イミダゾールジペプチド、抗疲労で期待
〜食品開発展オンラインセミナー


2022年6月13日〜24日、web配信により食品開発展オンラインセミナーが開催された。この中から、日本ハム鰍フ講演「抗疲労のメカニズムとは?イミダゾールジペプチドの抗疲労エビデンス」を取り上げる。


鶏由来成分のイミダゾールジペプチド

「肉を食べると元気になる」と感じる人は多い。その謎を解明すべく、日本ハム鰍ナは鶏由来成分イミダゾールジペプチドを20年以上研究してきた。

イミダゾールジペプチドとはカルノシン・アンセリン・バレニンに代表されるジペプチドの総称で、ジペプチドは2つのアミノ酸がつながったもの。

ヒトの場合、骨格筋・心筋・脳組織の一部にカルノシン合成酵素が発現しており、アラニンとヒスチジンから「カルノシン」が合成されていることがわかっている。

このイミダゾールジペプチドには「緩衝作用」や「抗酸化作用」があることが知られている。

ヒト以外でもイミダゾールジペプチドを持つ動物の多くが、鳥類や魚類、海獣類(クジラやイルカ)など、運動量が多い動物で、これらの動物の抗疲労にもそれぞれの動物ごとに異なるがイミダゾールジペプチドが効果を発揮していると考えられている。

イミダゾールジペプチド、高い抗酸化作用

イミダゾールジペプチドが人間を含むさまざまな動物に含まれていることは確認されているが、その構成は動物ごとに異なる。

例えば、鶏肉に豊富に含まれる有用成分は「アンセリン」と「カルノシン」だが、ヒトの筋肉中にはカルノシンしか含まれないこともわかっている。

このイミダゾールジペプチドがどのように効果を発揮するのか、まずは抗酸化作用について。

抗酸化とは活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く作用やその働きを持つ物質のことであるが、イミダゾールジペプチドにも高い抗酸化作用が確認されている。

抗酸化物質には色々な種類がある。特にイミダゾールジペプチドには強い毒性を持つ悪玉の活性酸素を取り除く働きが確認されており、細胞レベルで酸化や細胞の損傷を防ぐ働きがあるという。

乳酸によるpHの低下を抑制

次に緩衝作用。これも抗酸化に似た働きで「細胞内のpHを一定に保ち、細胞の機能を維持する働き」がある。

私たちは運動すると筋肉や血中に乳酸が生じる。この乳酸により細胞の酵素の働きが低下することで細胞の働きそのものも低下し、それが疲労として感じられるようになる。



イミダゾールジペプチドはこの乳酸によるpHの低下を抑制する。

そのため細胞機能の低下も起こりにくく、疲労を感じにくくなる・疲労回復が早くなるというメカニズムがある。

食品から摂取されたイミダゾールジペプチドは、体内で一度分解されβアラニンやヒスチジンなどのアミノ酸に変化する。

それらの物質は体内をめぐり、疲労などが起こっている筋肉や脳に届くとそこで留まりイミダゾールジペプチドを再合成し高い機能性を発揮する。

全身・目の疲労ともに有意に軽減

さらにイミダゾールジペプチドは脳関門を透過し脳内に移行する可能性も示されている。脳へ移行したカルノシンは、神経系を構成するグリア細胞に働きかけ、神経栄養因子の分泌を増強し、脳神経細胞を活性する。

すでにイミダゾールジペプチドに関するヒト臨床試験も行われている。目の疲労や全身の疲労を感じている中高年健常者20名をランダムに2群に分け、1日あたり225mgのイミダゾールジペプチドかプラセボを1ヶ月摂取してもらった。

その結果、イミダゾールジペプチド摂取群はプラセボ群と比較して全身の疲労・目の疲労ともに有意に軽減したこと分かった。

現代人の疲労を解決するキーに

また日常的に疲労を自覚している20歳以上65歳以下の健康成人に8週間、1日200mgのイミダゾールジペプチドを摂取してもらう試験を行った。

その結果、有意に疲労軽減効果が確認でき、1日200〜400mg程度の摂取で有効であることが分かった。

日本人の4人に1人は疲労で悩んでいるといわれる。疲労の中でも特に肩こりなどの肉体疲労、目の疲れなどの症状を訴える人が多いが、イミダゾールジペプチドは現代人の疲労を食で解決するキーとなる成分といえよう。

すでにイミダゾールジペプチドは機能性表示を取得しており、日本ハム鰍ナは原料の提供だけでなくSR(システマティックレビュー)データの提供もしているため活用してほしいとまとめた。



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