食への不信から、食を自らで守ろうと考える人々が増えている
藤田氏は恵泉女学園で教鞭をとる傍らNHKのTV番組「趣味の園芸・やさいの時間」やラジオ番組など多くのメディアに出演している。専門は園芸、野菜園芸学、野菜の品種改良など。
21世紀の世界のキーワードは「人口・食料・環境」だが、農業はこの全てに関わっている。農業はおよそ1万年前に始まったが、同時にこれは、世界で最初の環境破壊でもあった。しかし農業により、人類は住まいを定め、家庭を作り、幸福がもたらされたと藤田氏。
農業を大きく分けると「生産農業」と「生活農業(=生活を豊にする農業)」になる。「生産農業」で現在一番の課題は「食の安心・安全」。「生活農業」では、心の癒しや地域のコミュニティ、町づくりや景観形成などの役割が期待されている。
「生産農業」のキーワードは「地産地消」であり、「道の駅」は現在最も注目されるスタイルといえる。農業に携わる人々が自信を持つことで、今後も更なる展開が期待されている。
米国カリフォルニアでファーマーズマーケットが町を復興させたという事例がある。州内には200を超える直売所があるが、現在も増え続け、観光スポットとしても人気を博している。日本とは規模や条件が異なるため一概に比較はできないが、地域が農業を支える良い見本であろうと藤田氏はいう。
一方、「生活農業」については、草花が町を輝かせたという事例がある。神奈川県相模川の土手は不法投棄のゴミが大量に捨てられていたが、老人会がたちあがり、美しいシバザクラの苗を植えることで、不法投棄が解消されたという。
また団塊世代を中心とした市民農園(庭やベランダでの家庭菜園含む)も人気で、農園設置数も増え、小型農業危機も堅調に売上を伸ばしている。相次ぐ食の不信から、食を自らで守ろうと考える人々が増えているという。
野菜の栄養や機能性成分に人々の関心が集まっている
自分で野菜を作ることがきっかけとなり、野菜の優れた栄養や機能性成分に人々の関心が集まっている。野菜の色素であるクロロフィル、カロテン、リコピン、アントシアニン、ベタシアニンなどはファイトケミカル(抗酸化成分)として注目され、がん予防や生活習慣病対策で積極的に摂取しようとする人々が増えているという。
食育については、「食への知識と正しい判断力を身につける」ための取り組みであり、具体的には「自分の食生活を振り返る」「食生活の指針を理解する」「食の安心、安全を考える」「地域の食文化を学ぶ」などである、と藤田氏はまとめた。