「不健康な食習慣」をやめられない人が多い
健康長寿の実現に向けて、国民一人ひとりが「食事」と「運動」の2つの要素の質を高めていくことが極めて重要である。特に「食事」は健康に与えるウエイトは大きい。
日本人の多くが「健康な食品」や「健康な食べ方」に関心を抱き、知識や情報を十分に持っている。しかし実際は「不健康な食習慣」をやめられない人が多い、と青木氏。
「不健康な食習慣」は「喫煙習慣」と並ぶ疾病リスクである。禁煙の理解と実行についてはこの数十年で世界的に普及した。
しかし「食習慣で健康」についてはうまくいってない部分が多い。背景には「食習慣の改善で健康になった」という社会モデルがまだほとんど存在していないこともあるのではないか、と青木氏。
そのため、今回のセミナーでは世界各国の「食習慣の改善による健康促進の成功事例」を紹介した。
専用アプリで購入傾向を分析
まずは、トルコの事例。トルコで最も主要なスーパーマーケットチェーンの「ミクロス」では、店頭に置かれている食材を「穀類」「肉魚卵」「豆類(ナッツ類含む)」「野菜果物類」「乳製品」の5つのカテゴリーに分類し、消費者一人ひとりの購入履歴をPOSレジで記録している。
これにより消費者は専用のアプリから商品の購入履歴と買い物の傾向が分析できる。また、極端に購入の少ないカテゴリー商品や、栄養バランスを整えるうえで購入した方が良い商品が割引で購入できるなどのサービスが受けられる。
例えば、ある週は「野菜果物類」の購入が不足していると、それがアプリからアラートされ、野菜・果物類を購入するために使用できるクーポンが配信され、販促行動へと繋がる。
現状このアプリは100万人以上のアクティブユーザーを抱え、ユーザーの44%に行動変容が起こった。また、アプリを利用している人の一人当たりの売り上げが平均約17%増、顧客数も14%増加したという。
「健康」を商機と捉える
他にも、南アフリカの大手保険会社「バイタリティ」が販売する「健康増進型保険」。オーストラリアとニュージーランドで導入している「Helth Star Rating(健康指数ラベル)」制度などがある。
いずれも消費者に直結する食品メーカーやスーパーなどの小売業、外食産業などが「健康」を商機と捉え、消費者の行動変容を起こすことでビジネス拡大と健康の両方を実現させることに成功している。
このように世界的に示唆に富むイノベーションの社会実装の例が生まれ始めているが、日本ではこのような試みがまだ行われていない。
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