納豆、メタボ対策やアンチエイジングに果たす役割 〜「第六回 納豆健康学セミナー」

2009年12月15日(火)、東京・秋葉原コンベンションホールで、「第六回 納豆健康学セミナー」(主催:全国納豆協同連合会)が開催された。「納豆はなぜ体に良いのか」をテーマに日本人の伝統食、納豆の機能性の最新研究が報告された。


泡沫化マクロファージが蓄積し動脈硬化に

宮崎徹教授(東京大学大学院医学研究科 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門)は「納豆は体に良いのか?どのように良いのか?なぜ良いのか?」と題して、納豆とAIM(人体のタンパク質細胞)との関わりを報告。

納豆は長い食経験があり、健康に有益であることは体験的にも立証されている。どんな薬にも副作用はあるが、納豆にはそれがないことに宮崎氏は着目。納豆の効用は遺伝子DNAに影響しない、きわめて特異的なものではないかと仮説を立てた。

動脈硬化は、血管に脂肪が蓄積し硬くなるというイメージがある。実際には摂食で悪玉コレステロールが血中に流出した際、除去作業でマクロファージが活性化。マクロファージは泡沫化し、そのまま血管に蓄積し動脈硬化が起きる、と宮崎氏。

泡沫化マクロファージの死滅・排泄、AIMが鍵

ではなぜ泡沫化したマクロファージは排泄されず血管に溜まるのか。 マクロファージは悪玉コレステロールを吸収する際、自身が生き残るためにAIMという細胞を発現させ、生存を図ることが研究で分かった。

逆にいえば、AIMが作用しなければ、マクロファージは死滅し、動脈硬化も起きない。 そのため、納豆は悪玉コレステロールやマクロファージにではなく、AIMに作用しているのではないかと宮崎氏は推測。実際に実験でも、納豆の摂食でAIMの発現低下がみられたという。

AIMはメタボリックシンドロームの発症にも関与していることが明らかになりつつある。納豆はAIMを標的として生活習慣病の改善に決定的な効果を持つのではないか、納豆とAIMのさらなる研究が進められているという。

税収37兆円、医療費が34兆円

永山久夫氏(食文化史研究化/総合長寿食研究所所長)は「笑って元気 納豆力」と題して、日本の食文化における納豆の役割について講演。

現在、日本では医療費が高騰し、税収37兆円に対し医療費34兆円、財源のほとんどを医療費に使っている。
老人が増え、少子化が進み、国力が弱くなっている中、日本人が唯一世界に誇れるのは長寿。世界の人々から尊敬される「健康で長生きの国=日本」になるためには、日本の昔ながらの食文化を復興させること、それこそが唯一の秘策と永山氏は述べた。

梅干しや漬け物、納豆を食卓に

さらに、「走り」「旬」「なごり」「時なし」と日本人には食材を繊細に楽しむ文化があった。とくに「時なし」は重要で、納豆や味噌を指すと永山氏はいう。

現代人が1年間に摂取する食品はおよそ1トン、うち60%は加工食品。それでは病気になっても仕方がない。「食」で、難しい健康管理は必要ない。梅干し、漬け物、納豆など体に良い物を必ず一品摂る習慣がかつてはあった。それを取り戻すだけでも十分と永山氏はいう。

納豆、セロトニン作るトリプトファンが多い

納豆は平安時代末期から形をほとんど変えることなく、日本人の食文化に生き続けている。幸せホルモンといわれるセロトニンを作るトリプトファンはかつおぶしに次いで多い。自分の健康には自分で責任を持つことが大切。積極的な納豆摂取と日本独自の食文化の復興で、笑って元気に歳を重ねることのできる日本を目指すべき、と強く訴えた。

納豆のポリアミン、炎症抑制でアンチエイジングに

早田邦康准教授(自治医科大学 さいたま医療センター 循環器病臨床医学研究所)は納豆に多く含まれるポリアミンの最新研究を報告。

ポリアミンは、アミノ酸からなる、生物の細胞分裂に関わる重要な物質として知られる。
ヒトにおける代表的なポリアミンは「スペルミン」と「スペルミジン」で、体内でも合成するが、加齢とともに酵素機能の低下で合成が難しくなる。

「長寿食」は「高ポリアミン食」

「スペルミン」と「スペルミジン」は体内で、炎症性サイトカインとLFA-1の発生を抑制すると早田氏。「炎症」は老化や生活習慣病が起こる原因と考えられ、近年では「インフラムエイジング(炎症老化)」という造語もある。そのため、「炎症」を抑制するポリアミンはアンチエイジング物質としても注目が集まっている。 マウス実験で、ポリアミンを摂取したマウスは非常に若々しく、摂取しないマウスに比べて長生きすることが報告されているという。

現在、疫学調査で長寿食や動脈硬化抑制食と考えられているのが「地中海食」。豆類、ナッツ類、フルーツ、野菜、魚油、植物油、魚介類、乳製品(牛乳除く)、などで構成される食文化だが、これらの食品には高濃度のポリアミンが含まれることが判っている。ポリアミンは天然の炎症抑制物質、積極的に摂ることでアンチエイジング効果が期待されると早田氏はいう。


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