津軽地方の伝承に着目
青森県産業技術センター工業総合研究所・農学博士・内沢秀光氏は、産・官・学の三者共同で進められた今回の研究について、官の立場から開発の経緯を解説した。

同研究所は、青森県内の産業振興への貢献を目的とし、新技術・新製品開発による企業支援、新産業創出、地域資源の高付加価値化による企業の新商品開発の支援や工業振興に努め、これまでイカスミやホタテ、鮭、長芋などの有効性を研究してきたが、かねてよりシジミの主成分である炭酸カルシウムとその結晶構造に注目していた。

シジミは、古来より肝臓に良い強肝食として広く知られているが、今回は、産業廃棄物として処理されているシジミの殻について、津軽地方に古くから伝わる伝承に着目し、汽水湖である青森・十三湖産のヤマトシジミを採用して研究を進めていた。

内沢氏は、未焼成シジミ貝殻の炭酸カルシウムの結晶構造はアラゴナイトであるが、これを500℃で焼成することでカルサイトに変わるとし、シジミ貝殻粉末を、加熱処理(500℃)したものの、炭酸カルシウムのままであることから、未焼成カルシウムということになるとした。
肝機能改善のメカニズム解明が今後の課題
元弘前大学医学部教授・医学博士・佐々木甚一氏は、焼成シジミ貝殻粉末の試験結果を発表した。

試験は、焼成シジミ貝殻粉末のカルサイトの7mg、14mg、及びシジミ粉末の7mgを経口で6ヶ月間連日投与し、シジミ粉末と比較。
長期間投与による毒性試験の指標として、体重及び、血液成分(赤血球、白血球、PCV、Hb値)を測定した。そして、肝機能改善効果を調べるために、GOT、GPT、IAPなど、血清中の肝機能酵素の測定を行なった。

肝臓障害を自然発症するラット(LECラット)に投与した結果、カルサイトのシジミ貝殻粉末に肝機能への有用性が認められた。また、炭酸カルシウムの結晶構造がカルサイトのホタテ貝殻粉末を同様にラットに投与し、比較検討したところ、同じカルサイト構造であっても、ホタテ貝殻には肝機能への有用性は見られなかったとし、肝機能改善のメカニズムは今後の課題であるものの、カルサイト構造を有するシジミ貝殻に肝機能への有用性が見出されたと結論づけた。また、佐々木氏は、この実験の条件下では副作用はないものと考えられるとした。