長崎県びわ発酵茶、現代人の悩みをサポート〜第37回健康博覧会セミナー

2019年1月23日(水)〜25日(金)、東京ビッグサイトにて「第37回 健康博覧会」が開催された。同展示会セミナーより、宮田裕次氏(潟Tンダイ/長崎県農林技術開発センター 主任研究員)の講演「特許製法の新素材!長崎県びわ発酵茶、みかん発酵茶の研究・開発」を取り上げる。


びわの葉、古くから民間療法で使用

長崎県のお茶の生産量は全国第10位で、栽培面積は747ヘクタール、平成29年度の栽培量は1050トンと、多くのお茶を生産している。

また、あまり知られていないが、びわの生産量は長崎県が全国第1位である。

びわの葉は日本薬局方に記載されるほど薬効が高く、長崎でも民間療法薬として用いられてきた歴史があり、今でも葉の部分が地元では湿布などによく使われている。

びわは季節の果物として食されるだけでなく、長崎県民にとってはポピュラーな健康茶として日常的に愛飲されている。しかし、この健康茶が県外に広まることはこれまでなかった。

しかし、国内の健康問題と同様、長崎県でも高齢化や生活習慣病罹患者増の問題があり、健康に寄与する長崎県独自の高付加価値製品の開発に期待が寄せられ、びわを使った商品の研究が長く行われてきた。

「びわ×緑茶」に効果あり

長崎県はお茶の生産にも力を入れ、50種類以上の発酵茶を作っている。そのうち、糖尿病予防や抗肥満効果が期待できるものをスクリーニングしたところ「びわ×緑茶」に効果があることが見い出された。

そこで、長崎県農林技術開発センター・長崎県工業技術センター・長崎大学・長崎県立大学・九州大学の産官学の連携プロジェクトによる共同研究で「びわ葉混合発酵茶」が誕生した。

びわのお茶と緑茶の茶葉を一緒に揉み込んで発酵させるという世界初の「異種混合発酵製法」で、すでに多くの機能が知られている「茶カテキン」の量を増加させた。

さらに「びわ葉混合発酵茶」の独自有効成分である「カテキン重合ポリフェノール(高分子ポリフェノール)」の含有量を高めることにも成功した。

この特殊な発酵製法で味がマイルドになり、和食・洋食のいずれにもマッチするお茶になった。

血糖値上昇抑制や体脂肪減少などの作用

さらに「びわ葉混合発酵茶」には、ヒト試験にて「血糖値上昇抑制」「血中の中性脂肪濃度減少」「体脂肪減少」などの作用が認められ、まさに現代人の悩みをサポートする魅力的なお茶に仕上がっている。

血糖値上昇抑制のメカニズムは「カテキン重合ポリフェノール(高分子ポリフェノール)」が、マルターゼという糖の吸収を促進させる酵素の働きを抑制することで、血糖値の上昇を抑制することが解明されている。

また、「血中の中性脂肪濃度減少」のメカニズムについては、「びわ葉混合発酵茶」2gで作った200mlのお茶を一日200ml、12週ほど継続摂取で肝臓内での脂肪合成が有意に抑制されることが明らかになった。

さらに、小腸からの脂肪吸収が抑制されること、褐色脂肪細胞における脂肪燃焼促進が見られることも分かった。

青みかんと緑茶を一緒に発酵

さらにこの「異種混合発酵製法」を活用し、「青みかん」と「緑茶」を一緒に揉み込み、発酵させた「みかん混合発酵茶」についても紹介。長崎県では温州みかんの生産にも力を入れているが消費量が年々減少していた。

みかんにはヘスペリジンという機能性成分が豊富だが、ヘスペリジンは水に溶けにくいため、腸から体内に吸収されにくく食品への展開が制限されていた。

ヘスペリジンが豊富に含まれるみかんの薄皮や筋の部分を食べてもほとんど吸収されないこともわかっている。

しかしヘスペリジンには血管強化、コレステロール低減、抗酸化、血圧低下、中性脂肪低下などの作用が認められているため、なんとか活用できないかと「異種混合発酵製法」で、お茶にすることの着想を得たという。

みかん混合発酵茶、疲労回復や肩こりを改善

実際、この製法で「みかん混合発酵茶」を作ったところ、ヘスペリジンの水溶性・吸収性の向上に成功した。

さらにこのお茶を使用したヒト試験では「冷え性改善の有効性」が確認できた。ヘスペリジン30mgまたは40mgを含む「みかん混合発酵茶」を一回200ml摂取すると、血管拡張による血流改善効果により、摂取15分後あたりから、有意に冷え性を改善する効果が認められた。

また、ヘスペリジン40mgを含む「みかん混合発酵茶」の摂取を一日200ml、8週間継続摂取することで、4週目あたりから疲労回復や肩こり改善の効果が見られた。

混合発酵という技術はそれぞれの茶葉が持つ酵素で発酵活性が進み、効果的な化学反応が起こることが最大の特徴だが、従来のお茶や紅茶を製造する機械がそのまま利用でき、低コストであるのも魅力である。

長崎県の代表的な農産物である「びわ」「みかん」「緑茶」をフル活用した魅力的な新商品をぜひ多くの人に試してみて欲しいとまとめた。


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