食品表示、新制度での表示について〜第29回 食と環境のセミナー

平成30年10月30日(火)、中央区月島社会教育会館にて「第29回 食と環境のセミナー」が開催された。この中から、西尾素子氏(消費者庁食品表示企画課)の講演「食品表示基準における栄養成分表示」を取り上げる。


「栄養成分表示」は義務

平成27年4月1日に食品表示法が施行され、平成32年3月31日までに新制度での表示を行わなければならない。

食品表示については、これまで「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の3つが定められていたが、制度が複雑でわかりにくいという声が多かった。

そこで平成25年に食品表示法が創設され、27年4月に3つの法律が一元化され「食品表示法」が施行された。

具体的な表示ルールは「食品表示法に基づく食品表示基準」に規定されているため、それを確認し、新制度に基づいた表示を速やかに行ってほしいと西尾氏。

この新制度が目指すのは「消費者が食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に食品を選択するために必要な情報を提供すること」である。

そのため、今後食品関連事業者はこの食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売はできない定めになっている。つまり「栄養成分表示」は義務ということ。

義務表示を省略できる一般用加工食品も

栄養成分表示の対象となる食品は「原則として容器包装に入れられた一般用加工食品と一般用添加物」で、任意表示は「生鮮商品(一般用・業務用)、業務用加工食品」。

また、任意表示対象の食品であっても「一般用の生鮮食品に栄養強調表示や保健機能食品の表示を行う場合、栄養成分表示が必要」となる。

一方、義務表示を省略できる一般用加工食品もある。「容器包装の表示可能面積が約30p以下であるもの」「栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの(例:香辛料)」「極めて短い期間で原材料が変更されるもの(日替わり弁当)」「酒類」「加工食品の原料として使用される食品」などである。

当分の間は、中小企業法で規定される小希望事業者が販売するものも省略できるとしている、と西尾氏。

義務化された5つの栄養素

また、新制度で表示が義務化された5つの栄養素とその背景についても理解してほしいという。

まずは「エネルギー」。コーデックス委員会の栄養表示ガイドラインでも表示必須項目で、エネルギーは適正体重を維持するために必要な情報であるため。

次に「たんぱく質・脂質・炭水化物」。これもコーデックス委員会の栄養表示ガイドラインでも必須項目で、エネルギーの質を評価するために3大栄養素の情報も必須である。

そして「ナトリウム(食塩相当に換算したもの)」。これもコーデックス委員会の栄養表示ガイドラインでも必須項目で、高血圧の予防、そして国民の7割が減塩が必要とされる背景があり、健康を維持する上で不可欠な情報であるため。

これら5項目については、公的な文献やデータベースで合理的な表示値を計算するのは容易であり、国際的な基準に沿っても情報の表示が必要と考えられた。特に、エネルギーの過剰とナトリウムの過剰、そして糖質の過剰を抑えることが生活習慣病予防の鍵となるという。

「コレステロール・糖類・トランス脂肪酸」は任意表示

一方、「表示推奨」とされた栄養素が「飽和脂肪酸」と「食物繊維」。飽和脂肪酸の摂取量は、目標量の範囲を外れている人が国民の半数近く存在していることや、食物繊維については国民の半数以上が目標量を摂取できていないことから、推奨(任意)で表示を進めたいという。

「コレステロール・糖類・トランス脂肪酸」などは任意表示となり、義務化はされなかった。また新制度では「栄養強調表示(ナトリウム塩を添加していない、糖類を添加していないなど)」についても細かい規定が行われているため、ガイドラインをよく読んで理解する必要があるという。

栄養表示制度によって、商品を見ればまずはそこに含まれている「熱量(カロリー)」や「栄養素」が消費者に速やかに理解してもらえることを目指していると西尾氏。

医療費の削減につながる

特に先に5つの表示必須項目が加工食品に表示されるだけで、国民の健康状態、特に生活習慣病の予防に大きく貢献できる。

新しい「栄養成分表示」を「健康づくりに役立つ重要な情報源」として関連企業と消費者に育ててほしい、と西尾氏。表示をみれば、消費者が自分に必要な食品をスムーズに選べるようになり、必要な栄養素を過不足なく摂取できることが望ましい。

消費者の「選ぶ力」と「事業者の開発する力」が食品表示によって育てば「減塩社会」の実現も夢ではない。それが生活習慣病の予防のつながり、医療費の削減にもつながるであろう、と西尾氏は話す。

食品表示基準に基づく法令は消費者庁のサイトからも確認できる。平成32年3月31日までは経過措置期間であるが、1日も早く消費者に新たな表示と情報が届くよう、計画的に準備をして、速やかな表示の切り替えに努めてほしいとまとめた。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.