ウロリチン、新たな腸内代謝物の可能性
〜第22回Bio Japan


2020年10月14日〜16日、パシフィコ横浜にて「第22回Bio Japan」が開催された。この中から三橋和也氏(潟_イセル ヘルスケアSBU研究開発グループ第一チームリーダー)の講演「新たな腸内代謝物の可能性」を取り上げる。


発酵技術で、他にない成分に転換

1919年に誕生した株式会社ダイセルは、セルロース化学、有機合成化学、高分子化学、火薬工学などをコア技術に、高機能材料や化学製品などさまざまな分野でグローバルに事業展開をしている。

ヘルスケア部門ではコスメと健康食品に欠かせない素材を研究開発し、製造も手がけている。

健食部門ではエクオール・セラミドなどの有名素材だけでなく、ラクトビオン酸・β-クリプトキサンチン・こんにゃくセラミド・フラボセルEQ-5・S-アリルシステインなども扱っている。

同社では、それぞれの成分がどのように腸内で代謝されるのか、という研究も一貫して行なっている。

また、ラクトビオン酸やβ-クリプトキサンチンは「アップサイクル技術」で、本来であれば破棄される部分から機能性成分を抽出するといった「別の製品にアップグレードして生まれ変わらせる手法」により付加価値を生み出している。

発酵などの「バイオ技術」により他にはない成分に転換させることなどにも注力している。

腸内細菌叢のバランス、健康状態と密接に関係

ヒトの腸内には細菌が約100兆個、菌種としては約1000種類以上が存在しているといわれている。

この腸内細菌叢のバランスは私たちの健康状態と密接に関係している。

加齢と共に乱れやすい腸内細菌叢をいかに良い状態に保つかが、健康維持だけでなく将来の疾病予防にも有効であることが、ここ数年解明されてきている。

ただ、腸内細菌叢を維持・活性するために考えなければならないことの一つに「代謝」がある。

私たちの体内に取り込まれた食品や食品中に含まれる機能性成分は腸内で代謝され、免疫や遺伝子などに影響を与える。

さらに、医薬品や環境汚染物質など、体内に取り込まれる全てのものが代謝され、体にさまざまな影響を与えている。

これからの機能性成分に求められるもの

機能性表示食品などのニーズの高まりで、成分のエビデンスや有効性についてはより正確なものが求められている。

一番大切なことは「期待する効果が、期待通りに得られる機能性成分である」ということであり、腸内に取り込まれてもそれ以上代謝されることがない状態の機能性成分が求められている。

また、元の成分よりも機能性がより高いこと、あるいは元の成分よりも吸収性が高いこと、などがこれからの機能性成分として求められている。

そこで、一例として腸内代謝物のウロリチンを紹介した。

ザクロ、ベリー、ナッツなどに含まれるエラジタンニン(天然フェノール系の抗酸化物質であるエラグ酸)には、さまざまな健康機能があることが報告されている。

これは腸内細菌によりエラグ酸から生成されるウロリチン類(URO -A)に由来する。エラギタンニンは胃の中で加水分解されてエラグ酸となり、さらに腸内細菌によってウロリチンが作られる。

ウロリチンにマイトファジー効果

ウロリチンにはミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)効果が確認され、世界初の機能として注目されている。

マイトファジー効果とは、細胞内エネルギー産生を担うミトコンドリアのリフレッシュ効果で、線虫においては寿命延長効果も確認されている。

他にも、ウロリチンにはインスリン感受性の改善、認知障害の改善、抗酸化活性、腸管バリア機能の改善、肌に対する糖化抑制効果、骨に対する破骨細胞分化抑制、抗肥満効果などさまざまな機能が報告されている。

ただし、エラグ酸からURO -Aを作る腸内細菌が弱い人やまたは存在しない人は、同様の健康効果を期待することができない。

実際、ウロリチンを製造できる人の割合は、エクオールが体内で合成できる人と同様に50%程度である(ダイセル社の調査)。

しかし、最初からウロリチンという代謝された状態で製品を提供できれは、体内で作れない人にもある程度の効果が期待できる可能性が高まる。これらの研究成果を生かし、来春には食品素材としてウロリチンを販売する予定だと報告した。


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