JAS法の玄米・精米表示はおかしい!生産者・消費者の意向反映を〜「JAS精米表示の問題点を考える集会」

2010年4月8日(木)、衆議院会館で、「JAS精米表示の問題点を考える集会」が開催された。今年10月、米トレサ法が施行される。2008年の汚染米事件を契機に成立した法律で、これにより米の取引に関わる記録や伝達、罰則の強化が図られるが、事件の背景にある表示問題の改善については手つか


「くず米」の規定が不明瞭

玄米・精米表示の問題点は大きく分けると3つ。
第一に、流通するすべての精米に「産地・産年・品種・割合」が表示されていないこと。 第二に、「産地・産年・品種」(いわゆる3点セット)を表示するためには農産物検査を受けなければならず、それが過度な農薬使用を助長していること。
第三に、いわゆる「くず米」の規定が不明瞭である、ということ。

デフレの背景もあり、ドラックスーパーや激安スーパーでは5キロ1250円といった、激安米が流通している。いわゆる「ブレンド米」である。安さのカラクリは「産地、品種、産年を表示していない」ことにあると食政策センタービジョンの安田節子氏は指摘する。

こうした低価格米にはいわゆる「くず米」や「超古米」「輸入米」が混ざっていることが多く、粒がふぞろいで、炊くと水っぽく、独特のにおいがしたり、不味いと感じる消費者も少なからずいるという。

米の全体の生産量の3〜5%の割合で「くず米」は発生するが、通常農家は専門の業者に売り渡し加工食品や飼料に使う。しかし、不当利益を得るために主食用に横流しする業者が多いのが実状という。

検査を受けない米は全体の40%以上

しかしなぜ「ブレンド米」には「産地、品種、産年」の表示がなされないのか。JAS法では主食用の米は単一銘柄米とブレンド米の2種類がある。ブレンド米の場合、国産品は「国内産」、輸入品は「外国産」と表示しなければならない。しかし、全て国産品であれば、ブレンドした内訳の産地や品種、産年は明記する必要がないと規定されている。

生産者は米を生産した後、農産物検査にかけるかどうか選択するが、そこでまず米は「検査米」と「未検査米」に分類される。検査は任意で、検査員も目視で行なう。また、品種は科学的検査による識別ではなく農家の自主申告によるもので、実状はお粗末なものと安田氏はいう。 

したがって検査を受けない米は全体の40%を超える。検査を受けないもう一つの理由は農薬の問題に絡むため後述するが、まずこの段階で「未検査米」に分類された米が問題となる。

というのも、「未検査米」でも主食用として流通するが、「未検査米」に「産地・品種・産年」を表示することはJAS法違反となる。国産米であれば古米や米の粒を測定する「ふるい」から滑り落ちた小さな粒の「くず米」を混ぜた「ブレンド米」を「国産10割」などと割合のみ表示して販売することができるからである。

「ブレンド米」には、どんな米がどんな割合でブレンドされているか表示する義務はなく、消費者は知らぬ間によくわからない米を食べさせられていることになる。

汚染米事件の真相もこの「ブレンド米」表示の悪用という見方が強い。「ブレンド米」の表示は原則禁止し、主食に加工用のくず米を混ぜることも禁止すべきと安田氏はいう。農水省は安い米は消費者ニーズがあるという理由で、くず米を主食用に混ぜることを黙認しているが、これが日本人の米離れや米の価格崩壊に繋がっていると厳しく批判した。

検査項目の「着色粒」は即刻削除すべき

第二の問題点である農産物検査については、申告制の任意検査であるにもかかわらず、内容が不明瞭で、特に検査項目の「着色粒」は即刻削除すべきと反農薬東京グループの辻万千子氏は訴える。

着色粒の多くは稲の穂がカメムシと呼ばれる害虫に吸汁されることによって発生し、吸汁された米は黒い斑点が残ることから「斑点米」と呼ばれるが、農産物検査において、斑点米が1000粒あたりに2粒を超えると、2等級米以下(他3等級、規格外、ふるい下米がある)に格下げされ、生産者の手取りが60キロで1000円以上減る。

こうした生産者に不利な価格差別が、生産者の過剰な農薬散布を誘発し、散布地域周辺での人体への影響や残留農薬が懸念されるだけでなく、近年のミツバチ減少などにもつながっていると辻氏はいう。

市民グループから参加した一般女性は、1等級〜3等級まで分類された「斑点米」を含む米を実際に食べ比べたが、味も見た目も、ほとんどわからないと述べた。

もちろん「斑点米」は人体に影響を与えないことも証明されており、農水省が何のために米を等級分けし、価格差別を行なっているのか意味が分からないと問いかけた。

実際、店頭で流通している米に1〜3級などの等級は記載されることがなく、この分類が消費者のためでなく、流通業者にしか存在意義がないと強調した。

「くず米」、規定や基準がなく有効活用されていない

第三の「くず米」の定義については、米流通の大きな落とし穴であると、秋田県大潟村の生産者今野茂樹氏は指摘する。「検査米」であろうと「未検査米」であろうと、米のサイズを分類するために生産された米をふるいにかける。

ふるいから落ちた米粒は「くず米」と呼ばれるのが、「くず米」は食料自給率向上に有効な食材であるにもかかわらず、規定や基準がないため有効活用されていない。また全体の「くず米」の生産量も不明瞭という。

農水省ではふるいの網目1,7oのものを使用した場合で計算しているが、実際1.7oの網目を使用している農家は全体の0.6%にすぎず、多くの農家は米の品種によるものの1.7o〜1.9oの網目を使っており、そこから発生する「くず米」は65万トンにものぼると試算されている。

このなかで主食用として流通するのは30〜40万トンにすぎず、この誤差が政府の発令した生産量2万トンの削減(22年度)や、食料自給率の低下に繋がっていると今野氏。「くず米」の規定やふるいの規定がなく、実状とかけ離れた政府の発表する理論値が、誤った需給計画や誤った政策を打ち出していると訴え、正しい測量方法や規定を行なうことで、むしろ減反緩和と財政負担の削減も可能となり、食料自給率も1ポイントは向上するとまとめた。

なぜ米だけが農産物検査を受けなければ「産地・品種・産年」を表示することができないのか、ミカンやリンゴなど他の農産物にそのような義務付けはなく、そこも大きく矛盾する。

これらの訴えを受けた農水省と消費者庁は、変えるべきところは検討していきたいと述べたが、具体的な検討策はないようだ。しかし消費者委員会食品表示部会ではこの米表示制度の見直しを検討課題に盛り込んでおり、進展を期待したい。


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