【 2005/11 】

鬱症状対策で注目、オメガ3系脂肪酸やクロミウム

競争社会の米国では、セント・ジョンズ・ワート、カバカバ、メラトニンなどストレス緩和を謳うハーブ・サプリメントが売れ筋となっている。

最近の研究では、ミネラルのクロミウムが鬱症状の病軽減に有用であるという研究報告が、Journal of Psychiatric Practice'05/9月号に掲載されている。

Weil Medical College of Cornell University研究者グループによるもので、鬱症状の患者41人にクロミウムサプリメントか、プラセボの どちらかを毎日、8週間にわたって与えたところ、過食や気分のムラで、クロミウムグループの方が大きな改善がみられたという。

クロミウムは必須ミネラルの一つで、玄米や海草、香辛料などに微量に含まれる。糖質が体脂肪に変わるのを抑制し、筋肉のエネルギーに変える働きがあるといわれる。

鬱症状の発症については、日頃摂食する食品が影響するとの指摘もある。魚油に多く含まれる必須脂肪酸のオメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)の摂食が鬱症状対策に有用であるといわれる。

ヒトの体内で生成できない、食事から摂る必要のある必須脂肪酸に、α-リノレン酸を代表とするオメガ3系脂肪酸とリノール酸を代表とする オメガ6系脂肪酸がある。

重要なのが、その摂取バランス。偏り過ぎると慢性病や神経疾患を引き起こす恐れがあるといわれている。 オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の理想的なバランスは、10対1から4対1の間と考えられている。ちなみに、アメリカ人の必須脂肪酸の摂取 バランスは25対1でオメガ6系脂肪酸がかなり多いといわれている。

躁鬱や精神分裂などの精神障害に関しては、これまでオメガ3系脂肪酸との関連が多く報告 されている。1998年、Journal of Affective Disorders誌に掲載された研究では、 鬱病患者のオメガ3系脂肪酸の血中濃度が目立って低いと指摘している。

また、Journal of Lipid Research'05/6月号によると、Tel Aviv Universityの研究者グループが、鬱病に罹ったラットの脳と正常ラットの 脳を比較したところ、アラキドン酸(オメガ6系脂肪酸)の濃度が、鬱病ラットのほうがかなり高くなっていることが分かったという。

米国で鬱症状の緩和に人気のハーブといえば、セント・ジョーンズ・ワートだが、 米国で代替医療への関心が高まっていた2000年春、同ハーブに医薬品との相互作用があることがマスコミに 大々的に取り上げられ、ブームが一気に鎮静化したという経緯がある。

当時、ジンセンやガーリック、ギンコ(イチョウ葉)といった人気 ハーブの有効性と医薬品との相互作用の検証を求める声が医療現場から挙がり、セント・ジョーンズ・ワートが真っ先に俎上に乗せられた。検証の結果、避妊薬や抗HIV 薬の効果を半減することが判明した。
その後も、セント・ジョンズ・ワートは心臓病治療剤の濃度を薄めてしまうと いうドイツの研究グループの研究報告(Clinical Pharmacology and Therapeutics'04/6月号)も 出た。

ドイツは、ハーブ研究では伝統があり、セント・ジョンズ・ワートに関しても軽度から中程度の 鬱症状の緩和に関しては有用性を認めている。ただし、問題は薬剤と併用の際の相互作用で、米国では その点がクローズアップされ、有効性についても疑問が投げかけられた。しかしながら、British Medical Journal'05誌では、 ドイツの研究者グループが、重い鬱病患者251人に、セント・ジョンズ・ ワートエキスを与えたところ、6週間の研究で半数に症状の改善がみられたことを報告している。


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