乳酸菌EC-12、不安や鬱の抑制で期待

ifia2020・企業プレゼンセミナー(4月22日〜24日)で発表予定のコンビ鰍フ講演資料から「EC-12と脳腸相関に関する研究」を取り上げる。(※同展示会は新型コロナ感染拡大防止のため中止となりました)


EC-12に生体免疫刺激能

EC-12とはヒトの腸管より分離した腸内細菌の一種、エンテロコッカ・フェカリス菌(乳酸菌)を独自の培養処理技術で加熱殺菌処理し高度に濃縮した乳酸菌成分である。

その扱いやすさと高い機能性から、健康食品やサプリメント以外にも、加工食品、飲料、ペット用サプリメントなどさまざまな食品に利用されている。

EC-12は小腸のパイエル板(M細胞)から免疫細胞の基底膜側に取り込まれ、EC-12の細胞質成分RNAがサイトカインを産生することで生体の免疫応答を活性させるというメカニズムが解明されている。

他にも、現在明らかになっている生理効果として「整腸作用」「内臓脂肪低減」「インフルエンザウイルスの治癒促進」「リステリア菌感染抑制」「にきび抑制」「免疫調整作用」「栄養吸収」「創傷治癒」「抗腫瘍」「ポリープ抑制」など、いずれもEC-12には生体免疫刺激能があるため、と考えられている。

EC-12、脳に対する機能性

今回は、EC-12の新たな機能性として脳に対する可能性について紹介。

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸と脳が相互に情報交換しているといわれている。これを「脳腸相関」と呼ぶが、近年はこの脳腸相関が腸内細菌と影響し合っていることが解明されてきている。

例えば、うつ病患者の腸内細菌叢はそうでない人に比べ多様性が低く菌種の豊富度も低いことなどが明らかとなってきている。

WHOによると世界のうつ病人口は3億人を超え、自殺者は年間800万人を超えるとされ、特に介入が必要なグループとしては「青年期」「妊娠・出産期の女性」「高齢者」が挙げられている。

メンタルヘルスをサポートするにために、特に「不安」といった状態を定量化する必要があるが、漠然とした不安を定量化するにはどうすればいいか。

辞書によれば不安とは「漠とした恐れの感情。動悸・発汗などの身体的兆候を伴うことも多い」と定義されている。不安で病院に行けば、問診・カウンセリング・心理検査で定量化することができ、治療方法や処方箋が提示される。

一方マウスの場合、行動試験で定量試験ができる。具体的にはオープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、強制水泳試験などの方法があり、マウスの不安状態でもこれらの試験によって定量化できる。

マウス実験で、神経伝達物質受容体が増加

そもそも乳酸菌のようなプロバイオティクスには「不安」を軽減する効果があることが良く知られている。そこでEC-12にも不安への効果があるかどうかをマウス試験にて検証した

試験方法としては8週齢の雄のマウスを2つのグループ「精製飼料群」と「EC-12(精製資料にEC-12を0.125%添加)群」に均等にわけ、4週間後に先に紹介した3つのオープンフィールド試験による不安測定評価を行った。

試験の結果、マウスには不安より好奇心が向上する傾向やストレス耐性が向上する傾向が見られ、EC-12の摂取によりマウスの不安が抑制されるという結果が見られた。

さらにこの行動試験を行ったマウスの脳にはどのような変化があるかを調べた。するとマウスの前頭前皮質において、神経伝達物質受容体の遺伝子であるβアドレナリン受容体遺伝子(Adrb3)とアルギニンバソプレシン受容体遺伝子(Avpr1a)の発現が有意に増加していることが確認できた。

EC-12の摂取によりマウスの行動変容が起こる。それはマウスの不安が抑制されるもので、さらに脳内を調べると神経伝達物質受容体が増えている、ということがわかった。

不安や抑鬱状態といったメンタルヘルスに有効性

しかし、そもそもEC-12には免疫調整効果や腸内環境改善効果があることがわかっており、これが不安抑制効果や脳の遺伝子発現調整とどのように関与しているかまではわかっていない。

そこで、EC-12がマウスの不安行動をどのように抑制したのか、そのメカニズムについて調べてみた。具体的にはEC-12の摂取によって
@ホルモンに変化が起こるのではないか?
A腸内細菌叢が変わるのではないか?
B腸管内で分泌した酪酸(短鎖脂肪酸)が関係している? 
といった3つの仮説で調査をした。しかし、現時点ではいずれも有意な結果は得られず、新たなパスウェイによって脳の遺伝子発現調節や不安抑制効果が起こっている可能性が高い、という。

まだ作用メカニズムについて未知の部分が多いが、他の乳酸菌同様、EC-12が不安や抑鬱状態といったメンタルヘルスに有効性を示すことは間違いなさそうなため、今後の展開に期待が寄せられる。


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