【 2015/4 】

プロバイオティクス、インフルエンザワクチンの効果を増進

近年、腸内環境を整え、ヒトが本来持っている抵抗力を高めるという研究が盛んに進められている。中でも、注目されているのが、腸内環境のバランスを改善する生きた微生物=プロバイオティクスである。

2015年4月20日(月)、東京国際フォーラムで、「第15回 21世紀の食と健康フォーラム」が開催された。この中で、東京大学医学研究所の清野 宏氏が「腸は超有能な免疫器官」と題して講演した。

腸は単に消化・吸収を行うだけでなく、重要な免疫機能を有している。清野氏によると、免疫とは、異物を排除する一方で、必要かつ有益なものであれば共生関係を築くという、非常に優秀なシステムであるという。

この免疫を担う細胞には、T細胞、B細胞、樹状細胞、キラー細胞などがあり、それぞれ独自の機能が備わっている。

健康な時には免疫担当細胞はそれぞれバラバラに活動しているが、ひとたび有害なものが侵入し異変が生じると、団結し排除に取り組む。免疫細胞は全身に散らばっており、主に口から肛門、とくに腸の中に多い。

腸は感染症を中心に、病気予防に重要な役割を果たすことから、現在、医学・農学・工学といった異なる分野が融合し、米を使ったワクチンによる腸内環境へのアプローチを進めているという。

プロバイオティクスに関する最近の研究報告では、高齢者におけるインフルエンザワクチンの効果を増進すると、Geriatrics & Gerontology International誌15.3月号で報じている。

名古屋大学などの研究者チームによるもので、高齢者30人に、GOS(ガラクトオリゴ糖)とBGS(ビフィズス菌増殖促進因子)、発酵乳製品を与え、インフルエンザワクチンに対する抗体価亢進について検討した。

研究者チームは、ファイブレンYH(乳タンパク質とハチミツが原料の流動食)(明治乳業)を与えた後、半数にGOS(4.0g/日)およびBGS(0.4g/日)、残りの半数にファイブレンYHのみ(対照群)を10週間与えた。

4週間後、インフルエンザワクチンを投与したところ、H1N1、H3N2、B抗原に対する抗体価が、両群ともワクチン投与2週後に増大したという。

また、Psychopharmacology誌14.12月号では、プロバイオティクスは抗不安剤として有用と報じている。University of Oxford研究チームが、健常被験者45人を対象に、フラクトオリゴ糖(FOS)、Bimuno(βガラクトオリゴ糖サプリメント)、プラセボ投与群に与えた。

3週間後、Bimuno投与群はプラセボ投与群に比べ、ストレス暴露によるHPA軸反応の評価で用いられる唾液の起床時コルチゾール反応が有意に低下したことが分かったという。

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