、新たな機能性成分として「アカマンボウ」に着目し、研究をすすめているという。

アカマンボウは、一般的に知られるフグ目のマンボウとはまったく別の種類で、大洋域の海面近くから水深500mまでの広い海域に幅広く生息する大型の捕食性魚類である。

アカマンボウは大きいものだと2mを超えるものもあるが、一般的に漁獲されるものは1m程度、体重は20〜40kg程度のサイズのものが多い。

日本でも遠洋はえ縄漁業で混獲されることが多く、惣菜の原料や加工品として割と多く市場に出回っている。

個体や魚肉単体で販売されるのは沖縄などの一部地域にのみ限られているため、一般的にアカマンボウを知る人はほとんどいない。

しかし市場単価はマグロ類で最も安い「ビンナガ」よりも100〜150円/kgほど安く、浜値で概ね350円/kg程度で安定して流通しているという。

クジラから「バレニン」という抗酸化成分が発見

「最強の抗酸化成分」あるいは「渡り鳥や回遊魚の体力の源」といったキャッチコピーで知られる「イミダゾールジペプチド」は、「ヒスチジン」と「アラニン」という2つのアミノ酸が結合したものである。

イミダゾールジペプチドとしては「カルノシン」と「アンセリン」の2種類がよく知られている。ちなみにカルノシンは渡り鳥に多く含まれ、アンセリンは回遊魚に多く含まれる。

最新の研究から「第3のイミダゾールジペプチドと」して「バレニン」という抗酸化成分が発見された。これは長時間絶食状態で、しかも不眠不休の状態でも生体を維持できるクジラから発見された成分である。

イミダゾールジペプチドの中でも、アンセリンはマグロやカツオなどの高度回遊魚の筋肉に多く含まれているが、バレニンはこれらの回遊魚にはほぼ含まれず、グジラ特有の成分と考えられてきた。そのため、バレニンの知名度はなかなか上がらなかった。

ちなみにクジラにはバレニンに加え、カルノシンとアンセリンも豊富に含まれ、特にバレニンの含有量が驚異的に多いことが、クジラの生命力を支えているのではないかと推測されている。

認知機能向上が期待

これまでクジラ肉を食べることでしか摂取できないと考えられていたバレニンだが、クジラの3倍量のバレニンがアカマンボウに含まれていることが分かり、注目が集まっている。

捕鯨問題もありクジラの摂取は容易ではない。しかし、アカマンボウであれば価格も安く安定したバレニンの供給源になり得る。さらにアカマンボウにはカルノシンとアンセリンもクジラとほぼ同等レベルに含まれており、非常に栄養価が高い。

最新の研究では、バレニンの機能性として、筋肉疲労を抑制する抗疲労作用や、特別な運動をしなくても筋肉を維持しやすくなる作用も報告されている。そのためバレニンを高齢者用食品やロコモ対策製品へ活用することが期待されている。

実際に、70〜77歳の男女にバレニン200mg/日を12週間摂取してもらったところ、認知機能や集中力テストの結果が向上し、脳への血流量が改善されるといったことが星薬科大学の研究により報告発表されているという。

アカマンボウの1切れでもバレニンが高含有

アカマンボウの認知を高めるために、アカマンボウを切り身で食べることも広めていきたい。刺身1切れ(約20g)で500mgのバレニンが摂取できる。

通常「イミダゾールジペプチド(主にアンセリン・カルノシン)」のサプリメント(1日摂取目安量)は200mg程度で設計されている。アカマンボウの切り身1切れですでにそれを大幅にカバーでき、過剰摂取による副作用の報告も今のところないという。

さらにアカマンボウのステーキ100gだと、2500mgものバレニンが摂取できる。ただ、バレニンそのものは1日50mgの摂取でも十分効果が期待できるという。

アカマンボウからバレニンを抽出しエキスに加工すれば、水溶性エキスとなり清涼飲料水にも風味を損なうことがなく加工ができる。

もちろんパウダー加工して打錠、ソフトカプセル、顆粒のサプリメントにすることも可能である。アカマンボウとバレニンの認知度が高まれば、多くの人の健康サポートに役立つとまとめた。


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