大腸がんと腸内細菌は密接に関係しているということが近年の知見だが、一般的に歯周病の原因菌として知られるフソバクテリウムに関する研究についても進んでいる。
大腸がんの組織や細胞内では正常な組織や細胞内よりフソバクテリウムが多く生息し、大腸がんの発がんや浸潤へ関与することが報告されている。
フソバクテリウムとがんの関係
フソバクテリウムは通常口腔内に最も多く存在しているため、口腔内により近い臓器である食道がんとの関係について調べた。
その結果、食道がんでもがん組織内のフソバクテリウム量が正常組織と比較して多く存在していることが確認され、フソバクテリウムは大腸がんだけでなく食道がんや胃がんにおいても深く関与することが示唆された。
さらに、がん患者(主に大腸がんと食道がんなど)において口腔内や腸内にフソバクテリウムの量が多いと、術後の予後が悪い傾向があるとの研究論文もあり、消化器系のがん以外でもフソバクテリウムの量が多いと予後が悪いという報告も複数ある、と馬場氏。
フソバクテリウムが増加、薬剤抵抗性を獲得
また、食道がん・胃がん・大腸がんの300症例の72%において、がん組織内にフソバクテリウムが多く存在している。
がんのステージが進行しているほどフソバクテリウムが多く、フソバクテリウムが多い人ほど予後も悪い。
さらに食道がんの抗がん剤治療においてもフソバクテリウムが関係していることが示唆。患者の便から腸内細菌を調べたところ、フソバクテリウムが増え腸内細菌叢が乱れていると抗がん剤の効果が出にくい傾向がある。
おそらくフソバクテリウムが増加していることで薬剤抵抗性を獲得している可能性がある、と馬場氏。
フソバクテリウムは膨大なMicrobiomの一つにすぎないが、この細菌の活性における体内での動態を今後も研究することで、消化器系のがんの診断や治療に新たな選択肢が加わる可能性が大いにあるとした。
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