熟成ホップ、脳機能や体脂肪に作用
〜食品開発展2020セミナー


2020年11月16日〜18日、東京ビッグサイトにて「食品開発展2020」が開催された。この中から、INHOP鰍フ講演「熟成ホップ〜脳機能改善・抗肥満効果をもつハーブ由来新素材」を取り上げる。


ホップ、脳機能の改善や体脂肪の低減

キリンホールディングスのグループ会社であるINHOP梶Bキリンホールディングスが長年ビール作りと関わる中で発見したホップのさまざまな力を健康に役立てるためにINHOP鰍ェ設立されたとその経緯を紹介。

ホップはアサ科のルツ性多年草で、10世紀以上前からヨーロッパでは薬用ハーブとして抗菌作用やリラクゼーション作用などを目的に利用され、世界最古の医学文献にも薬用植物としての記録がある。

ビール原料として世界各国で使用されるようになってからは、特に国内ではビール原料に留まり、ハーブとしての側面に注目が集まらなかった。

ハーブとしてのホップは苦味が強く、安定性も良くないため、食品や健康食品への応用が限定的という壁があった。

キリンはビール製造の過程で培った方法で、ホップを加熱熟成させ、ホップ独特の苦味が低減し食品加工が可能になった。

ホップそのものには脳機能の改善、体脂肪の低減、睡眠の改善、更年期障害の緩和、花粉症の緩和、抗酸化など、多数の効果が報告されているという。

10年に渡る研究で、苦味を1/10に低減

ホップの効果を発揮する機能性成分は、ホップに含まれる多様な苦味成分であると推測されているが、INHOP鰍ヘ中でもイソαという成分に注目。実際にイソαによる試験で脳機能の改善や体脂肪の低減作用が確認できているという。

ただ苦味が強いため、キリンホールディングスでは10年にわたり研究を行い、独自の熟成加工法を確立。これにより苦味が1/10にまで低減できるようになった。

この技術(熟成)により機能性を有する苦味成分は「熟成ホップ由来苦味酸(MHBA))に変化した。

MHBAは熟成させたホップを水で成分抽出するだけの安全なプロセスによって製造されているため、子供でも摂取できるほど安心で、この技術が確立できたことで量産も可能になった。

MHBAは体内に入ると、小腸にある苦味受容体を介して「腸脳相関」を発揮し、交感神経を活性することでさまざまな機能を発揮する。「脳機能改善」と「体脂肪低減効果」についてはヒト臨床試験が行われている。

「脳機能改善」については、MHBAが小腸に取り込まれ「腸脳相関」を発揮し、交感神経を活性することで、脳内で「ミクログリア活性化」が生じ脳内炎症を抑制。さらに脳内神経細胞の活性化により脳機能を改善する。

また、交換神経を活性させるため、海馬や前頭葉にも作用しドーパミンが増加することが確認されており、総合的に脳内の神経伝達物質を増加させるという。

ヒト臨床試験では1日35mgのMHBAを12週間、45歳以上64歳以下の30名を対象に摂取してもらう二重盲検試験を行った。その結果、脳機能改善だけでなく、「思考時の疲労感の改善」や「集中力の改善」も確認できたという。

褐色脂肪組織を活性、体脂肪が低減

「体脂肪低減効果」についてはMHBAが小腸に取り込まれ「腸脳相関」を発揮し、交感神経を活性する。これにより褐色脂肪組織が活性し、脂肪が燃焼しやすくなり体脂肪が低減する。

また褐色脂肪細胞の温度を上昇させることも確認しており、代謝アップによる脂肪燃焼作用もあるのではないか、という。

ヒト臨床試験においては、BMI値が25〜30の人100名を対象に、1日35mgのMHBAを12週間摂取してもらい、有意な低脂肪低減効果が確認できた。

実際、ノンアルコールビールの形で機能性表示食品としてSR(システマテック・レビュー)も確立できており、 すぐに機能性表示食品成分として活用することができるという。

現在INHOP鰍ナは、熟成ホップの健康機能を起点としてプラットフォームを立ち上げ、新しいエコシステム、社会問題の解決をも目指している。

熟成ホップの機能性商品の開発だけでなく、パートナー企業とのさまざまなコラボレーション、熟成ホップの情報発信なども力を入れている。熟成ホップで健康社会を進化させることに貢献できれば、とまとめた。


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