コオロギ食、代替プロテインで注目
〜食品開発展オンラインセミナー


2022年6月13日〜24日、web配信により食品開発展オンラインセミナーが開催された。この中から、長瀬産業梶E潟Gコロギーの講演「コオロギ原料で取り込む28%の潜在顧客」を取り上げる。


環境負荷が少ない「昆虫タンパク」

長瀬産業鰍ナは食品開発に携わる一企業としてSDGsを強く意識し、代替プロテインを開発することに力を注いでいるという。

代替プロテインには幾つかのカテゴリーがあり、最も普及が進んでいるのが植物性タンパク質(ソイプロテイン)だが、既存プロテインと比較して環境負荷などで、植物性プロテインにも課題が残されている。

培養肉・微細藻類・マイコプロテイン・微生物なども代替プロテインとして挙げられるが「使用する土地のサイズ」と「GHG排出量(温室効果ガス)」から環境負荷の度合いを比較すると「昆虫タンパク」が、最も環境負荷が低い選択肢の一つになるのではないかという。

タンパク質100gを生産するのに必要な水の量などを考慮したデータにおいても昆虫食、中でもコオロギは現時点で最も環境負荷が少ない代替プロテインであるという。

市場規模、この2年でおよそ3.6倍に増加

しかもコオロギタンパクは良質なタンパク質を含み、エビ風味の「旨味」を持つほか、飼育の際に使用するコオロギの餌は食品廃棄物(残渣)を使用するなど非常にサステナブルな素材である。

GHG排出量は牛肉のわずか4%、また20kgのタンパク質を作るのにわずか1ヶ月で畳2枚分のスペースがあれば十分で、人類が抱える食品と地球の未来に最も貢献できる食材の一つではないかという。

長瀬産業では早稲田大学発のベンチャー企業「株式会社エコロギー」とコオロギタンパクの展開について模索をしている。

エコロギー側からみて、現在のコオロギタンパクが消費者にとってどのような存在なのか、また今後の展望についても語った。

潟Gコロギーによるコオロギ由来原料の中でも、コオロギパウダー「エコロギー」は2020年より販売がスタートし売り上げも市場も右肩上がり。

市場規模はこの2年でおよそ3.6倍の増加という。菓子類の原料としてスタートしたが現在はさまざまな加工食品やペットフードにまで利用されるようになっている。

昆虫食の購入、半数以上が20〜30代女性

国内でコオロギ食が知名度を上げたきっかけは、2020年に無印良品が環境負荷を配慮した取り組みとして「せんべい」と「チョコレートバー」を販売スタートさせたことが大きい。

これを皮切りに敷島製パン(Pasco)はECサイトを中心にクロワッサンやフィナンシェを販売、さらに昨年から今年にかけてはマルエツ・ウエルシア・ダイソーなどの小売店も昆虫食を導入しはじめ、コンビニではファミリーマートが一部都内の店舗でテスト販売を始めている。

「サステナブルを意識した場合(Co2排出量)、昆虫食(2t)とえびスナック(60t )、ほぼ同じ味がしたらどちらを購入するか」という消費者アンケートによると、28%がコオロギを選ぶと回答している。

この数字は少ないように見えるが、実は2021年の段階で昆虫食を購入している半数以上が20〜30代の女性であり、この数字と実際の消費者がマッチしているのではないかという。


日本人の消費者の32%がサステナブル消費

これまでは昆虫食といえば、罰ゲームやパーティーのネタなどのイメージがあった。しかし、「サステナブル消費」をキーワードにすることで、メインの客層は20〜30代の女性もしくは男性になり得る。

主力商品も菓子類だけでなく高級食品や一部加工品、健康食品に広げることができる。

「昆虫食」ではなく「コオロギパウダー入り食品=エコロジー×エシカル×健康」のイメージが広がれば一般商品になるのも夢ではないという。

実際、日本人の消費者の32%がサステナブル消費をはじめているという調査結果もある。

消費者は食品に「美味しさ」「価格」「食べやすさ」だけでなく「サステナビリティ」を求めるようになっており、これが新たな市場になりつつある。

コオロギパウダー、78%が美味しいと回答

潟Gコロギーは早稲田大学のコオロギ研究から生まれたベンチャー企業だが、長年、コオロギの最適な生産方法や栄養価・機能性を研究し続け、現在は途上国であるカンボジアで量産体制を構築するまでに至っている。

カンボジアは昆虫の飼育に最適な環境であるだけでなく、昆虫食の文化が古くから存在し、既存の生産者もいることなどから、量産の地として非常にマッチしているという。

実際コオロギを食品にする流れは、カンボジアでのフードロスを回収し、それを専用の餌に変え、大学の研究での知見を生かし専用の餌を使ってコオロギを現地の貧困家庭などの人に委託して生産&買取、それを粉末加工し食品原料として提供するというもの。

これによってSDGsの「1,貧困を無くそう」「12,作る責任・使う責任(フードロスの削減)」「13,気候変動に具体的な対策を」に大きく貢献できるという。

しかもコオロギパウダーはエビのような旨味があり食べた人の78%が美味しいと感じているという。エビのような旨味は、塩味にも甘味にも対応できるのもメリットだ。

タンパク質が豊富でBCAAなども高含有

従来の代替プロテインはソイであれば豆臭さが残り、ホエイであれば乳の味を完全に消すことが難しい。

しかしコオロギパウダーはどちらもないため、菓子類だけでなく、加工食品、調味料、栄養補助食品のどれにでも展開が可能だ。

さらに他のタンパクと違う点として、タンパク質が豊富でBCAAなども高含有しているだけでなく、亜鉛や鉄分などのミネラルが豊富な点もメリットである。

市場のイメージを変えていく必要や、甲殻類のアレルギー対応を考慮する点、また白いコオロギパウダーの開発など課題は残されているが、まずはサステナブルを切り口に、健康食品、一般食品へと展開していきたいと豊富を語った。


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