ヒトは無数の細菌と共生
Christopher氏は32週未満の早産の乳児を対象とした若齢期の健康と病態における微生物叢の関係を10年以上研究している。
現在、英国のニューキャッスル大学で腸内微生物と宿主の相互作用の研究を行う研究室を立ち上げている。
腸内細菌を主にヒトは無数の細菌と共生しているが、その細菌数は我々の肉体を構成する細胞数よりも多い。
これらの細菌は生涯にわたり、食事の分解や免疫系の発達、病原体に対する抵抗など、ヒトの健康をサポートしている。
私たちが生涯、健全な細菌叢を維持するために最も大切なファーストピリオドは「幼少期」にあるのではないか、とクリストファー氏。
出生後、微生物が急速に定着
満期産(妊娠37週以上)で生まれた一般的な赤ちゃんの腸内には、微生物が急速に定着していく。
それまで無菌状態で母体の中で育まれていた個体には当然腸内細菌などは存在していない。
しかし、出産の過程(特に経膣分娩)、呼吸、母乳の摂取などにより、無菌だった赤ちゃんの腸内にはダイナミックに微生物が共生しはじめ、それがいわゆる「腸内フローラ」として多様性を拡大しながら発達していく。
しかし極端な早産で生まれた赤ちゃんの腸は非常に未熟で、生まれた時の免疫系も満期出産の赤ちゃんよりも未成熟になる。
腸と免疫の健全な成長を促すために特定の細菌種などの摂取を促すなどの方法も検討しなければならない。
満期で出産することが大切
現在はある程度、早産や未熟児の赤ちゃんに対し、細菌叢の発達を促すための治療やコントロール方法が確立されている。
とはいえ、健全な腸内細菌叢を獲得するには、出来るだけ満期で出産することが大切、とクリストファー氏。
満期産で生まれた子供の方が1型糖尿病のリスクやさまざまな免疫疾患のリスクが低減することも近年の調査で報告されている。
さらに、満期で生まれた後も、どのくらいの期間母乳で育ったかということが、その後の腸内細菌叢の発達に大きな影響を与えることがわかっている。
実際、産後1年間母乳で育った赤ちゃんほど腸内細菌叢がダイナミックに拡大していくことなども1万人規模の赤ちゃんの研究からもわかっている。
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