元オリンピック選手の腸内から新種のビフィズス菌を発見〜AuB-001 記者発表会

2020年9月2日(水)、記者発表会「元オリンピック選手の腸内から新種のビフィズス菌を発見〜AuB-001」が行われた。この中から、鈴木啓太氏(AuB椛纒\取締役)の講演を取り上げる。


アスリートの体調管理、腸内細菌と密接に関係

2015年のシーズンを最後にプロサッカー選手を引退した鈴木啓太氏。
引退するにあたりファンの大切さや愛情を改めて実感し、アスリートの力でもっとファンや社会に恩返しをしたいと、「腸内環境ビジネス」を選んだという。

幼少期から母親に腸内環境の大切さを教わり、現役時代も「腸を大切にする食事」などを意識していた。

そうしたことから、海外の遠征先などで大きく体調を崩すこともなく高いコンディションを維持することができたという。

アスリートにとって、体重のコントロールや疲労・怪我からの回復、集中力、メンタルコントロール、選手寿命の延長は重要な課題だが、それら全てが腸内細菌と密接に関係している。

トップアスリートの腸内細菌を解析・研究

こうしたことは、一般生活者のコンディショニングの維持にも役立つ。そうした着想が形になり、2015年10月、アスリートの腸内細菌の解析・研究をする会社を立ち上げた。

これまでに28競技、700名以上、1400検体以上を解析しており、トップアスリートの腸内細菌検体・解析においては世界ナンバー1の会社になっているという。

実際、トップアスリートの腸内細菌を研究していくと、トップアスリートは一般生活者よりも優れた腸内環境を有しているケースが多い。

具体的には腸内細菌の多様性が高く、免疫機能を調整するといわれる酪酸菌を2倍以上保有している、といった違いが見られる。

そこから、元オリンピック選手の腸内より新種のビフィズス菌を発見、これを「ビフィズス菌をAuB-001」と命名した。

これはAuB社の第一号となる独自の腸内細菌であり、現在国際特許も申請中であるという(オリンピック選手の競技や性別などは個人情報保護の観点から現状非公開)。

シンバイオティクスとしての働き

この「AuB-001」には3つの大きな特徴があるという。「これまで未発見だったソルビトール資化能(糖を活用して合成する能力)を持つ菌である」「ヒトに有能な酢酸を通常の11倍酸性する能力を持つ」「胃酸に強く腸まで届きやすい」というものである。

最も特徴的なのは「ソルビトール資化能」。天然の糖質の一種であるソルビトールを栄養源にできる特異ビフィズス菌である。

ソルビトール資化能を持つビフィズス菌はこれまで未発見で、ソルビトールを分解する過程で免疫機能を整える酢酸を、特定の培地において一般的な同種の菌より11倍も多く産生する。

酢酸には感染症予防や過剰な免疫の抑制作用など、人の機能においてとにかく重要な働きがある。また酢酸と同じくヒトの腸内環境に良い働きをする乳酸についても一般的なビフィズス菌ロンガム種(同種)の菌より12倍も産生することが確認されている。

また、乳酸は腸内の蠕動運動や腐敗産物の生産抑制などに欠かせないため、健康効果が非常に期待できる。

これらの特長から、「AuB-001」は菌単体としてはプロバイオティクスとして有効であり商品開発に活用できる。

また、リンゴなどに含まれる天然あるいは人工のものでもソルビトールと同時に摂取できる設計にすることで腸活ブームの中で注目の「シンバイオティクス(プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含む)」の商品になり得るという。

食品やサプリ、医薬品までさまざまな形で活用

腸内細菌叢や腸内環境はどのような種類の菌がどれくらい住んでいるのかは、人によってそれぞれ大きく異なり個人差が著しい。

そのため現在は、病人と健常者の腸内細菌を比較することが主流である。しかしアスリートは定期的なメディカルチェックの受診や食事や活動量のログデータも膨大にある。

特徴的な被験者であるアスリートの腸内細菌を研究することで特徴的な菌を発見できるのではないか、というのが今回の研究のベースにある仮説で、今後もアスリートの腸内細菌の解析を進めたいという。

新種の菌の発見には会社設立から5年の歳月を要した。AuB-001の国際特許取得はおそらく年内に、商品化は来年が目処だという。

「AuB-001」には培養、量産が可能なことも確認されており、経口摂取できる食品やサプリメント、機能性食品、プロバイオティクス、医薬品や医薬部外品などさまざまな形で活用できる。

今後も新たな腸内細菌を発見し、そこから得た利益はアスリートが所属する競技団体に寄付するというスポーツ支援も構想していると鈴木氏は話した。


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