特にパン食の場合、糖質過多になりがちだが、パンそのものから食物繊維とミネラルを同時に摂取するように意識すれば、効率的かつ効果的な糖質コントロールにつながる。
そのため、食物繊維を多く含むパン、特に水溶性食物繊維をパンからしっかり摂取することは血糖値のコントロールに役立つだけでなく、腸内細菌叢の健全な育成につながり、免疫力の向上にもつながる、と中塚氏。
低糖質パン、血糖値が上昇しにくい
低糖質パンの開発に着手した直後は、「糖質オフ」「低糖質」にこだわった。そして、可食部100gあたり糖質5gという低糖質パンを開発することに成功した。
そのパンを摂取した後の体内動態を調べてみると、低糖質パンを摂取した後は確かに血糖値が上昇しにくいが、その分、昼食を摂った後の血糖値が上がりすぎてしまうという問題点が生じた。
そこで中塚氏は2016年から製パン材料を全て見直し、β-グルカン大麦粉を混ぜることで可食部100gあたりの糖質を10g以下にした「マイルド低糖質パン」の開発を成功させた。
このパンでさらなる食後血糖値上昇抑制効果や血糖値スパイク抑制効果、セカンドミール効果が得られた。
この「マイルド低糖質パン」は強力粉70%・大麦粉30%、さらにグルテン無添加で作ることで、低GIなだけでなく、食物繊維リッチで材料費も抑えられ、全粒粉100%のパンよりもふっくら美味しいパンに仕上がったという。
ヘルシーで機能性の高いパンの開発を
低糖質パンを開発するにあたり、15種類以上の穀物粉で試作を行なったが、現時点では日本であれば大麦粉が最も適していると考えているという。
しかしながら、穀物粉には地産地消のものも多く、地域によっては大麦粉よりも適した穀物粉がある可能性もある。
また、この低糖質パンのバリエーションとしてホエイパウダーを添加することでよりヘルシーで機能性の高いパンができる可能性もある。
年齢を重ねると、今までの食事では血糖値や血圧が維持できなくなるが、それでも美味しいパンを食べたいという人は少なくない。
「糖質制限を取り入れたいが、パンを食べたい人」「乳製品や卵にアレルギーがある人」「塩分摂取をコントロールしている人」「安心できる原材料かどうかにこだわりがある人」「マーガリンやショートニングの使用に疑問がある人」にもマイルド低糖質パンはお薦めできる。
マイルド低糖質パンのレシピやパンから得られた研究開発成果を、志を同じとする「パン仲間」と共有し、一人でも多くの人に健康に良い、体に良いパンを届けられたら、と中塚氏はまとめた。
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