黒酢メラノイジン、脂肪細胞分化を抑制
〜第7回日本黒酢研究会セミナー


2022年6月17日(金)、web配信にて第7回日本黒酢研究会セミナーが開催された。この中から、蓮見惠司氏(東京農工大学大学院)の講演「脂肪細胞分化を抑制する黒酢メラノイジン〜新規オリゴグルカン・メラノイジン複合体」を取り上げる。


黒酢、肥満に対する機能性で注目

黒酢は健康食品としても知名度が高く、機能性表示食品制度でも黒酢を含む商品は多くある。2020年の調査によると機能性関与成分に黒酢を含む商品は44件、機能性関与成分に酢酸を含むものは40件ある。

黒酢の機能性関与成分について、どのような機能が報告されているかについては「内臓脂肪減少 (酢酸)」「 血圧低下作用(ペプチド)」「血流改善(ヒスタミン)」がよく知られている。

これら以外にも黒酢の機能性として示唆されているのが体脂肪の低減、血流の改善、血中中性脂肪の低下、疲労回復、便通改善、血中アルコール濃度上昇遅延などである。

特に黒酢に対しては肥満に対する機能性に注目が集まるが、数多くの研究や報告がなされている一方で、関与成分は明確になっていないのが現状である。

ラット実験で脂肪細胞の分化抑制効果

これは黒酢が非常に複雑な構造を成しているため。そこで、本研究は黒酢の肥満に対する機能性を発揮する機能性関与成分を探索することを目的として行われた、と蓮見氏。

そもそも黒酢は発酵食品であるため、構造が非常に複雑である。しかしながらラット試験では、黒酢を投与したラットは腎臓の脂肪細胞のサイズが縮小するなど脂肪細胞の分化抑制効果が明らかになっている。

これらの知見からマウスの3T3-L1線維芽細胞を用いて、黒酢濃縮粉末を有機培養による分配やクロマトグラフィーを何度も用いることで、これまで困難だとされていた黒酢の精製を克服し、機能性関与成分を分離することに成功した。

この成分をさらに、NMR・UV ・可視・I R・質量分析・糖鎖構造解析・元素分析・タンパク質分析・活性酸素消去活性測定などを用いることで、構造や特徴についても検討した。



その結果、この関与成分は構造の一部に糖を含むことやその糖のほぼ全てがグルコースであることなどが解明された。

黒酢メラノイジン、高い抗酸化作用

またその他全てのデータから、関与成分が平均分子量1,090±30Daであり、糖鎖とメラノイジンか構造から構成されることも分かり、この成分が「オリゴグルカン・メラノイジン複合体」であることが考えられた。

この成分を「黒酢メラノイジン」と命名した。この成分は分離前の黒酢濃縮粉末と比較しても3倍高い抗酸化作用を持つことも観察された。

この黒酢メラノイジンがどのように脂肪細胞分化を抑制するのかについて、その作用機序についてはまだ解明できていないが、おそらく高い抗酸化作用が関係している可能性が高いのではないか、と蓮見氏。

大量に精製する方法もすでに検討

また、大量に精製する方法についてもすでに検討が始まっているという。具体的には、黒酢100gあたりにどれくらいの関与成分が含まれているのかをより正確に測定することや、さらに動物試験とヒト臨床試験をより具体的に実施することで摂取目安量を推察することが重要だ。

この黒酢メラノイジンをより多く含む黒酢原料の開発、つまり黒酢醸造へも関与することで、黒酢メラノイジンを大量精製することが可能になるのではないか、と蓮見氏。

黒酢メラノイジンが肥満改善作用に関与するのは間違いないが、黒酢メラノイジンが多く含まれた黒酢が肥満改善に与える影響や、黒酢メラノイジンの抗酸化作用がもたらす他の機能性についても検討していきたいと話した。


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