食物繊維のサイリウムシードガムを有効利用〜食品開発展オンラインセミナー

2021年4月12日(月)、食品開発展オンラインセミナーが開催された。この中からシキボウ鰍フ講演「オオバコ由来の食物繊維「サイリウムシードガム」の特性とグルテンフリーパンへの応用」を取り上げる。


古くから食物繊維素材として利用

サイリウムシードガムとは「天然植物ガム」で、シキボウ(株)では平成6年から販売を行なっている。

サイリウムシードガムは、オオバコ科の植物である「ブロンドサイリウム」の種子外皮から得られ、多糖類を主成分とし、小麦では「ふすま」の部分に相当する。

食物繊維を非常に多く含む、原産地のインドはもちろん欧米諸国でも古くから食物繊維素材として利用されている、食経験の豊富な成分である。

日本でも健康食品分野で長く利用されているが、食品添加物として区分されており「サイリウムハスク」、「プランタゴ・オバタ種皮」、「オオバコ種皮」と呼ばれることも多い。

主な産地はインド北西部のラジャスタン州などで、11月〜12月に作付けされ、3月〜4月に収穫される。

サイリウムは、インド国内の工場で種皮から外皮を物理的に隔離した後、種皮であるハスクを日本国内に輸入し、国内で加工して「フードメイドP100」として製品化している。

食物繊維が約90%

サイリウムシードガムはキシランを主成分とし、キシロース、アラビノース、ラムノースなどから成る複雑な構造をしている。

栄養成分表としては食物繊維が約90%で、この食物繊維には水溶性と不溶性の両方がバランスよく含まれている。

サイリウムシードガムには他の食物繊維と同様、整腸作用、便通改善作用、コレステロール吸収抑制、血糖値急上昇抑制、満腹感、便嵩増加、などの機能性が確認されており、インドでも主に整腸剤として利用されている。

血糖値の上昇を抑制

特に近年は「血糖値の上昇抑制効果」が注目されており、サイリウムを食事の前に事前摂取しておくことで、摂取物の吸収速度が低下するため、インスリンが膵臓から分泌される負担を軽減し、血糖値の上昇が抑制される。

これらの優れた機能性から、サイリウムにはトクホ(特定保険用食品)に関与する成分として「お腹の調子を整える」「コレステロールが高めの方に適する」といった表記が許可されている。

さらにサイリウムの特徴として、非加熱水溶液でも粘性が発揮されるが、加熱された水分では高い粘性を発揮し「餅」のような粘度を発揮する。

保水効果も高く(離水抑制効果)、少量であれば食感を損ねることもないため、粘性を高める効果や離水目的などで、さまざまな加工食品に利用されてる。

増粘剤として添加

昨今、米粉パンの人気や需要が高まっている。米粉にはグルテンが含まれなため、米粉パンをグルテン無しで膨らませるために、増粘剤を添加する必要がある。

増粘剤としてサイリウム製品である「フードメイドP100」を添加するとどうなるか。

一般的に増粘剤として用いられているグァーガムやHPMCと比較して、サイリウムを添加した米粉パン生地は形成する際のハンドリングが最も簡単である。

グァーガムやHPMCを添加した生地は生地そのもののベタつきや調理器具への付着が多かったが、サイリウム添加生地にはそのようなことは起こらず、ハンドリングや形成が非常に容易になる。

グルテンフリーの分野で有効利用

焼成後の生地については、サイリウムの添加量を1.5〜2.5%程度にすることで膨らみが向上し、気泡が保持され、嵩の高いパンができることも確認できた。

また嵩の高さ、断面気泡だけで比較するとグァーガムやHPMC添加米粉パンと大きな差は生まれなかったが、焼成前の扱いが容易だったことが影響し、見た目は優位にサイリウム添加米粉パンの方がよく仕上がった。

また、冷凍耐性についてもサイリウムを添加した米粉パンにおいて、優位に気泡が保持されたことも確認できという。

もともと食品添加物として利用されているサイリウムシードガムだが、グルテンフリーなどの分野では今後もっと有効利用できるのではないか、と今後の展開に期待を寄せた。


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