生活習慣病などの対策で注目の食品素材 〜第4回「医療品原料国際展」

2010年6月30日(水)、東京国際展示場ビックサイトで、第4回「医療品原料国際展」が開催された。全国の大学・企業・研究機関の研究者が最新の研究成果を発表する場が設けられ、多くの企業やメーカーの開発者が参集した。

食品応用が期待される糖アルコールの特性と機能性について
富山大学 附属病院薬剤部 准教授 加藤敦氏
小泉美和子 氏

体内で合成され、一定量蓄積

今回、加藤氏が研究成果を発表した糖アルコールは「1,5アンヒドログルシトール(通称1,5-AG)」。グルコースに類似した機能性糖アルコールである。

1,5-AGの優れた特性としては、安全性と機能性、物性の3つ。安全性については、1,5-AGはグルコースから体内で合成、しかも体内で一定量プール(備蓄)されており、私たちヒトが非常に慣れ親しんでいる物質であるという。

1,5-AGがなぜ体内に一定量プールされているのかはまだ解明されていないが、解明されれば、サプリメントとしても1,5-AGが重要な役割を果たすのではないかという。

1,5-AGは食品中に普遍的に含まれ、とくに大豆などの種子類には非常に多く含まれていることが判っている。また、米、日本茶、醤油など日本人が日頃から摂取する日本食にも多く含まれ、お腹がゆるくなるなどの副作用もみられないという。

血糖値や高脂血症の改善、虫歯予防などが報告

機能性については、マウス実験で食後過血糖改善作用、食後高脂血症改善作用、虫歯予防作用などが確認され、長期投与では抗肥満作用も報告。血糖値の急激な上昇を避け、糖尿病のリスクを軽減、また中性脂肪の上昇を穏やかにすることから肥満防止にもつながると加藤氏。

また、糖物質であるが、キシリトール以上の抗う触作用(虫歯防止)を発揮する点が非常に優れていると力説した。甘味を有し、低カロリーで冷涼感があることから、食品分野では甘味調整剤としての利用でメタボリックシンドロームをはじめとする様々な生活習慣病の予防が期待され、需要も高まっているという。

食品分野だけでなく医薬品や化粧品分野での応用が期待

また、耐熱・耐酸性や非メイラード反応生などにも優れ、物質が安定していて変色しにくいという特徴は、食品分野だけでなく医薬品や化粧品分野での応用も期待されるのではないかという。

今後、生活習慣病の予防を目的とした機能性食品用素材だけでなく、低カロリーで甘味を必要とする食品原料、アミノ酸製剤とも混合叶な浸透圧調整剤、医薬品、口腔内崩壊上、保湿性に優れた化粧品原料などへの応用が期待されるという。

新規生活改善機能性食品としてのオリゴ乳酸
大阪大谷大学 薬学部 薬剤学講座 教授 村上正裕氏

腸内環境を改善、ガンや生活習慣病でも期待

村上氏は各種乳酸オリゴマーを高純度に選択的に合成する技術開発に成功している。オリゴ乳酸はこれまで主に腸内環境の改善作用で注目されてきたが、近年はガンや生活習慣病関連の疾患への有益性でも期待されていると村上氏。

もともと人体にある生体物質「乳酸」由来のため、安全性にも問題はない。マウス実験では、ガン罹患マウスへのオリゴ乳酸の投与で、ガン細胞の増殖防止や延命にも成功しているという。

また、別のマウス実験で、NK活性増強効果、高脂血症、肝機能改善、ヒト試験においても、免疫機能増強効果、便通改善、血流改善効果が示唆されるデータもあるという。

さらに、オリゴ乳酸は、ガンに罹患したマウスの攻撃的な性格や鬱っぽい性格の緩和や改善、目の下のクマの改善や、毛並みの改善をするなど、ガン以外にも複合的に有効に働くことが報告、QOLの向上などで注目が集まっていると村上氏は解説した。

オリゴ乳酸の安定・定量合成法を確立

オリゴ乳酸については、これまで安定的に、かつ一定量を供給することが困難とされてきた。しかし、村上氏を中心としたグループは鎖状乳酸オリゴマーを選択的に合成し還元することで、環状体を含めた特定鎖状のオリゴ乳酸を合成する方法を確立したという。

これにより、オリゴ乳酸の精製、同定および定量法が可能となり、その安定性や薬物体内動態、生理活性の化学的評価にも取り組めるようになったという。

低分子であるオリゴマーを有機化学的に精密に合成する技術の確立により、今後オリゴ乳酸は健康食品、機能性食品の原料としての活用が期待されるだけでなく、医薬品の添加物としても重要な役割を果たすのではないかという。


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