大豆イソフラボンの潜在的利点
〜不二たん白質研究振興財団セミナー


2022年9月20日(火)、web配信にて(公財)不二たん白質研究振興財団セミナーが開催された。この中から、立花宏文氏(九州大学)の講演「エストロゲン受容体の関与以外のイソフラボンの潜在的利点」を取り上げる。


大豆イソフラボンにさまざまな健康効果

日本では大豆由来の食品がよく食べられている。例えば「もやし」は大豆を人工的に発芽させた新芽で日本では最もポピュラーな食材の一つである。

近年は「骨の健康維持に役立つ」というヘルスクレームを取得した「機能性表示もやし」も誕生している。

そのもやしの機能性関与成分が「大豆イソフラボン」である。ちなみに大豆イソフラボンはポリフェノール(フラボノイド)の一種で、例えば納豆1パックには65mg程度の大豆イソフラボンが含まれている。

大豆イソフラボンには骨の健康維持以外にもさまざまな健康効果が報告されている。

疫学的研究によると、大豆及び大豆イソフラボンを大量に消費するアジア人は、西洋人よりも乳がんのリスクが低いことが明らかになっている。他にもいわゆる「ホルモン感受性のがん」に抗がん作用を発揮することがわかっている。

代謝物のエクオール、抗がん作用を発揮

なぜ大豆イソフラボンやその代謝物であるエクオールが「ホルモン感受性由来のがん」に抗がん作用を発揮するのか?

それについては、大豆イソフラボンの構造が女性ホルモンエストロゲンの構造と酷似しているためと考えられている。よく知られる「エストロゲン受容体」によるものである。

イソフラボンにはダイゼイン、ゲニステイン、グリシティンなどの種類があるが、中でもダイゼインから代謝されて生成されるエクオールはエストロゲン受容体(エストロゲンレセプター=ER)に結合することで、さまざまな生体作用を発揮することが分っている。

これにより、乳がんを含むホルモン感受性のがんリスクが低下すると考えられている。

食品成分に体内のレセプターが関与

ちなみに、2021年のノーベル医学・生理学賞は「舌の中にある辛味を感じるレセプター」に関する研究で受賞しているが、他にも多くの食品成分に体内のレセプターが関与していることが多い。

しかし大豆イソフラボンには、好塩基球における高親和性IgE受容体発現低下作用や胸腺萎縮作用など、ERを解さずに働いている、と考えられる作用も報告されている。

ERを介さない作用経路の存在について、立花氏らのチームは「大豆イソフラボンがERを介さずに、がん細胞増殖抑制に働きかけるメカニズム」に関する研究を重ねてきた。

立花氏らの研究によれば、ダイゼインとエクオールはPapd5という体内酵素を活性しこれがERを介さずに、がん細胞増殖抑制分子として関与していることを同定したという。

Papd5は核小体低分子RNAをアデニル化活性する酵素であることがわかっていて、ダイゼインとエクオールがPapd5に依存的に働きかけ活性することで、がん細胞増殖を抑制しているのではないかという。

大豆イソフラボンの抗がんメカニズム

ただし同じく大豆イソフラボンであるゲニステインにはそうした活性が見つからなかった。

さらに、がん細胞の増殖に関与するとされているmiRNA320aに注目すると、ダイゼインとエクオールはmiRNA320aを増加させることもわかってきたという。

しかもPapd5の活性とmiRNA320aの増加により、がん細胞の増殖に重要な働きをしている「βカテニン」の発現を低下させていることがわかった。おそらくこれが大豆イソフラボンのER以外の体内動体経路による抗がん作用のメカニズムではないか、と立花氏。

ちなみに、miRNAとは遺伝子の発現に転写レベルや翻訳レベルで関与し、あらゆる生命現象に多岐に渡って関与している。

miRNAはエクソソームなどに存在していて、血液中を循環し、細胞間コミュニケーションの役割も果たしている物質だという。

食品摂取とmiRNAの関係が注目

これまで、miRNAは生活習慣病や癌の疾病マーカーとして使われることが多かったが、食品成分の摂取によって変化することも最近報告され、まさに今現在、食品摂取とmiRNAの関係について注目が集まっている。

しかし食品成分においてmiRNA320aの発現量を増加させるのは今のところダイゼインとエクオールのみしか見つかっていない。

抗がん作用が知られる食品成分としては、他に緑茶ポリフェノールEGCGがある。EGCGは別のmiRNAが関与していることで抗がん作用を発揮していることもわかっている。

ただEGCGはPAPD5を活性しないこともわかっている。成分によって活性や代謝の作用には違いがあるため、新たな研究課題だと話した。


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